表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/103

第46話 ミッションインポッシブル


 急遽決まった話ではなかったようだ。明日のゴルフは、既に何日も前から決まっていた。

 飲み会で接待してすぐ、今度はゴルフ接待かとあきれたがそうでもない。業界人のコンペらしい。


 丸藤証券のメンバーは昨夜の三人トップと祐矢氏の四人だったのだが、脇田副社長の都合が悪くなったと(ほんとかよ)。

 それで、晄矢さんをピンチヒッターに指名した。そこまでならわかるが、なぜか僕をキャディーとして参加してほしいとオファーしてきた。


「祐矢様が相模原様のことをお話したら、是非にと言われたとのことです。藤堂社長も黛副社長もたいそう相模原様のことをお気に召されたようで……」


 そこでどうして僕の話をするんだよ、あのおっさん。全く信じられない。

 それに、コンペなら少なからず優勝とか順位がかかってくる話だよ。キャディーだってちゃんとした人がやった方がいいに決まってるのに。


「立花さん、今親父どこにいる。勝手なことしやがって!」


 立花さんからは部屋で聞いた。珍しくくつろいでてた晄矢さんはわかりやすく激怒している。


「旦那様は打ちっぱなしに出かけられました」

「な、追いかける。涼、心配するな、俺……」

「待って、晄矢さん。あの……大丈夫。僕、やるから」


 立ち上がり、今にも部屋を飛び出そうとした晄矢さんを呼び止める。どうしてだかわからないけど、この挑戦を受けて立ちたくなったんだ。そうしなきゃって思った。


「何言ってる。貴重な休みだ。涼は勉強しなくちゃ……」

「それも心配ない。元々僕は限られた少ない時間でやってきたんだ。ちゃんとやってみせるよ。立花さん、詳しいこと教えてください」


 立花さんはちらりと晄矢さんの顔色を伺う。


「今すぐ資料などお持ちしますが……」

「立花さん、ごめん。少し二人にしてくれるかな」


 晄矢さんの言葉に、立花さんは頭を下げて退室した。



「涼、本気か? どう考えても親父の……」

「うん、そうだね。でも、断ったら事務所にとっていいコトじゃないよね。藤堂社長さんたちに気に入られてるってのはどうかわかんないけど」

「それは間違いなく気に入られてるよ」


 晄矢さんは僕の両手を握って見つめる。本気で心配してくれてるのが伝わって来た。


「うまくやれるかどうかはわからないけど、誠意は尽くしたい。祐矢氏にもそこのところわかってもらいたいんだ」

「誠意なんか伝わるかよ」


 吐き捨てるように晄矢さんが言う。それは少し、僕は悲しかった。


「バイトのつもりでいたけど……今は違う。もちろん輝矢さんたちが許されたら、僕はいつでもこの屋敷から出て行くけど……祐矢氏には認めてもらいたいって思ってる」

「涼……おまえ、出て行く必要はない。輝矢が許されたって、ここに居ていいんだ」


 そうはいかないよ。僕は首を横に振る。


「ありがと。それはまた違う話だ。僕は、晄矢さんが好きだから。晄矢さんの選択は間違いではないって思ってほしいんだ。それだけ」


 と言うか、やっぱり意地もある。晄矢さんは何も言わずに僕をテーブル越しに抱きしめた。


「俺は……おまえを絶対守るから。離さないから……」


 耳元で誓う声は、少し震えていた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ