3.破滅への階段③
「父上……? それは、どういう……」
「話は以上だ。下がれ、ダミアーノ」
そんな。いきなりそんなことを言われても。
「どうして私が廃嫡なのですか! 納得がいきません!!」
外遊から戻られて、学園の卒業パーティーが行われた翌日。
父上に呼び出されていきなりそんなことを言われた私には、廃嫡にされるような心当たりがない。
「お前は……本当に、分からないのか? 自分が一体、なにをしたのか」
「分かりません! 私が一体なにをしたというのですか!」
成績は悪くはなかったはずだ。
確かに一番ではなかった。だがそれは私の周りの者たちが、私の目にとまろう、私を支えようと努力した結果にすぎない。
であれば、私はそれを喜び労うべきで。決して非難すべきことではないはずだ。
「そうか……。私たちも、悪かったのかもしれないな。ジュリアーナに全てを任せ、頼りすぎた」
どうしてここで、あの女の名前が出てくる?
そもそも父上がそこまで頭を抱えて憔悴するほどの、なにがあるというのか。
(まさか、またあの女がなにかよからぬことを企んでいるのか!?)
「ダミアーノ、お前はしばらく自室で謹慎だ。外に出ることは許さぬ」
「父上!?」
「我が息子ながら、情けない。……連れて行け」
「はっ!」
父上はこれ以上話すことはないと、態度で示されてはいたが。結局私は、納得できる理由をいただけなかった。
「父上! せめて理由を!」
「自らの頭で考えて答えが出せぬような愚か者に、答えてやる義理はない」
「っ!!」
兵に連れ出されながらも、必死で訴えた私の言葉に返されたのは。
父上の突き放したような言葉と、今まで見たこともないような冷たい瞳だった。
そしてこの日から、私の生活は一変する。
公務はないが、娯楽もない。
朝夕の着替えと食事の時間、そして湯あみの時以外、誰かと接触することも許されず。
気がついた時には、私の廃嫡手続きは終わっており。プラチドが学園を卒業次第、立太子の儀を執り行うことが決定していた。
「なぜっ……! なぜ、私ではなくっ……!」
私は第一王子だ! 本来であれば、私が立太子すべきだろう!
それなのにっ……。なぜ私は王太子ではなく、公爵にならなければならない……!
「父上! なぜなのですか!」
あれから、父上には一度もお会いできていない。
父上だけじゃない。母上も、ある時から全く顔を出してくださらなくなった。
プラチドなど、一度も会いになど来ていない。
「お手紙が届いております」
外から聞こえたその声に、今度は何の知らせだと顔を向ければ。
無骨な兵が一人、部屋の中へと入ってきて。テーブルの上に、一通の手紙を置いて出て行った。
「手元まで持ってくることすらしないのか!」
兵にそんな教育がされていないのは分かるが、それでも礼儀というものがあるだろう!
誰もそれを教えていないのが、私からすれば不思議でならない。
「そもそも、こんな時に手紙など……」
ぼやきながら、手に取ったそれを裏返して。
封蝋の、紋章を確認すれば。
「っ!! リーヴィアからか!」
ブラスキ男爵の紋章で、間違いない。
となれば、この女性が好みそうな色や柄からして、彼女からの手紙のはずだ。
そう思って、喜びと共に封を開けて中身を読み進めてみれば……。
「…………は?」
そこには婚約破棄の旨と、私の浮気に対する罵詈雑言が所狭しと書かれていた。
労いの言葉一つないそれは、どう見ても利己的としか言いようがない。
「こんなっ……こんな女だったなんてっ……!」
私に愛を囁いたのは噓だったのか!?
そもそも浮気だなんて、おかしなことを言うな。
この国の民は、王となる私のものだ。所有者がどうしようと、関係ないだろう。
「なぜ私の周りには、こんな女しかいないんだ……!!」
叫んでも、私の声は誰にも届かない。
私は確かに、王への道を歩んでいたはずだ。
着実に、一歩一歩。階段を上っていたはず。
一体どこで、道を間違えた?
いつから私は、破滅への階段を上っていたのか。
もう私には、なにも分からない。
これにて、計画的ざまぁ終了です!
本編の最後に、この後の二人について触れていた通り。結局この後、結婚もできないまま生涯を終えるのでした。
彼らの犯した罪は重犯罪ではなかったので、はたから見れば軽い刑にも見えるかもしれませんが。一生針の筵で過ごすというのは、個人的には中々に苦痛だろうなと思います(=ω=;)
さて、残りあと少しですが。おまけ話を、二話ほどご用意しております。
最後までお付き合いのほど、よろしくお願いします!m(>_<*m))ペコペコ
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