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第44話 陽菜さんと朝食


 昨夜、キスの先には進まなかった。正直、ついに熱い夜かっ! て思わなくもなかったけど、晄矢さんは酔いがぶり返してきたのか、シャワーを浴びた途端に爆睡してしまった。


 本人によると、僕が来てからは心配で酔えなかったのだが、随分アルコール摂取量は多くなっていた。それが上々な結果のおかげでホッとしたのか、急に酔いが回ったと。

 でも、僕だって盛りの付いた猫じゃない。僕はやりかけてた勉強を一区切りつくまでやれて良かったと思ってる。やせ我慢じゃないからね……。




「おー、青年。昨夜は逆転ホームランだったねえ」


 休日の遅い朝食を取ってるところに、陽菜さんがやって来た。一緒の家に住んでるはずなのに、このダイニングで会うのは久しぶりだ。もっとも朝は僕が避けてるんだけど。


「おはようございます。お粗末様です」

「お粗末じゃないよー」


 二宮さんが陽菜さんの朝食を運んできた。陽菜さんはそこからオレンジジュースをさっと取るとごくごくと喉を鳴らして飲んでいる。

 このジュース、搾りたてだから半端なく美味しい。ホテルのモーニングでバイトしてた時、残ったのを頂いたことはあったけどそれよりもずっと瑞々しくて美味しいんだよね。


「父さん、あれでね。実は喜んでんのよ」


 そうだろうか。あれから僕は突撃されたんだけど……。『これで済むと思うなよ』とまるでやくざのような……。


「え、マジで? それ。ウケルんですけど。いいわあ。涼君。親父氏を活性化させてるね」

「はあ……」


 活性化ねえ。まあ、お元気になられているならいいことだけど……いいかな。


「あの会社は、ああ見えてうるさいとこでさ。でも最大口だから大事にしないといけない。父さんは失敗するつもりはなかったはずなのよね」

「そうなんですかっ?」


 なんという危ない橋を……。僕が的外れならまだしも、失礼なこと言ってたらどうするつもりだったんだ。


「だから、そんなことはしないと思ってたんだよ」


 陽菜さんが言うには、晄矢さんが選んだ相手なら、当然このくらいの試練? は乗り越えられる。もしそれが出来なければそれまでのこと。晄矢さんも考え直すだろうと思ったんじゃないかと。


「結局、涼君はその試練をクリアしたんだよ。内心、嬉しかったと思うよ」


 うーむ。百歩譲ってそういう思いはあったかもしれないけど、嬉しかったかは同意できないなあ。


 ――――ちょっと前なら、別に気に入られる必要はない。僕はどうせ時間稼ぎのためにいるんだから。って思っただろう。でも今は違う……。出来れば気に入られたい……。


「まあ、父さんに気に入られた男性って言う意味では二人めだけどね」

「え? それってどなたの話ですか?」


 ふと口にされた陽菜さんの言葉に僕は聞き逃せなかった。もしかして、晄矢さんの元カレとか? いや、別にいたっていいんだけど……。


「ああ、法学部の同級生、友人だよ。そうだねえ。晄矢兄貴はバタ臭い感じのイケメンだけど、その人は純和風の男前の人だったなあ。シュッとした感じの。ふふーん。気になった?」


 めっちゃやらしい目をして僕を見る陽菜さん。いやいや、そりゃ気になるけど……。


「大丈夫です。気にしてません」

「そう? まあでも、彼はゲイじゃないよ。確かもう結婚されてるし」

「ああ、そうなんだ」


 あからさまにホッとしてしまった。それを見て、またやらしい笑いをする陽菜さん……。


 ――――あ、でも法学部か。例の親友とか言ってた人かな。そうか、祐矢氏に気に入られるほど出来た人だったんだなあ。


 と、僕は妙に納得してしまった。



 朝食を陽菜さんとともにいただき、未だ眠りの国の晄矢さんが待つ部屋に向かった。階段を昇ってるその時、どこから声が……。


『じゃあ、二人は……その……そういうことはしてなさそうなのか?』


 祐矢氏の声だ。二人って僕たちのことか? そういうことって……どういうこと? 

 僕は足を止めて耳をそば立てる。二階の廊下で話してるのか。でかい観葉植物で見えないあの場所で一体だれが密談しているのだろう……。





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