第11章 強欲の狂剣編 二学期 第348話 運命の刻へのカウントダウン
「―――私は、この世界に、本物の英雄を誕生させたかった」
12月25日。聖騎士養成学校……時計塔。最上階。学園長室。
そこで聖騎士団団長であるゴーヴェンは、窓の外に広がる、王都の街並みを見つめていた。
その目に映るのはしんしんと降る雪の中、街灯を光らせた夜の街の姿。
王都の人々は女神生誕祭を祝い、王都の中央にある大聖堂へと足を運んでいた。
ゴーヴェンは短く白い息を吐くと、疲れた表情を浮かべる。
「信じられないかもしれないが、私も当初は、この世界の在り方に異を唱える正義に燃えた剣士だったのだ。今話題の剣王たちや、我が息子ヴィンセントのようにな。だが……私は、バルトシュタイン家の当主になってこの国の仕組みを知った時、気付いたのだ。この国は、聖女がいる限り変わることはないのだと」
そう言って振り返ると、ゴーヴェンは眉間に皺を寄せ、怒りの声を上げる。
「我ら人間は、奴ら高位人族どもに飼われている奴隷でしかなかったのだ!! 剣聖とは!! 剣神とは!! 聖女が求める未来へ進むための駒でしかないッ!! 故に!! 私は、決めたのだ!! どんな犠牲を払おうとも、どんなにこの身を削ろうとも、正義の名のもとに……この国を人の手に取り戻すと!!」
「……」
「意外かね? まぁ、無理もない。私はセレーネ教肯定派のジュリアン派閥にいる人間だからな。だが、エステリアル派閥に付くよりも、私にとってはこちらの方が都合が良かったというだけの話だよ。エステリアルと私の思想は似ているようで根本が異なる。それに、あの王女は、私が御し切れる器ではない。故に、私は、敵対勢力とも言えるジュリアンに付いたのだ」
首を横に振ると、ゴーヴェンは席に座り、手を組んだ。
「さて……本題へと移ろう。君も知っての通り、私は、宝物庫にある魔道具を使用して、アネット・イークウェスの肉体にアーノイック・ブルシュトロームの魂を転移させた。その理由は、先代剣聖が、唯一上位存在への攻撃が可能となる【滅し去りし者】の力を受け継いでいたからだ。あの力があれば、眷属の縛りなく、高位人族に攻撃することができるようになる。あれはまさしく、神をも殺す剣だ」
「……」
「しかし、悲しきことに、アーノイック・ブルシュトロームは、聖女を殺すことをしなかった。だから……もう一度、この手で、私は神殺しの英雄を作り出すことに決めたのだ。今まで不思議に思ったことはなかったかね? 何故、オフィアーヌ家から赤子は無事に逃げきることができたのか。何故、学園に入学した時に配属された寮……満月亭は、男女共有の寮であったのか。その理由は全て、私がこの手で真の英雄を作り出すために打った計画のひとつだったからだ。両親を失ったことを知れば必ず赤子は憎悪を抱き、私の元に辿り着くだろう。そして、満月亭に集まった先代剣聖の面影が残る、前世と似た境遇の生徒たちに出会えば……アネット・イークウェスは前世の記憶を思い出し、この理不尽な世界と戦おうとするはずだ。転生した最強の剣聖は、神殺しの英雄へと育つはずだ」
「……」
「無論、アネット・イークウェスがどこまで転生できているのか、私には把握することができなかった。だから、計画は慎重に行なった。接触は極力控え、転生しているのかどうか調べるために、部下を嗾けたりもした。もっとも、リーゼロッテが私の指示の意図を履き違え、アネットを潰そうとしたのには困ったが……まぁ、あれのおかげで、私は彼女の転生が成功していることを知ることができたので、結果的には良策だったと言えるだろう。何故ならこうしてお前は……私の意図通り、この国の裏側を知り、私の元へと来たのだからな、アネット・イークウェス」
ゴーヴェンは「ククク」と笑みをこぼすと、机の前の椅子に座るメイドへと笑みを浮かべる。
「さて……約束の生誕祭の日にようこそ、神殺しの英雄アネット・イークウェスよ。君の答えを聞こう。君は……この理不尽な世界を作った世界が憎くはないかね?」
――――――――第一部 最終章 強欲の狂剣編――――――
―――――――――夢を見ている。
闇の中。あたしはひたすら、光に向かって手を伸ばし続けている。
あの光の中にはきっと、アネットがいるのだと思う。
あたしは血だらけの自分の体を引きずり、アネットの元へと走って行く。
あの子との約束を果たすために、あたしは、ここまで走って来た。
きっと、あともう少し。あともう少しで、あたしは【剣聖】になって、あの子の隣に立つことができ――――――。
『お前たちが結ばれることは、絶対にない』
いつかラヴェレナに言われたその言葉が、胸に反響する。
その瞬間、背後に何者かの気配を感じた。
あたしは足を止めて、背後を振り返る。
「……誰?」
そこにあったのは、深い闇と、闇の中からこちらを見つめる二つの紅い瞳。
闇の中にいる人物は、あたしの元へと、ゆっくりと歩いて来る。
そして、あたしの前に姿を現したのは――――もう一人のあたしだった。
もう一人のあたしは、無表情のまま、口を開く。
「目覚めの時は近い」
「はぁ? いきなり分けのわからないこと言ってんじゃないわよ。ぶっ飛ばすわよ。というか、誰、あんた。ラヴェレナ? 消えたんじゃなかったの?」
「我を手に取れ。そうすれば、お前の望みは叶う」
「はい?」
「飽くなき渇望を抱く狂剣士よ。我を持つに相応しき狂剣士よ。私は、いつまでもお前を待っていよう。手の中にある全てのものを捨ててでもあの光を求めしお前は……いずれ、闇の剣聖となる運命にある。ラルデバロンが待っていた剣士は、お前だ、ロザレナ・ウェス・レティキュラータス」
「……あんた……もしかして、赤―――」
――――――チュンチュン。
目が醒める。
あたしはベッドの上で、静かに、天井を見つめていた。
「朝、か」
上体を起こし、額に手を当てる。
今の夢は、ラヴェレナが【受け継ぐ者】で見せてきた過去の光景とは、異なるもののような気がした。
まったく……ラヴェレナと良い、さっきのわけのわからない奴といい、人の夢に勝手に出てくるんじゃないわよ。腹立つわね。
「お嬢様ー、朝ですよー」
「あ、うん、アネット。起きてるから大丈夫よー」
あたしは扉をノックするアネットにそう言葉を返して、ベッドから立ち上がった。
まぁ、気にしていても仕方ないわね。
アネットに相談は……やめておこうかしら。また何かいらない心配かけそうだし。
「アネットがいる限り、あたしはあたしなんだから。大丈夫よ」
あたしはそう言って、クローゼットを開けると、そこから制服が掛かったハンガーを取り出した。
連日剣王試験で忙しかったけれど、今日も学校だわ。はりきって行かなければ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
《アネット 視点》
11月5日。剣王試験から10日後。
あれから、箒星の弟子たちの生活は一変した。
「さぁ、アネットー! 剣王会議があるから、一緒に帰るわよー!」
授業を終えて放課後。ロザレナは席を立つと肩にカバンをかけ、そう、隣の席に座る俺に声を掛けてきた。
俺は眉を八の字にして、首を傾げる。
「お嬢様。私は剣王ではないのですから、会議に連れて行かれても困ります」
「あたしのメイドなんだから、どこに連れて行こうがあたしの勝手でしょう?」
「いや、ですが……」
「……まったく。あなたは【剣王】になっても変わらないですわね。どこの世界に四六時中、自分のメイドを連れて歩いている【剣王】がいるんですの……」
「げっ。やかましい副級長がきたわ」
「誰がやかましい副級長ですの!!」
そう言って近づいてきたのは、アルファルドを連れたルナティエだった。
ルナティエは額に手を当てると、はぁと、大きくため息を吐いた。
「アネットさん。わたくし、馬鹿と馬鹿の世話をするのにもほとほと疲れてきましたわ。いえ……最近は一人増えて、馬鹿と馬鹿と馬鹿、ですわね」
「ん? 馬鹿と馬鹿と馬鹿? グレイレウスと手品師と……アルファルドのこと?」
「何でオレ様なんだよ!!!! どう考えてもお前とグレイレウスとフランエッテの奴のことだろうが!!!! 何で自分をスルーすんだテメェはよ!! どんだけポジティブな脳みそしてんだァ!? あぁん!?」
「あたしよりも絶対にアルファルドの方が馬鹿だわ!! 頭悪そうだもの!!」
「……おい。アネット。お前、この女にどういう教育してんだゴラ。こいつ、人様の顔に指差して頭悪そうとか言ってきやがったぞゴラ」
顔中に血管が浮いているアルファルドに、俺は「あはは」と渇いた笑みを溢す。
「申し訳ございません。何というか、お嬢様は自由人と申しますか、思ったことがすぐに口から出ると申しますか……私では手に負えないというか……でも、そういうところも可愛いですよね。とても愛らしい性格をしております」
「アネット〜♡ すき♡」
「馬鹿主従かよ……」
俺に抱きついたロザレナを見て、アルファルドは心底呆れた様子でげんなりとした。
そんな俺とロザレナの姿を見つめていたルナティエは、ボソッと口を開いた。
「わたくしも……もっと、我儘になった方が良いのかな……」
「はぁ? 何言ってんだ、テメェ、クソドリル?」
「な、何でもありませんわよ!! さぁ、剣王会議に行きますわよ、ロザレナさん!」
「はぁい〜」
「……ちょっと。いつまでアネットさんの腕抱いているんですのよ!! 離れなさい!!」
ロザレナとルナティエが俺の前でまたいつもの小競り合いを始めた、その時。
俺たちの元に、ある人物がやってきた。
「ちょいちょいー? あーしも同じ剣王なんですケドー? 仲間はずれにしないでくれない?」
「そうであります! ヒルダお嬢様も、ロザレナ級長とルナティエ副級長と同じく【剣王】であります! 仲間はずれはダメであります!」
そう言ってやってきたのは、肩にカバンを背負ったヒルデガルトとミフォーリアの主従だった。
ヒルデガルトは俺とロザレナに笑みを浮かべた後、チラッと、近くに立っているアルファルドに目を向ける。
その様子に、ルナティエは即座に俺から離れると、ヒルデガルトたちの元へと慌てて駆け寄って行った。
「ヒルデガルトさん。アルファルドの件は、剣王試験で話した通り―――」
「ん」
ヒルデガルトは、鞄の中から紙袋を取り出すと、それをアルファルドへと突き出した。
アルファルドは不思議そうに首を傾げる。
「なんだよ」
「傷に効く塗り薬。あんたまだ怪我、完全に回復してないでしょ?」
「あ? なんでテメェが、オレ様に薬を渡すんだ? そんな義理、ねぇだろうが」
「綺麗に全部水に流す……ってことは、勿論、できないよ。でも、ベアトリッちゃんがあんたを許すって言ってた。それに、あーし、ルナティエに負けたし。だったら、潔く副級長の指示に従わなきゃ恥ずかしいでしょ。だから、あーしも……あんたをクラスメイトだって、仲間だって認めるよ。これからは仲間……で、良いんでしょ?」
「……お前……」
ヒルデガルトのその行動に、驚きの表情を浮かべるアルファルド。
そんな彼の腕を、ルナティエは笑みを浮かべながら肘で突いた。
「アルファルド。受け取っておきなさい」
「は? いや、だけどよ……」
「人が犯した罪は消えませんわ。ですが、その後の行動で、罪を償うことはできる。これからの行動で示しなさい。貴方が、もう以前とは違うのだということを」
「……」
アルファルドは辛そうな表情を浮かべた後、ヒルデガルトが突き出していた紙袋を受け取った。
「ベアトリックスの母親の容体は……どうだ?」
「……あんまし、良くはないかな。太腿まで木質化が進行してきたって」
「そうか……」
「今、ベアトリッちゃんのお兄さん……【剣王】のグレイレウス先輩が、元剣王のルクスを探し回って、資金を集めようとしているみたいだけど……現状は『死に化粧の根』の治療薬の開発はお金が貯まらなくて頓挫している。それに、人手も足りていないしね。薬の開発は、ベアトリッちゃんとオリヴィア先輩頼りなところあるし」
「オレ様にできることがあったら、何でも言え。勿論、あいつの母親をあそこまで追い詰めた元凶であるダースウェリンの嫡子のオレ様に頼るのは、嫌悪感があってしかるところだが……」
「何言ってんの。あーしだって、ダースウェリンだし。それに、お母さんのことはあんたじゃなくて、悪いのはあんたの父親でしょ? そこまで責任感じる必要はないでしょ。まっ、何かある時は言うよ。……アルファルド。これからはさ、一緒に変えていこうよ、ダースウェリン家を。この世界を。ベアトリッちゃんと彼女のお母さんを苦しめているのは、この国の上に立っている奴ら、なんだからさ。一緒に戦って行こう」
「あぁ……そうだな。新しい世代に立つオレ様たちで、変えてやろう。この国で弱者どもの血を吸って生きるクソどもを、ぶっ潰してやろう」
コクリと頷き合う、ダースウェリン家の二人。
アルファルドが変わったように、ヒルデガルトがアルファルドを許して、手を取り合う道を選んだように。
人は、変わっていける。やり直すことができる。
きっと、新しいダースウェリン家は、以前とは異なるものになるだろう。
徐々に世界が変わり始めている。若者たちの成長によって。
「さぁ、行きますわよ、ロザレナさん。ヒルデガルトさん」
そう言って、ルナティエは髪を靡き、教室の入り口へと向かって歩いて行く。
そんな彼女の後を、慌ててロザレナとヒルデガルトがついて行った。
「ちょっと! 何であんたが仕切っているのよ! あたしが級長で、剣王二番手なんだからね! って……二番手……うがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!! グレイレウスめぇぇぇぇぇぇぇ!!!! いつか必ず、ぶっ飛ばしてやるんだからぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「なんか、ロザレナっち、暴れてるんだけどぉ!? ちょ、ルナティエっち!! 止めてよ!!」
三人の主人の後を、俺たち従者は遅れてついていく。
「まったく……お嬢様。落ち着いてください。いつまで僅差で敗北したことを引きずっているのですか」
「おい、クソドリル!! 前で暴れているこのゴリラを何とかしろ!! 拳が後ろに飛んで来て……うぼぉあッ!?」
「うひゃぁー!? アルファルドが殴られたであります!? 怖いであります!!!! アネット殿、何とかしてくださいー!!!!」
六人で騒ぎながら、俺たちは、廊下に出る。
すると、廊下を歩いていた生徒たちは皆、三人の主人を見つめて、道を開けていった。
「あれって、新しく【剣王】になった、黒狼クラスの……」
「同じクラスから三人も【剣王】が出るとか、やばすぎだろ……ただでさえ、学園から【剣王】が出るなんて、数十年に一度あるか無いかって言われているレベルなのに……」
「本当に、落ちこぼれが集まるクラスなの、あそこ!? 絶対学園長配属ミスしてるでしょ!!」
「【覇剣】のロザレナ様に、【色彩剣】のルナティエ様に、【雷光剣】のヒルデガルト様……かっこいいわ……! お近づきになりたい……!」
ザワザワと、ざわめき立つ生徒たち。
その様子に、俺たち従者はどこか居心地悪そうに、主人たちの後をついて行く。
「一気にご主人様が有名になると、一緒に歩く従者も何だか有名になったみたいな気分になるでありますね……」
「そうだな。にしても、【剣王】ってやっぱりすげぇんだな。まるで歌劇団のスターみてぇじゃねぇか」
「【剣神】の下の座に就く剣士ですからね。目立つのはやはり仕方がないと思います」
俺がそう従者二人に言葉を返した、その時。
廊下の向こう側も、人が端に寄り、道ができていた。
廊下の奥へと目をやると……そこには、黒髪ショートボブになっている少女の姿があった。
「あれって……」
「あぁ、新しく天馬クラスの級長になった……」
先ほどとは一変、生徒たちの声は黄色いものから、どんよりとしたものに変わる。
相変わらず、あいつは嫌われているんだな。まぁ、無理もないか。
「……どうしたの? 何でお喋りやめちゃうの? ここにも【剣王】いるんだけどー?」
そう言ってロザレナたちの前に現れたのは、キールケだった。
キールケは鎖に繋がれた従者を背後に連れながら……いや、鎖には繋がっていない? 首輪だけを嵌めた従者を連れながら、こちらへと歩いて来た。
彼女はクスリと笑みをこぼし、俺たちの前に立つと、ロザレナに声をかける。
「ロザレナ。久しぶりじゃない」
「ええ、剣王試験ぶりね。というかあんた、まさか天馬クラスの級長になるなんてね。リューヌといい、天馬クラスの級長って性格悪い奴しかならないのかしら?」
「はぁ? お前、相変わらず生意気な奴。剣王二番手だからって、調子に乗っているわけ?」
「二番手……二番手って、言うなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「うわぁ!? ちょ、急に大きな声出すんじゃないわよ!! 殺されたいわけ!?」
キールケは驚きの表情を浮かべると、胸を押さえる。
すると、そんな彼女の背後に立った何者かが……キールケの背中を押した。
「邪魔です」
「は?」
ドサリと廊下に膝をつくキールケ。
そんな彼女の背後から現れたのは……シュゼットだった。
シュゼットは俺と目が合うと、キラキラと目を輝かせ、頬を赤く染める。
「アネット!!!! お姉ちゃんですよーーーーー!!!!」
「い、いや、シュゼット姉様、それよりも……」
「……【深淵なる影の庭】」
キールケは立ち上がると、足元に黒い影の領域を展開させる。
そして腕に抱いていたクマのぬいぐるみに、針の剣を突き刺そうとした。
だが――――――。
「【ストーン・バレッド】」
シュゼットは振り返ると、キールケへと扇子を向けて、石の破片を放った。
石の破片はキールケの手の甲に当たり、キールケは思わず、針を落としてしまう。
「お前……!」
「【剣王】になったからと言って、調子に乗らないで欲しいですね。【剣王】だから、何だと言うのですか? 我が妹の前で剣を抜く者は、何人たりとも……容赦はしませんよ? 【呪殺剣】キールケ・ドラド・バルトシュタイン」
「シュゼット。お前、今までは剣王相当の実力者、級長最強とか言われていたけど、もう前みたいに目立つことはできなくなるから。今度はキールケちゃんが、学園最強になるんだから」
「貴方は……以前から亡くなった母に似ていてどこか嫌いだったのですよ。私の従姉妹であるということも悍ましい。ここで消してさしあげましょうか?」
「はぁ? やれるものならやってみたら?」
バチバチと火花を散らす、シュゼットとキールケ。
周囲の生徒たちはその光景を見て、ヒィィィと悲鳴を上げて、逃げていく。
まぁ、この二人の相性が悪いのは何となくわかってはいたことだが……ここまでとは、な……。
ヴィンセントとギルフォードと言い、バルトシュタインとオフィアーヌは、どうやらぶつかり合う運命にあるらしい。
「おい、シュゼット! お前、何やっているんだ! こんなところで!」
その時。騒ぎを聞きつけたブルーノが、廊下の奥から走ってきた。
相変わらず、シュゼットの暴走を止める係になっているようだな、あの人も……。
俺は心の中でブルーノにお疲れ様と声を掛けつつ、お嬢様の背中を押して廊下を進んで行った。
「さぁ、行きましょう、お嬢様。面倒ごとに巻き込まれる前に」
「ちょ、ちょっと、アネット! あの二人の戦い、あたし、見たいわ!」
「ダメです。教育上悪いです」
シュゼットとキールケとか、ガチで学園の中で殺し合いとかしそうだもんな……これ以上うちのロザレナを戦闘狂にしてはいかん。友達は選ばせないと(もう遅い)
そうして、俺たちは廊下を進み……剣王会議が行われる、かつて剣王試験を行った詰所へと向かって歩いて行った。




