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幕間 物語の幕開け




「・・・・・・・・・・はぁ」



 少女は箒を掃きながら、苦悩のため息を溢す。


 この少女、今でこそはメイド服を着込んだ可愛らしい見た目をしているが、その実、生前は無敗を誇った世界最強の『剣聖』だったのである。


 名を、アーノイック・ブルシュトローム。


 生前の姿は、筋骨隆々の髭モジャ大男。年齢48歳。生涯独身。好きなもの、酒と博打。


 そんな無骨な男が、何故か死後、メイド少女へと転生してしまったのだ。


 それも、男であれば誰もが視線を奪われるであろう、見目麗しいメイドの少女へと。


 彼は自身に起こったこの出来事に理解が追い付かず、ただただ混乱しながら、15歳となる今の今まで、坦々とメイド業に従事せざるを得なかった。


 自身が元剣聖であることを、誰にも明かさずに。


「アネット!!」


 そんな、中庭で箒を掃く元おっさんのメイド少女の元に、豪奢なドレスを身にまとった少女が興奮した様子で駆け寄ってくる。


 彼女はメイドの少女の前に立つと、頬を染め、ニコニコと満面の笑みを浮かべた。


 「ね、ねぇ!! 昨日言ったことは嘘ではないわよねっっ!! あれ、夢じゃないわよねっっ!!」


 「お嬢様・・・・・」


 朝早く起床してきた主人に、メイド少女は箒を掃く手を止め、憂鬱そうに口を開く。


「・・・・はい、嘘でも夢でもございません。私は・・・・私は、お嬢様と共に聖騎士養成学校に入学をします・・・・・」


「そう!! そうよね!! フフッ!!」


 そう、青紫の髪を揺らしながら、嬉しそうに少女は笑う。


 そして彼女はー---ロザレナは、メイドの少女、アネットへと人差し指を向けると、口角を吊り上げた。


「では、もう一度、改めて宣言させてもらうわ。よく聞きなさい!!」


「は、はいっ!!」


「んんっ!! ・・・・アネット!! あたしと共に騎士養成学校に入学するわよ!! あたしは絶対に『剣聖』になってやるんだからっ!!!!」


 そう宣言をした彼女に対して、アネットは呆れたような口調で言葉を返した。


「お嬢様・・・・やっぱり私も、一緒に入学しなければならないのですか??」


「何よ、今更昨日言ったことを後悔しているの? もう前言撤回できないわよ。残念ながらねっ♪」


「今になって気付いたんです。5年前とは違い、今のレティキュラータス家には私以外のメイドもいるではありませんか・・・・それなのに・・・・私でなくてはいけない理由があるのですか・・・・?」


 その言葉に、ロザレナはクスリと微笑みを浮かべ、眼を細め、いたずらっぽく笑みを浮かべる。


「何言っているのよ。そんなの当たり前じゃない。コルルシュカじゃなく、あたしは貴方が良いの。貴方は・・・・5年前からずっと・・・・あたしの大事な付き人なのだから」


 彼女のその答えに、アネットは諦めた表情で・・・・でもどこか嬉しそうにはにかみながら、口を開いた。


「もう、そんなこと言われたら断れないじゃないですか、お嬢様」


「フフッ。どのみち貴方は断れないでしょ?? だって、あたしの身を常に案じてくれているアネットが、暗殺者だと疑っているコルルシュカとあたしを二人きりにするはずがないわ。ね?」


「まったく・・・・この五年で頭も良くなられましたね。もう、お嬢様を言葉だけで言い負かすのは無理そうです」


「あら、毒舌メイドの貴方にそう言われるのだったら、あたしもちょっとは成長できたのかしらね?? あはははははっ」


 新緑の木の葉が舞い、春風が二人の間を吹き抜ける。


 これから始まるこの物語は、剣士の頂点を目指す没落寸前の貴族令嬢と、その付き人である元剣聖のメイドが、剣を手に、お家復興をするべく奮闘する物語。


 元剣聖の最強のメイドが今世は平穏な暮らしを送るために、実力を隠しながら貴族令嬢の使用人として生きる、何とも可笑しく奇妙な物語、なのである。

こうして、やっとあらすじで書いていた地点へと物語を進めることができました。


ある意味ここからが、本編スタートです。


頑張って執筆したいと思います!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 「生前の〜」だと今は生きていないような印象を受けるので「前世の〜」の方がなんか安心します。
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