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【コミック1巻3月25日】最強の剣聖、美少女メイドに転生し箒で無双する  作者: 三日月猫@剣聖メイド1〜4巻発売中!
第10章 剣王試験

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第10章 二学期 第318話 剣王試験編ー㊱ かつての兄弟弟子たちとの邂逅


 闘技場に連れて来られた後。


 転移の魔道具を剣王たちへと返却し、第三次試験開始まで、受験生たちは一時間の小休憩を挟むこととなった。


 詰所の敷地内なら自由に過ごして良いということで、皆、休憩開始と同時にそれぞれ別の場所へと去って行く。


 闘技場に残ったのは、俺と三弟子のみ。


 三人の弟子たちは、お互いに向かい合い、睨み合っていた。


「良いわね、グレイレウス、ルナティエ。例え同じ箒星の門下生だとしても、トーナメントで当たったら、あたしは容赦しないからね」


「フン。馬鹿を言うな。むしろオレは、第三次試験で全力を以ってお前たち二人を叩きのめしてやりたいと思っていたところだ。そろそろ、証明してやろう。箒星で最強なのは……このオレだということをな」


「オーホッホッホッホッ! ゴリラ女とマフラー変人が何か言ってますわねぇ! そんなこと、貴方たちに言われなくても分かっていますわ。むしろ、手加減なんてしてみなさい。一生許しませんことよ。ロザレナさん。グレイレウス。このトーナメントで優勝するのは……栄光あるフランシア家の息女、このルナティエ・アルトリウス・フランシアだということを、分からせてさしあげましょう」


 3人とも、不敵な笑みを浮かべて、睨み合う。


 険悪……というのとは違うか。


 あいつら三弟子は、誰よりもお互いの実力を認めている。


 多分、今の剣王よりも、自分たちの夢の障害になるのは門下生同士だと考えているのだろう。


 誰よりも認めているが故に、誰よりもライバル視している。


 あいつら3人の関係性は、マリーランドの時からずっとそんな感じだ。


 仲が良いのか、仲が悪いのか、よく分からないな。


 その姿を見て微笑んでいると、一瞬、あいつら3人の姿が、前世の若い俺と、若いハインライン、若いジャストラムに重なって見えてしまう。


 俺たち3人も、よく、ああやって競い合っていたっけな。


 確か、俺たちが【剣王】の称号を獲った時は、3人で【剣王】が集まる集会に喧嘩を売りに行ったんだっけ……。


 我ながら若い頃の俺たちも、無茶苦茶をやったものだ。


「―――君」


「はい、何でしょう? ……って、どわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」


 弟子たちを温かい目で見つめていた、その時。


 背後から声を掛けられたので、振り返ってみれば、そこには……ジャストラムとハインラインの姿があった。


 俺は内心でダラダラと汗を掻きつつ、すぐに演技モードに切り替え、アネットちゃん可愛いスマイルを浮かべる。きゃぴぴ☆


「……何か、悪寒がする……」


 アネットちゃんの全力可愛いスマイルをしたら、何故かジャストラムが顔を青ざめさせた。何でだよ。


「あの、私に何か御用でしょうか?」


「君、剣王試験の会場にいたよね? 受験生?」


「第二次試験で落ちてしまいましたけどね。今は、あちらにおられる我が主人の応援をするために、ここに残っています」


「そう。まぁ、君の身の上とかはどうでもいいんだけど。私が聞きたいのはひとつだけ」


 相変わらず、興味ない人間にはとことんどうでもよさそうだな、この女。


 ジャストラムは飴の包装を開け、口に棒付きの飴を放り込むと、コロコロと舌で転がしながら口を開く。


「山崩れが起こった時……何か、見てなかった?」


「何か、とは?」


「誰かが剣を振って、山に斬撃を飛ばしていたりとか」


 まだ疑ってんのか、この犬耳女。


「いえ、そういうものは、特に……」


「おい、ジャストラム。お前、さっきから受験生に同じようなことを聞いて回っているが……いったい何なんじゃい」


「ハインライン。受験生の中に……【覇王剣】に似た剣技を使う奴がいるよ」


「なんじゃと!?」


 驚き目を見開くハインライン。俺は心の中で渋い顔をしつつ、笑みを浮かべて口を開いた。


「【覇王剣】……というのは、先代剣聖様の技、ですよね? 全てを滅する剣だという……そんな技を使う剣士が、果たして受験生の中にいるのでしょうか?」


「そうだね。普通に考えれば、いない。でも、あの山を削ったのは間違いなく剣によるもの。それくらいの観察眼くらいは持っている」


 やっぱり厄介だな、こいつ。

 

 ハインラインやジャストラムに俺の正体を告げても、こいつらが俺を裏切ることはないだろう。それは、間違いなく分かっている。


 だが、ゴーヴェンが俺の転生に絡んでいると分かったため、これ以上、俺の正体を他の人間に知らせて周囲を危険に巻き込むことは、避けたい。


 ルナティエに明かしたことも、今思うと、かなり危険な綱渡りだったことが理解できる。下手したら、ゴーヴェンに、ルナティエごと……いや、フランシアごと、フィアレンス事変の時のように抹消されかねない。


 ゴーヴェンの思惑が分からない以上、俺の情報を他者に漏らすことは、デメリットしかない行為だ。


 故に、ここは、どんなにジャストラムが疑っていようとも、尻尾を出すわけにはいかない。


 相手は……この国の全てである可能性もあるからだ。


「【覇王剣】と同規模の剣技、か。アーノイックでもあるまいし、剣士が弱体化した今の時代にそんなでたらめな力を持った奴はいないと思うが……まぁ、お主の勘は当たるからな。頭の片隅にでも置いておこう」


「全員に聞いてまわって情報を得られないのなら、直に試験を見て、受験生たちの実力を確かめるしかないね」


「そうじゃなぁ。にしても、あの3人、若い頃のワシらに似ておらんか、ジャストラム」


 そう言ってハインラインは、未だに睨み合いを続ける三弟子へと視線を向ける。


 その光景を見て、ジャストラムは首を傾げた。


「そう?」


「あの威勢の良い嬢ちゃん……ジェシカちゃんのお友達で、リトリシアに喧嘩を売った彼女が、アーノイック。そしてマフラーを巻いている、あの少し変わり者っぽいのがジャストラム。そして、3人のまとめ役っぽいキュリエールの孫娘が、ワシじゃ」


「……ジャストラムさんは変わり者じゃない。むしろ、私たち3人の中で、一番のまとめ役だった。エロジジイがまとめ役は、ない」


「何言っておるんじゃ、お前は! ワシがどれだけお前たち二人に迷惑を掛けられたと思っておる! アーノイックが気に入らない民間人を殴った時はワシが謝りに行き、お主が菓子を食べ歩きをしたせいで、王都中に飴玉を落として道を作っていた時は、ワシが拾いに行き……どれだけお前たちの世話をしたと思っているんじゃ!! アホどもが!!」


「違う。ジャストラムさんはクールビューティすぎるから、敢えてお茶目なところを演出していたというだけの話。この愛くるしいジャストラムさんは、そういった計算で作られているのだ。えっへん」


「嘘を吐くな!! お前が抜けているのは、全部素じゃろうが!!」


「くすっ」


 二人の会話を聞いて、俺は思わず笑みを溢してしまう。


 そんな俺に対して、ジャストラムとハインラインが同時に口を開いた。


「アーノイック、お前も笑ってないで何とかこいつに―――って、あれ?」


「アーノイック。ジャストラムさんは、ハインラインに激怒した。今度、ハインラインが隠し持っているエロ本を、一緒に全部処分しに―――って、あれ」


 二人は同時に俺へと視線を向け、首を傾げた。


「何故……このメイドちゃんを、アーノイックと呼んでしまったんかのう。不思議じゃわい」


「同じく。あのムキムキ無精髭男と、この子は、似てもにつかないのに」


 二人のその反応に、俺は思わず目を潤ませてしまう。


 ……懐かしかった。まるで、俺も、昔のように二人の輪の中にいた気がした。


 いつか二人に……俺の正体を教えて……また、三人で馬鹿な言い合いをしたいな。


 女になったって言ったら、笑われるんだろうな。


 昔より笑うようになったって……そう、言われるんだろうな。


 幻影体アーノイックと戦ったせいかな。すごく、過去に戻りたい気持ちが強くなってしまった。


 俺は袖で目元を拭い、三弟子へと視線を向ける。


「……すみません。お二人が、とても楽しそうに会話をしているので、釣られて笑ってしまいました。お二人とアーノイックさんは、あの三人のように、仲がよろしかったのですね」


「まぁ、のう。アレス師匠の元にいた頃は、あの3人のように、ワシらはいつも言い合いをしておったわい。まぁ、泣かされていたのはいつもワシだったけどのう。ほんと、アーノイックとジャストラムは馬鹿な弟と妹じゃった」


「馬鹿はアーノイックだけ。あいつに泣かされたのは、何もハインラインだけじゃない」


「お前は、違う意味で泣かされておったな。万年フラれ娘め」


「うるさい、ジジイ。私はいつもアーノイックにこの身体を使って熱烈ラブラブアピールしていたというのに、全然、見向きもされなかったんだよ。あいつに傷付けられた度合いで言えば、ハインラインよりも私の方が上」


「いや、お前のお子様ボディでいったい何をアピールするつもりじゃったんじゃ……」


「何」


「いや、何でもない。続けるが良い」


「……あいつは、挙句の果てに、アレスが死んだのは自分のせいだと抱え込んで、勝手に気まずくなって、私を避ける始末。傷付いた私は、当分、アーノイックを避けることにした。あいつに追いかけて、欲しかったから。そしたら……」


 ボロボロと、涙を流し始めるジャストラム。


 俺はその光景を見て、息を呑んだ。


「そしたら、あいつ、待っている間に……死んじゃった。私、獣人族(ビスレル)人族(ヒューム)の時間の差を分かっていなかった。いや、違う。アレスを失って絶望したアーノイックを見ていることが、できなかったんだ。ぐすっ、長年、王都に来れなかったのは……アーノイックの死を再確認するのが、嫌だったから……死んでないって思いたかったから。だから、お葬式にも行けなかった……でも、行けば良かった。あいつとちゃんと、お別れしておけば、良かった……」


 飴を地面に落とし、しゃがみ込むと、顔を手で塞ぎ……子供のように泣き始めるジャストラム。


 そんな彼女に、ハインラインは孫をあやすように背中に手を当て、摩ってあげた。


「分かっておったよ。お前が長年人里に降りてこなかった理由も、葬式に来なかった理由も。リトリシアはお前を冷たい奴だと糾弾しておったが……兄弟子であるワシには分かっておる。お前が誰よりも、アーノイックを想っていたことは」


「あの時、私は、逃げずにアーノイックの傍にいれば良かったんだ……父を失って苦しむあいつを傍で支えてあげられたら、そうしたら……!」


「いいや。結果、アーノイックはリトリシアと出会い、彼女を救い、自分も救われたんじゃ。何も、お主のせいではない。ジャストラムはアレス師匠を亡くした直後のあいつしか知らんのじゃから無理もないが、晩年は割と、落ち着いておったぞ? アーノイックはリトリシアという娘を得て、満足しておった」


「……私が、本当の子供を産んであげられたら良かった」


「い、いや、それは……どうなんじゃろうな、ははは……」


 ジャストラムのその発言に、俺は思わず赤くなり、視線を逸らす。


 すると、視線を向けた渡り廊下に……こちらを強烈な殺気で睨み付けている、森妖精族(エルフ)の少女の姿があった。


 俺はその光景を見て、思わず汗をダラダラと流してしまう。


 三弟子もその気配に気付き、緊張した面持ちで、リトリシアに対して戦闘態勢を取っていた。


「……子供を産んであげられたら良かった? 何をふざけたことをっ……!!」


 リトリシアは眉間に皺を寄せ、ジャストラムの元へと向かおうとする。


 だが、ジャストラムが涙を拭っている姿を確認すると、彼女は足を止めて、怒気を収めた。


 そして、何か言おうと何度か口を開きかけるが、怒りを飲み込み、その場を去って行った。


 ……こっっっっっっわ。何、あの子、怖すぎない? 今の本気の殺気だったぞ?


 あんなに怖かったっけ? 俺の中にある愛娘のイメージは、冷静沈着合理主義、お肉バク食い少女のイメージしかなかったのだけれど……。


「やれやれだわい」


 ハインラインも、リトリシアの気配には気付いていたのか、彼女が去って行った廊下を見つめてため息を吐く。


 ジャストラムも涙を拭い、口を開いた。


「……彼女には、何故か、嫌われてばかり。私はアーノイックの娘であるあの子を、母親代わりとして、見守りたいだけなのに」


「その考え方をしている以上、お主は一生、あの狂信者とは仲良くなれんよ……」


「? どういう意味?」


 鋭い奴なのに、そこは分かっていなかったのか……。


 俺は首を傾げるジャストラムの姿を見て、ため息を吐いた。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



《グレイレウス 視点》



「先ほど【剣聖】が見せた殺気……凄まじいものだったな……」


 オレは廊下を歩きながら、そう、独り言を溢す。


 【剣聖】がいったい何に対して怒りを見せたのかは分からないが、あの森妖精族(エルフ)は先ほど、尋常でない闘気を見せていた。


 剛剣型と速剣型の才を持つ、歴代最強の剣聖が唯一残した弟子、か。


 フン。確かにまだまだオレたちが届くような存在ではないようだが、怖気づくわけにはいくまい。


 歴代最強の剣聖の弟子? 知ったことか。オレたちはアネット・イークウェスの弟子なのだ。【覇王剣】よりも【箒剣】のうちの師匠(せんせい)の方がすごいに決まっている。師匠(せんせい)は、全ての剣士の技を使えるのだ。あの方のほうがすごい。


「フ……フハハハハハハハハハ! そうだ。師匠(せんせい)なら、アーノイックもリトリシアも、敵ではない。あの方こそ世界最強の――――――ん?」


「わわっ!」


 その時。曲がり角で小柄な少女がオレにぶつかり、床に書類をぶちまけた。


 彼女は床に座り込みながら、「いたたた」と言って、後頭部を摩った。


「フン。何をよそ見している」


「え? あ、す、すみません、すみません! 私みたいな人間に触れちゃって、気分を害しましたよね……死んでお詫びします」


 少女は、床に落ちているハサミを拾い上げると、それを首元へと差し向ける。


 首にハサミの切っ先が当たり、血がにじみ始めているのを確認したオレは、即座に手を動かし、彼女の手首を掴んだ。


「お前……何をしている。今、本気で刺す気だったな?」


「あ、ご、ごめんなさい。私なんかが目の前で死んでも、ご迷惑でしたよね。私の血で貴方のお洋服を汚したら、さらに迷惑をおかけしてしまいますよね……本当にごめんなさい」


「チッ。面倒な奴だ。気にしなくて良い。オレはそこまで怒っていない。むしろ先ほどのは、オレにも非があった。お前だけが攻められる謂われはない」


「……お優しい、のですね……」


「優しくなどはない。むしろ……オレはお前を敵対視している。剣王クローディア」


 オレが手首を離すと、クローディアはオレに視線を合わせることはせず、おどおどとした様子を見せる。


「す、すみません……こんな私が剣王で、すみません……」


「【断罪剣】のクローディアは、剣王三番手の実力者とされているが、実際は剣王最強のキリシュタットと同等の実力があるとも噂されている。しかし、戦闘において不利になるある事情があって三番手を担っていると聞いた。かなりの実力者で、戦闘狂だという噂も聞いていたのだが……今のお前とはかけ離れた姿だな。噂は所詮、噂ということか」


「それは……多分、私であって、私のことじゃないですから……」


「私であって私じゃない? 噂を否定するのなら分かるが、私じゃない、とは……」


「それは……」


 クローディアは、チラリと、窓の外に映る日が昇る前の青みがかった空に視線を向ける。


 そして、小声で「……私が私であるうちに、彼には話しておいた方が良いのかな」と、口にした。


 顔を上げると、クローディアはおどおどとした様子で、声を掛けてくる。


「あ、あの。お外でお話をさせていただいても、よろしいでしょうか? 私……貴方の復讐相手とは、関わりがあるんです……」


「復讐相手……まさか、首狩りか!?」


「は、はい。ここだとあれですから、玄関前で……」


 そう言って、クローディアは書類をまとめて鞄に仕舞うと、そのまま歩いて行った。


 オレはそんな彼女の背中を睨み付けながら、ついていった。





「それで……首狩りとお前は、どういう関係なんだ? まさか、姉妹などとは言うまいな?」


 玄関先にある木の傍で、オレはそう、クローディアに問いを投げる。


 オレのその言葉に、クローディアは首を横に振った。


「姉妹ではありません。私とあの方に、血のつながりはありませんから」


「知り合いであるということは否定しないのか」


「はい。私は……あの方の……弟子です。正確には、もうひとりの私が、ですが……」


「何だと!?」


 オレは思わず、クローディアに詰め寄ってしまう。


 オレの怒りに満ちた顔を見たクローディアは、怯えた様子で俯いた。


「ご、ごめんなさい。もうひとりの私が、殺人鬼の弟子なんかになってしまって……ごめんなさい」


「どういうことか、順を追って説明しろ!! もうひとりの私とはいったい、何なんだ!!」


「私は……元は、『奈落の掃き溜め』出身の孤児でした。私が住んでいた北区画は、他の地域に比べて、凄惨な場所で……街のあらゆるところに、人の腕や足が落ちていました。そんなところに落とされてしまった私は、幼く弱い自分を守るために、別人格を誕生させたんです。凄惨な環境でも対応して生きていける、強くて、血が好きな、もうひとりの人格を」


「二重人格……というやつか?」


 コクリと頷くクローディア。


 そして彼女は、鞄から、ひとつの紙袋を取り出した。


 それは、最初に彼女が被っていたものと同じものだった。


「奈落の掃き溜めで『狩り』が行われるのは、日中でした。なので私は、日の光を浴びると、『狩り』が始まると錯覚して人格が切り替わってしまうんです。主人格である私は、今まで、自分が自分であるために、常に光を浴びないように顔を隠してきました。朝や昼間でないと認識すれば、私は私のままでいることができましたので」


「……なんとなく、話が見えてきたぞ。日中のお前……もう一人のお前が、首狩りのキフォステンマの弟子になったのだな?」


「はい。キフォステンマとクローディアは、人を殺す、ということにおいては、共通の趣味を持った同志でした。意気投合したのでしょう。【剣神】時代のキフォステンマは、幼いクローディアを弟子にして、あらゆることを教えました。人間の解体方法、人間の死体の隠し方、そして……人を殺す剣を」


「……!!」


 その話を聞いて、オレは、今すぐにでもクローディアに剣を向けそうになってしまった。


 こいつがキフォステンマの弟子ではないことは分かっている。


 だが……首狩りの同志だという言葉に、オレは、怒りがこみあげてきてしまった。


 腰の剣に手を当てて怒りを耐えるオレを見て、クローディアは、申し訳なさそうな表情を浮かべる。


「ご、ごめんなさい……私、貴方が首狩りの被害者であること、知ってました……。私、二重人格ですから……たまに意識が戻ると、目の前に死体があったりするんです。そして、いつの日だったか……キフォステンマの部屋で目が覚めたことがありました。そこには、大量の瓶が棚に飾られていました。人の生首をホルマリン漬けにした、瓶の棚が。そこにあった被害者の名前を、覚えてて……」


「オレの姉の首を見たということか。だから、オレの姓を……アレクサンドロスの名を聞いて、被害者であることが分かったと」


「はい……」


 オレはチッと舌打ちを打つと、クローディアの肩を掴んだ。


「その部屋は、どこにある! オレは、姉の首を取り戻したいのだ!!!!」


「わ、分かりません!! 何年も前のことでしたし!! それに、もう、私は、キフォステンマと関わりがありませんから!! 私はただ、力を買われて異端審問官として聖騎士団に雇われた、シスターで……うっ!!」


 突如、クローディアが胸に手を当て、苦しみだす。


 オレはそんな彼女から手を離すと、声を掛けた。


「どうした?」


「あ、ご、ごめんなさい。紙袋を被るの忘れていたから……時間、みたいです……」


「時間……? ッ!? ま、まさか……!!」


「グレイレウスさん。これは、忠告です。気を付けてください。もし、もう一人の私から、何らかの情報を聞き出すために、剣を向けられた場合……ただでは済みません。日中の私は……まさに、怪物です。私は、こんな私に優しくしてくれた貴方を、傷つけたくない……だか、ら……ッ!!!!」


 クローディアの身体が、ビクビクと痙攣する。


 そして、彼女は、充電が切れたように顔を俯かせた。


 空には……朝陽が浮かんでいた。


「クローディア……?」


 オレがそう、声を掛けた……次の瞬間。


 オレの目の前に、巨大なノコギリのような刀が、振り降ろされた。


 オレはその剣を寸前で回避し、後ろへと下がる。


「…………ヒィィィィィハァァァァァァァァ!!!! よく避けたなァ、不能野郎!! せっかくのお目覚めだァ、朝陽と共にたっぷりと血を浴びたいところだったが……まぁ、良い!! ご機嫌だからなァ!! 許してやるよ!!!! 童貞坊や!!!!」


「……お前が……首狩りの弟子……【断罪剣】クローディア、か」


 オレがそう声を掛けると、クローディアは顔を上げ、ノコギリのような刀を肩に載せ、もう片方の手で中指を立ててきた。


「ファァァァァァック!!!! そうさ!! あたしこそが、【剣王】の一人、クローディア・アイゼンスターDeath!!!! 表のおどおどした女なんかは、本当のあたしじゃない!! このあたしこそが、本当のあたしってわけさ!!!! 求めるものは、化け物とのド突きあい!! あたしをイカせてくれる強者とのズッコンバッコンのド突きあい!!!! お前みたいなあそこも剣も小さそうな男は、お呼びじゃないのよーん。べろべろばぁ!!!!」


「本当に……先ほどのクローディアとは別人のようだな。ク……クククク。面白くなってきた。さっきのクローディア相手では、オレの怒りをぶつけることはできなかったが、今のお前なら……容赦なく叩き伏せることができそうだ」


「あぁん? だから、お前みたいな闘気を一切感じない雑魚とは戦わないって言ってんだよォ。お前じゃ、あたしをイカせることはできないよ、不能野郎」


「お前は、闘気の有無で強者かそうでないかを判断しているのか?」


「そりゃそうだろ!! 本当の強者っていうのは、いくつもの型を極めるのが常ってもんだ!! だけどお前からは、速剣型の匂いしか感じない。そんな奴に、あたしは反応なんかしねーんだよ!! あばばばばばばば!!!!」


「フン。首を洗って待っておけ、クローディア。オレは貴様を、剣王の座から引きずり降ろす。いや……オレたち箒星の門下生が、お前たち剣王トップ3を、地へと引きずり降ろす」


「あぁ?」


 そう言い残して、オレは踵を返し、詰所へと戻って行った。


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― 新着の感想 ―
どうも、秋告ウサギです ヒロイン達がアネットといる時がスゴい映える★ ジャストラム様も可愛い過ぎる
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