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剣聖メイド エイプリルフール回 桃から産まれたミレ太郎

本編とは関係のない、エイプリルフールのネタ回です。

キャラ崩壊などがあるので注意です。


 昔々、あるところに、おじいさんとおばあさんがいました。


 おじいさんは山に芝刈りに、おばあさんは川に洗濯に行きました。

 

 おばあさんが川で洗濯をしていると、川から大きな桃が流れてきました。


 大きな桃を家に持ち帰ったおばあさんは、おじいさんと一緒にその桃を食べるために、ナタですぱーんと割ってやりました。


 すると、桃の中にいた赤ちゃんは「ぴぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!! ミレーナを真っ二つにして殺す気ですかぁ! あと数センチで腕が斬れてましたよぉぉぉぉ!!」と叫びました。


 桃から産まれたその不気味な子を、老夫婦は、ミレ太郎と名ずけました。


 ミレ太郎はこう言いました。


「勝手にうちを拾って育てたんだから、養ってくださいです。捨てるなんて駄目ですよぉう。こういうのは、最初に家に招き入れた貴方たちに親権があるんですぅ。うちに美味いご飯たくさんたべさせろですぅ」

 

 こうして忌み子、ミレ太郎は、無理やり老夫婦に寄生して生きることとなりました。




 むかしばなし 桃から産まれたクズ太郎……ミレ太郎のはじまり。はじまり。




 ―――十六年後。


 ミレ太郎はすくすくと育ち、家でニート生活を謳歌していました。


 しかし、おじいさんもおばあんも良い歳。


 このままでは老後の資金を全てミレ太郎に搾取されて、生計が立ち行かなくなります。


 そこでおじいさんは、一計を立てました。


 それは、ミレ太郎が寝ている夜中の内に簀巻きにして、鬼ヶ島行きの馬車に乗せてしまおうというもの。


 昨今、若い村人は、鬼退治のために鬼ヶ島行きの馬車に乗って、二度と村には戻っては来ません。


 これを利用すれば、おじいさんとおばあさんは、ミレ太郎を始末できると考えました。


「ミレ太郎……覚悟っ!」


 おじいさんの計画は成功し、ミレ太郎は鬼ヶ島行きの馬車へと乗せられ、半ば無理やり、鬼退治の旅に出発してしまったのでした。



「くそっ……あのジジイとババア……うちを簀巻きにして鬼ヶ島行きの馬車に乗せるとか、信じられない鬼畜ですぅ。鬼退治なんてやってられるかですぅ」


 ミレーナはそう言って、何とか簀巻きから逃げ出し、走行中の荷馬車から飛び降りました。


 その途中、怪しい尼さんに出会います。


「こんにちわぁ。わたくし、旅の尼のリューヌと申す者なんですけどぉ、こちらの『きびだんご』という商品、買ってみませんかぁ?」


「何だか胡散臭い尼ですねぇ。そんなわけのわからない団子にうちのお小遣いを払えるわけないです。うちはこれから帰ってパチスロに行くんです」


「まぁまぁ、そう言わずに。こちらのきびだんご、食べたら何と、誰でも貴方に付き従いたくなる特別な代物なんです。見たところ貴方は、鬼ヶ島行きの馬車に乗っていたご様子……どうですか? こちらのきびだんごを使って人間を操り、鬼を退治したくないですか?」


「むむむ。そんなすごい力が、この団子にあるんですか? だったら……その三個全部くださいですぅ! これは、うちのもんですぅ! これで金儲けしてやりますぅ!!」


「フフフ。毎度、どうも。フフフフ」


 ミレ太郎はリューヌという尼から人を支配できるという『きびだんご』を手に入れ、鬼ヶ島へと向かって歩き出しました。


「これで強い人を用心棒にして、鬼退治して、あのジジババを見返してやるですぅ。あとは……金持ちに食わして、お金稼ぎでもしますかねぇ。ぐふふふふ」


 ミレ太郎が邪なことを考えていた、その時。


 目の前に、犬の着ぐるみを着た少女が、姿を現しました。


「貴方! そのきびだんご、あたしにひとつよこしなさい!」


「え? 何ですか、この犬のコスプレした人!? 変態ですぅ!?」


「あたしは、ロザドッグよ!! あたしは【剣聖】になるのが夢なの!! でもお金がないから追いはぎしてご飯を食べているのよ!! ガルルルルルル!!」


「ただの山賊ですぅ!! あわわわわ……喰らえ、ですぅ!!」


 ミレ太郎はきびだんごをひとつ手に取ると、ロザドッグへと放り投げました。


 ロザドッグはそれをパクッと咥えると、むしゃむしゃと食べ、ゴクリと飲み込みました。


「ど、どうですかぁ!? うちの言うこと、聞くようになりましたかぁ!?」


「あたしは絶対に【剣聖】になるわ!!!!」


「さっきと言ってること変わらないですぅ!? だからその【剣聖】っていったい何なんですかぁ!?」


「仕方ないわね。このあたしがあんたと一緒に鬼を退治しに行ってあげるわ。光栄に思いなさい!」


「何かすっごく上から目線なんですけど、この人!? うぅ、これ、ちゃんときびだんごで支配できているんですかねぇ……?」


 ミレ太郎はロザドッグを仲間にして、道を進んで行きます。


 森の中へと入ると、今度は、首にマフラーを撒いた……猿の着ぐるみを着た青年に出会いました。


「……おい、そこの陰気女と犬女。何か食い物は無いか? ここ数日、何も食べていなくてな。腹が空いてしょうがない」


「ぴぎゃう!? 今度は、首にマフラーを撒いた、猿のコスプレした変態が出ましたぁ!?」


「誰が変態だ! ……フン、まぁ良い。お前が食い物を持っているのは匂いで分かる。さっさと出せ。このオレに斬り殺されたくは……ないだろう?」


 マフラー猿男は、腰の鞘から剣を二本取り出し、構えます。


 それに対してミレ太郎は怯えますが、ロザドッグは興奮した様子で、背中から大剣を取り出しました。


「戦いなら、敗けないわよ!! あたしは絶対に【剣聖】になるんだから!!」


「フン。面白い。オレを倒せるかどうか、試してや―――もごぉ!?」


 ミレ太郎はきびだんごを投げ、猿男の口に放り入れます。


 猿男はもごもごと咀嚼した後、ごくりときびだんごを飲み込みました。


「き、きびだんごで、支配、できましたか!?」


「……」


 猿男はきびだんごを飲み込んだ後、顔を上げると、盛大に笑い声を上げました。


「フ……フハハハハハハハハ! 美味い! 美味いぞ!! オレの脳内レシピに、新たな団子が記録された!! 面白い。良いだろう、ぴぎゃあ女! このオレ……グレイモンキーがお前の仲間になってやろう!!」


 こうして、ミレ太郎は、二人目の仲間……グレイモンキーを仲間にしたのでした。


 


 森を抜け、鬼ヶ島が見えてきた、峡谷に入ったところ。


 道の先に、キジのコスプレをした少女が現れました。


 少女は座り込み、弱った様子を見せ、ミレ太郎一行に声を掛けます。


「そこの旅の御方。わたくしは、ルナ……ルナキジ……いえ、キジティエでございますわ」


「ぷっ、キジティエって何よ……変な名前!」


 ロザドッグのその言葉に、キジティエは一瞬むっとした表情を浮かべるも、すぐに悲痛そうな表情に戻ります。


「あぁ、わたくし、ここ数日、水も飲んでいなければ、食べ物も何も食べておりませんの。何かお恵みをくださいませんか?」


「嫌ですぅ。さようならですぅ」


 キジティエを弱そうだと思ったミレ太郎は、きびだんごを使わず、そのまま素通りしようとします。


 そんなミレ太郎の手を掴み、キジティエは動揺した様子を見せました。


「ちょ!? 見捨てるとかそんなのありですの!? ……じゃなかった。よよよ、どうか、お助けを。そちらのお団子ひとつでも良いですから!」


「嫌ですぅ!! 貴方、うちと同じでゲスな匂いがするです。ゲス野郎にはゲスが分かるんです!!」


「誰がゲス野郎ですの!? 油断しているところをだまし討ちして身ぐるみ剥ごうと思っていましたが……もういいですわ!! 腹いせに、その大事そうに抱えている団子を奪って、食べてやりますわ!!」


「あ、ちょ、ちょっと!!」


 キジティエはミレ太郎の団子を無理矢理奪うと、ばくばくと食べていく。


「あぁ、そんなぁ! その最後の一個は、お金持ち用だったのにぃ!」


「もぐもぐ……ごくん。オーホッホッホッホッホッホッ!! 全部、食べてやりましたわぁ!! ざまぁみろですわぁ!!」


「あんたの髪型、変な髪型ね! ビョンビョンしていて、見ていると遊びたくなるわ! あたし、犬だから!!」


 ロザドッグはキジティエのドリル髪を引っ張ると、それで遊び始めます。


「ちょ、痛いですわ!? 何なんですの、この犬は!?」


「フン。騒がしい連中だ。おい、ぴぎゃあ女、いつまでも泣いてないで、さっさと鬼ヶ島に行くぞ。オレも暇じゃないからな」


「ぐすっ、これで金儲けするはずだったのにぃ……!」


「巷を騒がしている鬼を倒せば、金くらい入るだろう。さっさと行くぞ」


「はいですぅ」


「ちょ、いだだだだだ!! わ、わたくしも行きますわ!! 鬼退治、手伝いますから……この犬女を何とかしてくださいまし!! さっきからわたくしの髪の毛を引っ張って遊んでいましてよぉ!! 何なんですの、こいつぅ!!」


「あたしは【剣聖】になる犬よ!!」


「聞いていませんわよ、そんなことぉぉぉ!!」


 こうして、ミレ太郎は最後のきびだんごを使い、キジティエを仲間にしたのでした。


 ロザドッグ、グレイモンキー、キジティエの三匹をお供にしたミレ太郎は、ついに、凍てついた島……鬼ヶ島へと向かうこととなります。


 そして、渡り船を使い、鬼ヶ島へと辿り着くミレ太郎一行。


 島の最上部にある山の上で、一人と三匹は、鬼と対峙します。


「……ククク。よくぞここまで来た、ミレ太郎とその仲間たちよ。我が名は、ヴィンセント・オーガ。この鬼ヶ島を支配する鬼の王だ」


 骨で作られた玉座に座っていたのは……この世のものとは思えない恐ろしい顔をした、鬼でした。


 その姿を見て、ミレ太郎は発狂します。


「ぴぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! 出ましたぁぁぁぁぁぁ!! 化け物ぉぉぉぉぉぉ!!」


「ば、化け物……そんなに俺の顔は恐ろしいか? なぁ、我が妹、オリヴィア・オーガよ」


 横に立つ鬼の少女にそう問いを投げますが、オリヴィア・オーガはそっぽを向き、無視を決め込みました。


 その妹の冷たい様子に、ヴィンセント・オーガは、絶望した表情を見せます。


「い、妹よ……何故そんなに怒っているのか分からないが、せめて、兄と会話くらいして欲しいものだ……」


「……」


「む、無視はやめて欲しい……傷付くから……」


「何か、あいつ、隙だらけじゃない? あたしが倒してやるわ!」


 そう言ってロザドッグは、剣を持って、突っ込みますが……その姿に気付いたヴィンセント・オーガは、腰の鞘から剣を抜きます。


 その瞬間。地面が全て、氷で覆われました。


 一面氷の世界となった山頂で、ヴィンセント・オーガは両手を広げ、笑い声を上げます。


「クハハハハハハハ! この私に敵う者はいない! 貴様らはここで、氷の彫刻となって死ぬのだ、ミレ太郎一行よ!」


「なら……オレの速度について来られるか?」


 グレイモンキーは姿を掻き消すと、ヴィンセント・オーガの背後に現れます。


 そして、双剣を振って、ヴィンセント・オーガの背中に斬撃を加えようとしますが……寸前で避けられ、氷の剣によって弾き飛ばされてしまいました。


 グレイモンキーは空中でクルクルと回転すると、ミレ太郎の前に着地し、冷や汗を流しました。


「どうする? あの鬼、相当な手練れだ。オレと犬女が真っ向から挑んでも、返り討ちに逢うだけだぞ?」


「でも、真っ向から戦うしか、方法は……」


 グレイモンキーとロザドッグのその会話に、キジティエはまったをかけます。


「何も、ただ無鉄砲に挑むだけが戦いではなくってよ。そうですわね。貴方がた二人が戦っている間に、わたくしが背後に回り……あそこにいるヴィンセント・オーガの妹、あの乳デカ鬼女を人質にするのは如何かしら? 見たところ、あの強面は妹には頭が上がらない様子。良い策ではなくって?」


「そうね。キジティエ、あんたの策に乗るわ」


「……それしかないようだな」


 ロザドッグ、グレイモンキー、キジティエは、協力してヴィンセント・オーガを倒すことに決めます。


 ミレ太郎は、そんな三人の背後にある草原に身を潜め、戦いを見守っていました。


「うぅぅぅ……うち、主人公のはずなのに……どうしてこんな、情けないことにぃ……」


「行くわよ、グレイモンキー、キジティエ!」


「フン。足を引っ張るなよ」


「当然ですわ。わたくしを誰だと思っているんですの? オーホッホッホッ!」


 こうして、ヴィンセント・オーガ対三匹のお供の戦いが、幕を開けて始まったのでた……!!










「――――――ぴぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!? な、なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!? ……ゼェゼェ……え、ゆ、夢ぇ……?」


 ミレーナはベッドから飛び上がると、キョロキョロと周囲を見回す。


 そこは多くの植木鉢と薬品の瓶が転がった見慣れた寮の自室であり、特に変化は何も見当たらなかった。


 額の汗を拭うと、ミレーナは疲れた様子で口を開く。


「ぶ、不気味な夢でしたぁ……。な、何か、知っている人たちがみんな動物や鬼になっていたようなぁ……ミレ太郎ってなんですかぁ……変な名前ぇ……」


 ふぅと短くため息を吐いた後、ミレーナはぐふふふふと笑みを溢す。


「それにしても、あの強面男、夢の中でオーガになっているとか、笑えましたねぇ。ぷくくくく」


 するとその時。部屋の扉をコンコンと叩き、外から声が聴こえてきた。


「ミレーナー? もう昼過ぎだよー? 日曜日はギルドに行くんじゃなかったのー?」


「あ、ご、ごめん、アンナちゃん!! 今行きますぅぅぅ!!!!!」


 そう言ってミレーナはベッドから飛び降りると、ドアを開けた。


 すると、そこには、見慣れたアンナの姿と……廊下の奥からやってくる、漆黒の鎧を着た偉丈夫の男の姿があった。


 暗闇の中赤く光るその瞳を見て、ミレーナはプルプルと身体を震わせる。


「ま、まさか……」


「ククク。ミレーナ・ウェンディ。今日は貴様に、偽りの王女としての礼節を叩き込んでやろう」


「で、でたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! ばけものぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


「え? え? 誰、この人!?」


「クククク。行くぞ、ミレーナ」


「ぴぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!!!」


 そう言って、ヴィンセントは脇にミレーナを抱えると、踵を返し、廊下を進んで行く。


 その光景を見て、アンナは、慌てて声を張り上げた。


「ちょ、貴方、ミレーナをどこに連れて行く気なの!?」


「ククク。貴様が知る必要はない」


「ア、アンナちゃん、だ、だずげてぇぇ!!」


「ひ、人攫いーっ!! ここに人攫いがいるわーっ!! 誰か、騎士を呼んでーっ!!」


 こうして、ヴィンセントは人攫いに間違えられ、ミレーナはヴィンセントによってバルトシュタイン家に連れて行かれ、貴族のマナーを叩き込まれるという……何とも言えない日曜日が、始まったのだった。

エイプリルフール回でした笑

いつか、ロザレナ、グレイレウス、ルナティエの3人で強者に挑むシーンも本編で書きたいです!

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― 新着の感想 ―
第一声がぴぎゃで笑いました( ◠‿◠ ) ミレーナは夢の中でも相変わらずですね笑 オリヴィアオーガのイラストが見たすぎます!!!
変な電波受信して夢を見て起きて、今度は変てこな拉致にあってて草
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