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第47話 ゴルフコンペ・クライシス 1


 梅雨の晴れ間。でも湿気が高くて蒸し暑い。あまりいいコンディションとは言えないけど、ゴルフ好きはどんな悪天候でもウェルカムだからな。


 僕はキャディーとしての参加なので、一足お先に立花さんの車で送ってもらった。晄矢さんはそんな必要ないと言ってくれたけど、僕は意外に負けず嫌いなんだよね、きっと。


 他のキャディーさんたちとコースの注意点なんかを聞いてるうちに、開会式が始まったようだ。ロビーでは拍手と歓声が響いてる。

 ここはプロの大会でも使われる有名ゴルフ場。僕が地元でバイトしてたのとは完全レベチだ。集まる業界人の方々も各界の著名人ばかりで、経済紙なんかで見たことある人もいた。


「あ、相模原君、今日はよろしくね」


 ミニスカのゴルフウェアを粋に着こなした黛さんだ。いやあ、普通に綺麗だな。そこに藤堂社長と祐矢氏、それに晄矢さん。役者がそろった。


「涼、気楽にやればいいからな。どうせ遊びだ」


 紺色のウェアにベージュのパンツ。グラサンの晄矢さん、めっちゃカッコいい。半そでから見えてる腕の美しい筋肉に惚れ惚れするよ。


「ウオッホン! 粗相のないようにな」


 僕の熱い視線を感じたのか、祐矢氏が横やりを入れてきた。粗相のないようにしたかったら、僕を引っ張り出すなよ。

 多分同じことを思ったのか、晄矢さんが、思いっきりメンチを飛ばしていた。


「じゃあ、ここは三番でいいのかな」

「はい。先ほどから拝見していますと、藤堂社長は飛ばし屋さんなので」


 練習風景からの推察。正直あまり上手じゃないけど、飛距離は出るタイプだ。


「よし、じゃあこれで行くか!」


 クラブの選び方や狙うコース。グリーンに入っても助言することはできる。あまり邪魔にならないよう、聞かれたときだけに応じるようにした。


「ナイスショット!」


 それが功を奏したなんて言わないけど、みんな順調にスコアを伸ばした。一人を除いて。


「父さん、涼の言うこと聞いてんのか? 一人、スコア落としてるけど」

「城南先生、大丈夫ですよお。まだハーフですからっ」


 祐矢氏は僕に言うことを悉く無視して一人ボギーやらダボを重ねている。そりゃ、全部反対にしたら落とすわな。

 けど、超ご機嫌の黛さんに慰められ、少々傷つけられた模様。午後は助言聞いてくれそうだ。


「あ、水分補給タイムですよ」


 今日は湿度が高いから熱中症の危険がある。僕や晄矢さんが言うとへそを曲げられそうなので、黛先生にお願いして声をかけてもらうようにしていた。おかげで水分補給は大丈夫そうだ。さあ、あと半分!




「あら、ボール見失ってしまったわ」


 昼食後、15ホール目で、黛副社長のボールが林の中に。疲れが出てきたのか、さっきからやや曲がるようになっていたけれど。


「相模原君、探してきたまえ。君のアドバイスが適当だから!」

「先生、相模原君の責任では……」「父さんっ!」


 難癖つける祐矢先生に副社長と晄矢さんが声を上げる。こりゃ放っておくとヤバイな。


「大丈夫です! 僕、ボール見つけるの得意なんです! でもあそこから打つのは難しいので、打ち直しのほうがいいかと。先に進めていてください」


 鬱蒼とした林だ。あれではボールを出すのに三打くらい必要になるだろう。『なかったらないでいいよ』という黛さんの声を背中に、僕は林の中へと向かっていった。


 気づけば晴れていた空が、何やら黒い雲を集めだしてる。コースは上も下も暗雲垂れ込めるといったところだろうか……。




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