表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/103

第3話 突然の依頼


「おはよう。涼、なに、おまえまたバイト増やすの?」


 大学の情報センターの掲示板をぼんやり眺めていたら、後ろから声を掛けられた。今時はなんでもネットだけど、センターでは相談にも乗ってもらえる。二度とあんな理由でクビになりたくないので、話を聞いてもらいに来たのだが。


「ああ、いや。実はクビになったんだよ」


 声をかけてきたのは同じ学部の岩崎だ。彼も裕福ではない家庭なので、いつもバイトや節約トークで盛り上がっていた。アパートも同じだ。


「マジで! おまえをクビにするとは、にわかには信じられんな」


 そうだろう。僕だって信じられないよ。昨日あったことをかいつまんで話すと、岩崎は同情の表情で僕を見た。


「そうかあ……それは酷いな……。あ、じゃあ、これ行ってみないか?」


 岩崎はスマホを見せた。僕も一応スマホは持っている。これがないとバイトはおろか、大学の講義に出席するのも事欠くのだ。パソコンも大学から支給されたものを使っている。

 大学とアパートは学生用フリーWiFiがあるおかげで最低料金での契約だけど、それだって結構な金額だよ。それもバイトが欠かせない理由なんだが……。


「なに?」

「新しいホストクラブが出来たみたいなんだ。涼なら……」

「断る」


 ホストが体を売るとは言わんが、またぞろ面倒な争いごとに巻き込まれるのは目に見えている。


「だよな」


 岩崎も可愛い系の童顔だ。僕を誘おうと思ったのかもしれないが、行くならおまえ一人で行ってくれ。曖昧な笑顔のあいつを残し、僕はキャンパスへと出た。

 昨日、店長からは退職金代わりの一万円を貰った。それでなんとか食いつなぐとしても、今週中には決めないと。ため息を吐いたその時。


「君、そこの君。ちょっといいかな」


 なんだよ。ここは大学のキャンパスだぞ。僕はまたナンパかと思いムッとした表情で振り返った。


「あ……え? 嘘」


 そこには今朝、夢の中にいた人物そっくりの男性がいた。あ、もちろん服は着ている。


「ん? どうしたの。少し話がしたいんだけど……」


 男はブランド物と思われる真新しいスーツをビシッと着た長身で、明るい髪色は染めているのか地毛なのか。

 ストレートの短髪だが自然な感じにまとまっている。くっきりした二重瞼に鼻が高く、ハーフのような雰囲気が漂っていた。


 ――――僕はまさか、正夢でも見たのか? じゃあ、こいつ、僕を5万で買う気か!?


 しかし、まだ何も言われてないのに、挑戦的な表情を見せるのもなんだ。


「なんでしょうか……道案内なら……」


 大学2年生とはいえ、広いキャンパスの隅から隅まで知ってるわけではない。センターに行くことをお勧めしようとしたら、彼は両手を振って苦笑いした。


「いや。そういうわけじゃなくて。君を雇いたいんだ」

「は?」


 おいおい、マジで正夢だったのか?


「もちろん大学に通いながら。俺の仕事を手伝ってほしいんだ。住み込みで」


 怪しさしかない依頼に僕は何も答えられず、あっけに取られて彼のはにかんだ笑顔を見た。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ