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第9章 二学期 第270話 王宮晩餐会編―⑥ 王宮晩餐会、当日


「ここが、ロザレナとアネットくんの住む、学生寮、満月亭か」


 エルジオとその妻ナレッサ、そしてマグレットは、満月亭の前へと辿り着く。


 するとちょうど、満月亭の玄関に立つ、二人の人物の姿があった。


 そこに居たのは―――フランシア伯のルーベンスと、息子のセイアッドだった。


 ルーベンスはエルジオの姿を見つけると、ハンと鼻を鳴らし、彼へと声を掛ける。


「おやおや、没落貴族一族ご一行様が、王都に何用かね? エルジオ」


「フランシア伯……」


「私は明日行われる王宮晩餐会に向けて、娘のルナティエを食事に誘おうと、ここまで来たのだ。それだというのに、お前の顔をここで見ることになるとはな。不愉快甚だしい。即効、私の前から消え失せたまえ、エルジオ」


 フランシア伯の発言に、セイアッドは慌てて声を掛ける。


「お、お父様! 以前マリーランドで、ルナティエと約束したではありませんか! レティキュラータス伯に、今後は強く当たるなと! いつまでもいじけているなと!」


「う、うるさい! 私はマリーランドを救うために尽力してくれたレティキュラータスの娘、ロザレナのことは認めているが、エルジオのことは認めてはおらん! 奴は、私との約束を破り、戦いから逃げた負け犬だ!」


「い、いつまで言っているのですか……! レティキュラータスとフランシアは、今後、手を取り合って生きていくべきです! バルトシュタイン家のゴーヴェンもオフィアーヌ家のアンリエッタもきな臭い話をよく耳にします! だったら、フランシアが手を結ぶ相手は、ひとつしかないじゃないですか!」


「だ、黙れ、セイアッド! わ、私は、だな!!」


 息子と言い争うフランシア伯。そんな二人の前に、エルジオは近寄って行った。


「フランシア伯が、レティキュラータスという家名ではなく、私個人を嫌っていることは勿論理解しております。貴方は、元々、家の格だけで人を馬鹿にする人間ではない。ルーベンス・エリオット・フランシアという人間が、誰よりも高潔な魂を持っている騎士だということは、自分も理解しておりますから」


「急になんだ、エルジオ! おべっかを使いおって!! 誰に何と言われようとも、私は、お前が嫌いだ!! 四大騎士公の面汚し、それがレティキュラータス家であることは間違いない!!」


 睨み合うエルジオとルーベンス。


 そんな二人を他所に、満月亭の扉が開き、オリヴィアが顔を出した。


「はいはい~? お客さんですか~? って、あれ? どなたでしょう?」


 オリヴィアの姿を視界に捉えると、ルーベンスは微笑を浮かべ、彼女に声を掛ける。


「急に押しかけてすまない。君は、ここの学生で間違いないな?」


「ええ、そうですが……?」


「私はルーベンス・エリオット・フランシア。ルナティエの父だ。我が愛しの娘ルナティエに会いに来たのだが、娘はここにいるのかね?」


「あ、ルナティエちゃんのお父様ですか~。ルナティエちゃんは今の時間、多分ロザレナちゃんと一緒に裏山の稽古場で剣の修行をしていると思いますよ~?」


「そうか。ありがとう。では、稽古場に向かうとしよう」


 ルーベンスはオリヴィアに会釈すると、そのまま、裏山へ向かって歩き出す。


 それと同時に、今度はエルジオがオリヴィアに声を掛ける。


「申し訳ございません。私はロザレナの父なのですが……今、ロザレナが、稽古場にいると仰いましたか?」


「あ、はい。今度は、ロザレナちゃんのお父様……とっても優しそうな方ですね。でも、あんまりロザレナちゃんには似ていないかも?」


「あの?」


「……あ、すみません! 先程も言った通り、ロザレナちゃんは今、ルナティエちゃんと剣の稽古をしていると思いますよ!」


「ありがとう。だったら、メイドのアネットくんも一緒にいるのかな。じゃあ、そこに行って来ます」


「あ……」


 オリヴィアは何か言おうとしたが、その前にエルジオは踵を返し、フランシア伯と共に裏山へと向かって歩き出した。


「何故、私についてくるのだ、エルジオ!!」


「残念だけど、向かう先は一緒のようだよ、ルーベンスくん」


「何処か別の場所に行け!! お前の顔が近くにあるだけで、虫唾が走るわ!!」


 言い合いをしながら、裏山へと向かって行く二人。


 そんな二人の後ろを、エルジオの妻ナレッサとマグレット、セイアッドはついて行く。


 セイアッドは父の言動をナレッサとマグレットに謝罪をしていたが、二人は気に留めている様子は特に無かった。


 喧嘩をしながら裏山を登るエルジオとルーベンスの後ろ姿を見て、オリヴィアはフフッと笑みを溢す。


「やっぱり、親子なんですね。ロザレナちゃんとルナティエちゃんにとってもそっくりです」




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 裏山の稽古場。


 そこでロザレナとルナティエはお互いに剣を持ち、模擬戦を行っていた。


「たぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッッ!!!!」


 ロザレナは大剣を上段に構え、ルナティエへと全力で振り降ろす。


「【覇剣】!!!!」


 ルナティエは地面をつま先で二度叩き、姿を掻き消す。


 その瞬間、地面が爆発し、周囲に土煙が舞った。


「【水流・裂風烈波斬】!!!!」


 ロザレナの背後から、水の斬撃が放たれる。


 ロザレナは初撃を背中に受けてしまうが、瞬時に闘気を纏ったため、無傷。


 彼女は振り返ると、大剣を振り、連続で放たれる水の斬撃を全て剣で叩き落とし、防いでいった。


 通算、20回の斬撃を捌き終えた後、土煙が開けたロザレナの目の前に―――ルナティエの姿はなかった。


 ロザレナは咄嗟に腕に闘気を纏い、背後を振り返る。


 するとロザレナの腕に、闘気を纏った回し蹴りが放たれた。


 ルナティエとロザレナはお互いにニヤリと笑みを浮かべた後、距離を取り、同時に剣を構える。


 その光景を見ていた、エルジオとルーベンスは……思わず、驚きの声を上げてしまった。


「なっ……!?」

「何だんだ、あれは……!?」


 二人は目を丸くして、ロザレナとルナティエを見つめる。


 何故なら、ロザレナとルナティエの戦いは、誰がどう見ても学生レベルのものではなく―――称号持ちと同等の、ハイレベルのものだったからだ。


 下手をしたら既に、エルジオとルーベンスよりも、剣の腕は二人の方が上だった。


「こんの……! 速度が上がったせいで前よりもいっそう、やりにくくなったわね、ルナティエ!!」


「わたくしは貴方と違って、純粋な剣士ではありませんからね。わたくしが取る戦法は、ただひとつ! それは―――相手が嫌がることを、しつこくすることだけですわー!!」


「性格と同様、戦い方も陰湿なのよ、あんたはー!!!!」 

 

「逆に貴方は性格と同様に、戦い方が単純馬鹿すぎるのですわ、ロザレナさん!!!!」


「誰が馬鹿よ! ドリル女! ―――って、あれ?」


 ロザレナはそこで、自分の父と母が稽古場に来ていることに気付く。


「あれ? 何で、お父様とお母様がここに―――もがっ!?」


「隙あり、ですわ! オーホッホッホッホッホッホッホッ! 一撃を与えた方が、今夜の夕食当番をするんでしたっけ? 貴方の負けですわ、ロザレナさん~?」


 ルナティエに殴られたロザレナは、憤怒の表情を浮かべて、ルナティエの胸倉を掴む。


「何すんのよ!! 今のはノーカンでしょ!!」


「隙を見せた貴方が悪いのですわ~! 負け犬の遠吠えは恥ずかしいですわよ~!」


「あーもう、ルナティエ! あそこを見なさい!!」


「あそこ……? って、え? お父様とお兄様!?」


 ルナティエは慌てて服装を正し、恥ずかしそうに頬を染める。


「は、恥ずかしいところを見られましたわね。まさか、お父様とお兄様がいらしているだなんて……わたくし、何処も変ではないでしょうか?」


「きもちわる。どんだけファザコンブラコンなのよ、あんた」


「う、うるさいですわね!! わたくしは、お父様とお兄様の前では、フランシアの息女として常に貴族として相応しい振る舞いをしなければなりませんのよ!! わたくしのせいでお父様とお兄様が侮られたとあっては、わたくし、生きていけませんもの!!」


 喧嘩をするロザレナとルナティエ。


 そんな二人に笑みを浮かべると、ルーベンスはルナティエに声を掛ける。


「いや……お前は既に、私やセイアッドなど超えているぞ、ルナティエよ」


「? お父様?」


「私はお前をずっと天才だと思っていたが……まさか、学生レベルをとうに越えていたとは思わなかった。しかも、お前は先程、剛剣、速剣、魔法剣の技を自在に使っていた。正直、驚いている。フランシアの家系は、信仰系魔法を得意とする魔法剣士が産まれるのが当たり前だったからな。それなのに、ルナティエ、お前はオールラウンダーときた。オールラウンダーは、滅多にいるものではない。お前は……私などを超える、真の天才だったのだな、ルナティエ」


「お父様……」


 ルナティエは、複雑そうな表情を浮かべる。


 彼女は、自分が父親よりも才能があるとは、思っていないからだ。

 

 そんな二人の親子を一瞥すると、今度はエルジオが、ロザレナに声を掛ける。


「ロザレナ。お父さんは剣士としては、あまり腕が立つ方とは言えないが……これだけは分かる。お前が、レティキュラータス家でも類まれなほどの、剣の腕を持っているということはね」


「お父様!」


「ロザレナ。今も本気で……【剣聖】を目指しているのかい?」


「はい。あたしは、必ず【剣聖】になります。何年かかってでも」


「そうか。幼い頃、君は病室で、剣聖アーノイック・ブルシュトロームの伝記を一生懸命に読んでいた。その時から君は一切の曇りなく、夢に向かって進んでいるんだね。本気で……【剣聖】を目指し続けているんだね」


「あの頃のあたしは、御家復興のために【剣聖】を目指していました。ですが、今は違います。あたしは、どうしても勝ちたい人がいる。その人がどれだけすごいのか、世界に知らしめたい。だから、【剣聖】を目指しているんです」


「そうか……ロザレナは誰かのためではなく、自分のために夢を追いかけているんだね。それで良い。お父さんは君の夢を応援するよ」


 そう言ってエルジオはロザレナの頭を優しく撫でた。


 その時、マグレットがロザレナの元へと近寄り、声を掛けた。


「ご歓談中、申し訳ございません、旦那様、お嬢様。あの、ロザレナお嬢様。アネットはどこにいるのでしょう? 姿が見えないようですが……」


「マグレットさん!? ア、アネットは……」


 ロザレナは俯き、沈痛そうな様子を見せる。


 ルナティエはそんなロザレナの様子を見てため息を吐くと、マグレットの元へと近付いて行った。


「確か、貴方は……アネットさんの祖母、でしたわね?」


「あ、はい。何でしょう、フランシア家のご令嬢様」


「あまり、驚かずに聞いてくださいまし。アネットさんは……例の災厄級の魔物が王都を襲って以来、学生寮に帰ってはいないのです。彼女は現在、行方不明となっていますわ」


「ちょ……ちょっと、ルナティエ!? 何もそんな直球で言わなくたって!!」


「こういうのは、はっきりと言わないと駄目ですわ。ですが、ご安心ください。わたくしたちは、彼女はきっと無事だと信じていて―――」


 その時。マグレットはフラリと足をよろめかせ、倒れかかった。


「マグレットさん!?」


 エルジオは慌ててマグレットを抱き留める。


 気絶しているマグレットを見て、ロザレナはルナティエに向けて声を張り上げる。


「ほら、見なさい! マグレットさんは、アネットのことをとっっっても大事にしているんだから!! たった一人の孫娘が行方不明だなんて知ったら、こうなるのも当然でしょう!?」


「わ、わたくし、そんなつもりじゃ……!」


 ロザレナに詰め寄られ、おろおろとするルナティエ。


 ルーベンスはエルジオの元へと向かうと、マグレットの肩を押さえ、口を開く。


「……手を貸そう。学生寮まで運べば良いのだな?」


「フランシア伯……!」


「勘違いするなよ。私は、目の前で倒れたその婦人を放っておけなかっただけだ。民を守る一人の貴族として、な」


 そうして、裏山を降りて行く、エルジオとルーベンス。


 残った皆もそれに続いて、満月亭に戻るべく、下山して行った。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 満月亭のリビングにあるソファーにマグレットを寝かせた後。


 エルジオは、ロザレナに顔を向け、開口する。


「ロザレナ。アネットくんは、一週間以上、行方が分からなくなっているんだね?」


「はい……」


「そうか……。この後、聖騎士団の詰所に行って、捜索願を出して来るよ。とはいっても、聖騎士団もあの騒動の後で、動いてくれるかは怪しいだろうけどね」


 エルジオふぅと息を吐くと、ロザレナの肩をポンと叩いた。


「こんな時に言うべきことではないかもしれないが、お父さんたちは明日の王宮晩餐会に参加するために王都へと来たんだ。一応、聞いておく。ロザレナ、君も一緒に晩餐会に参加する気はあるかい?」


「あたしが……王宮晩餐会に……?」


「あぁ。お父さんは、レティキュラータス家の次期当主として、ロザレナには色々なことを経験して欲しいと思っている。毎年10月の収穫祭に行われる王宮晩餐会は、貴族としてコネクションを作る大事な場なんだ。王国の貴族であるなら、絶対に参加しなければならない行事と言っても良い。参加しないと、他の貴族たちの派閥から孤立する可能性があるからね。もっとも、レティキュラータス家はずっと、孤立している状態ではあるんだが……」


「……」


「やはり、アネットくんのことが心配かい? 今回は、やめておこうか?」


「はい。でも……今、もしアネットがいたら……あたしに王宮晩餐会に行ってこいと、そう言うと思うんです。【剣聖】になるのだったら、そういった場所にも慣れておけと」


「確かに、その通りだね。王宮晩餐会には毎年、【剣聖】様も参加なされる行事だから、ロザレナが当主になるにしろ、【剣聖】になるにしろ、将来こういった行事に参加することは避けられないだろうね」


「だったら……行きます」


 ロザレナのその発言に、ルナティエは肩を竦め、口を開く。


「意外ですわね。貴方のことだから、そういった催しに行く時間があったら、剣の修行をすると言いそうなものだと思っていましたけれど」


「あんたがあたしに言ったんでしょう? もしアネットがここにいたら、時間を無駄にしているあたしを怒るはずだって。あんたとグレイレウスの言う通り……あたしはもう、ふさぎ込むことはやめたわ。アネットが必ず帰って来ると、信じることにしたから」


「そうですの」


 ルナティエはニコリと微笑みを浮かべ、隣に立つルーベンスに声を掛ける。


「お父様。わたくしも勿論、王宮晩餐会に参加しますわ」


「おぉ、そうか! だったら今からドレスを買いに行かねばならないな!」


「王宮晩餐会に参加できるのは、王族、四大騎士公、貴族、剣聖のみ。ですから……オリヴィア! そこで覗き見している貴方も、わたくしたちについて晩餐会に出席しなさい!」


「わわわっ! は、はいっ!」


 オリヴィアは扉の影から出てくると、ぴしっと直立不動する。


 そんなオリヴィアに、ルナティエはニコリと微笑む。


「貴方、わたくしに、どうやったら当主になれるのかーとか、前に聞いてきましたわよね? だったら次期バルトシュタイン家当主として、貴方も今回の王宮晩餐会に参加なさい。良いですわね?」


「バ……バルトシュタイン家次期当主だと!? まさか、そこの者は、ゴーヴェンの娘……!?」

「バルトシュタイン家の、娘さん……!?」


 ルーベンスとエルジオは、同時に驚きの声を上げる。


 オリヴィアは動揺した様子でペコペコと何度も頭を下げるが、ルナティエは気にした素振りは見せず、高笑いを上げる。


「オーホッホッホッホッ!! ここに、四大騎士公次期当主候補が、3人も揃っていますわ!! わたくしたち3人で、この王国を変えてやりますわよー!! オーホッホッホッホッ!!」



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



《アネット 視点》




 ―――――――――翌日。王宮晩餐会、当日。


 俺は、謎の騒々しさに意識を覚醒させ、ベッドから起き上がり目を擦る。


「ソフィー!! あ、ああああ、貴方!! なんてハレンチなものを持っているのですか!! これは全て没収です!!!!」


「うるさいなー。エリーも興味あるくせに」


「な、ななななな、何を言ってるんですかっ!! 私はこの世の中でハレンチなものが一番、嫌いなんですっ!! 私の姉なら、こんなものを持ち歩かないでください!!」


「……いったい、朝から何を騒いでいるんだ、この双子メイドは……」


 俺は起き上がり、二人に声を掛ける。


 すると、同じ顔をした双子のメイドはビクリと肩を震わせ、振り返った。


「あ、も、申し訳ございません、アネット様! ソフィーリアお姉さまが、こっそりとアネット様のお部屋に入って行くのが見えたので、何をするつもりなのかと問い詰めていたら……何とこの姉、アネット様の隣で添い寝をすると言ったんです! ハレンチですっ!」


「いや、それは全然ハレンチじゃないでしょー。エリーってば添い寝で、いったいどんな妄想してるのー? まったく、コルルは妹が妄想癖の変態で困ります」


「誰が変態ですか!! 誰がーっ!!」


 まぁ、コルルシュカと添い寝するのはある意味貞操の危機があるので、あながち間違いではないかもしれないが。


「そ、それだけじゃないのです!! 聞いてください、アネット様!! この姉、大量のえっちなイラストの本をメイド服に隠し持っていたんですっ!! 全身ハレンチ人間ですっ!! これはもう、私が姉を矯正させるしかありませんっ!!」


「失礼な。コルルにとって主人責めメイド受けの百合本はお宝なのですよ。あと、ハードなプレイであるほどコルルは喜びます。コルルぅ、責められるのが好きなドMなのでぇ。覚えておいてくださいねぇ、アネット様。コルルはいつでもOKです♡ ちらり」


「……何を言ってるんだ、お前は……あと、スカート捲ってパンツを見せるのはやめろ……」


「んあああああーーーっ!! 何で姉がこんなにハレンチにぃぃぃ!! 昔はこんな子じゃなかったのにぃぃぃぃ!! もっと大人しくて清純な子だったのにぃぃぃ!!」


「と言いつつも、エリーもえっちなことに興味あるくせに。ほれほれ~」


「ぎゃぁあっ! 本を開いて見せないでください!! ソフィーリア姉さま!!」


 部屋の中でグルグルと回る双子メイド。


 まぁ……二人の間にあった蟠りが無くなって良かったが……大事な計画の実行日の朝くらい、静かに寝かせて欲しかったな……。


 はぁと大きくため息を吐き、俺は、窓の外へと視線を向ける。


「ついに、作戦決行当日、か」


 十月五日。ついに、王宮晩餐会が始まろうとしていた。


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