表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/103

第12話 自意識過剰


 そんなことがあっても、僕は上機嫌で風呂から上がった。やっぱり気持ちいい。そして初めて腕に通したこのパジャマ! なんかすべすべで光ってるんですけどっ! 肌触りが良すぎてきっと僕の肌が驚いてることだろう。


 色々感動しながら寝室に行ってはたと気が付いた。晄矢さんは僕と入れ違いで風呂に入っている。無人の寝室にでかいダブルベッドがどかーんと鎮座している。


 ――――そうだった。ダブルベッドだよ。


 僕は自分の荷物から寝袋を取り出した。はじめからそのつもりだったのだ。


 ――――どこで寝よう。やっぱり隣のソファーの上がいいかな。


 部屋をうろうろしてると、見慣れないものが目に付く。まあ、この部屋にあるもの全てが、僕の生活圏にあるものとは別物だけど、値段的に。

 晄矢さんの書斎机の横に、ガラス製のチェスが置いてあった。見た目も綺麗だから置物なのか、それともチェスを嗜まれたりするのかな。ま、なんでもいいか。結局僕は、ソファーの上に寝袋を置くことにした。


「おい、何してる」


 僕が寝袋を広げていると、髪を拭き拭き晄矢さんが現れた。うっ! 上半身裸だ。僕は思わず目をそむける。

 やっぱり夢の通り、綺麗な筋肉と厚い胸板がこれでもかと男らしさを主張している。やばい、心臓が……。


「いえ、えっと……」

「そうか……なるほどな。でも、涼はベッドで寝ろ。どうしても二人で寝るのが嫌なら俺がここで寝る」

「それは……」

「ダブルベッドっていっても広いから、触れることはないよ」

「あの……でも僕は寝相が悪くて……」


 嘘だ。いつも寝袋で寝てるから、寝相が悪いなんてわかりはしない。それどころか、エジプトのミイラみたいに微動だにしない自信がある。


「それにこれは確認済みの案件だ。それを承知で来たはずだよね?」


 晄矢さんの言う通りだ。略式ではあるけれど、今回のバイトは書面での契約がされている。日給や決まり事なんかもそこに記してあり、確かに『ダブルベッドでの就寝』は入っていた。


「もし誰かが突然入ってきて、涼がここで……寝袋なんかで寝てたら疑われるだろ?」


 そう諭されて、僕は頷くしかない。


「心配しなくても襲わないから」


 晄矢さんはくすりと笑って、寝室に入っていった。ひええ。確かにそう言われてしまうと、こちらが自意識過剰過ぎて赤面するよ。


 ――――君の許しなしにはしない。


 晄矢さんはそう言ってた。これはバイトなんだから、信じていいはずだ。仮にも相手は超有名弁護士なんだ。

 僕は恐る恐るベッドに入る。しかし布団の中に潜り込んですぐに分かった。その気持ちよさたるや! 

 横に晄矢さんがいることなんか忘れ、僕は秒で眠りに落ちてしまった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ