第7章 第173話 夏季休暇編 水上都市マリーランド ⑤
「んんー!! 美味しい!! 相変わらずお料理上手ね、アネットちゃん!!」
頬を緩ませ、俺が作ったシチューを食べる奥方様。
久しぶりに会った先代当主様夫妻も、エルジオ伯爵も、ロザレナもルイスも、美味しそうにシチューを口に運んでいた。
何気ない、数か月前まではよく見ていた御屋敷の平穏な日々の一幕。
だが……今日は少しだけ、以前とは違っていた。
「な……な、何で……何で、私の料理は誰もおかわりしないんですか……っ!! とっておきのオニオンスープを作ったのに……!!」
壁際に立って待機していると、隣にいるクラリスが、身体を震わせて夕食の光景を見つめていた。
彼女の目線の先にあるのは、長机の奥にある二つの鍋。
空になった俺のシチューの鍋と、まだ在庫が残っているオニオンスープの鍋。
勝手に勝負を仕掛けられ、勝手に鍋を一緒に並べられたわけなのだが……普通に勝ってしまった。
プルプルと肩を震わせ、顔を青白くさせるクラリス。
そんな彼女に対して、どう声を掛けようかと迷っていると……厨房から出て、水差しを手に持ったコルルシュカが、通り過ぎる間際にポソリとクラリスに声を掛けた。
「だから、言ったじゃないですかぁ。貴方、アネット先輩を舐めすぎなんですよぉう」
「……ッッッ!!!!!」
下唇を噛み、俯くクラリス。
その後クラリスは、勢いよく食堂の外へと出て行ってしまった。
「クラリスさん!?」
追いかけようとしたが、厨房に居たマグレットに呼び止められる。
「アネット、ちょっと手を貸してくれるかい!?」
「あ、は、はい。今、行きます」
……クラリス、大丈夫だろうか?
彼女は見た感じ、そんなに悪人には思えないし……後でよく話を聞いた方が良さそうかな。
俺はまだ、彼女が何故、こんなにロザレナの付き人になりたいのかも聞いていないわけだし。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
――――夕食後。午後20時過ぎ。
食器を片し、台布巾でテーブルを拭いていると、エルジオ伯爵が声を掛けてきた。
「……仕事中にすまない、アネットくん。ちょっと良いかな?」
「あ、はい、旦那様。何か御用でしょうか?」
顔を上げ、背後を振り返る。するとそこにはランタンを手に持ったエルジオ伯爵とロザレナの姿があった。
親子揃ってどうしたのだろうかと首を傾げていると、ロザレナが前に出て開口する。
「アネット。今から、ちょっと付き合えない?」
「構いませんが……何処かに行かれるのですか?」
「うん。お父様が、地下にあるレティキュラータス家の宝物庫を見せてくれるらしいの」
「宝物庫……?」
俺が疑問の声を上げると、伯爵は微笑を浮かべながらロザレナの言葉を補足する。
「代々、四大騎士公の当主になる者には伝えておかなければならないことがあってね。一人前になったロザレナにも、それを教えておこうと思って。今回の宝物庫案内は、その件の繋がりでなんだ」
「え? お嬢様、ご当主様になられるのですか!?」
「もしもの時の話だよ。僕の身にもし何かあった場合、この家はロザレナが必然的に受け継ぐことになるだろうからね」
「ルイス様が、この御家を継がれるのではないのですか?」
「ルイスはまだ幼い。あの子が大きくなる間は、ロザレナが次期当主候補だ。だからロザレナには、今の内に、レティキュラータス家の全てを教えておこうと思ったんだよ」
「な、なるほど……。察しますにそれは、かなり重要なお話しなのではないのですか? 私のようなただのメイドが同席してもよろしいのでしょうか?」
俺がそう言って萎縮した様子を見せると、エルジオ伯爵は朗らかに笑ってみせた。
「君はもう、この家に無くてはならない存在になっているんだよ、アネットくん。次期メイド長であり、ロザレナが一番信頼している存在……それが君だ。次世代でこの家とレティキュラータス領を導いていくのは、ロザレナとアネットくん、君たち二人だ」
伯爵のその言葉に、俺は思わず目を見開いて固まってしまう。
まさか彼が、ここまで俺のことを認めてくれているとは思わなかったからだ。
「さて、長話はこのくらいにして、さっそく行くとしよう」
そう口にすると、伯爵は踵を返し、食堂を出て行った。
俺は、手に持っていた台布巾を近くに居たコルルシュカに渡す。
そしてその後、ロザレナと一列に並び、伯爵の後ろを遅れて追いかけていった。
――――四大騎士公の宝物庫、か。何となく、バルトシュタイン家に行った時のことを思い出すな。
けれど、確か俺が行ったバルトシュタイン家の宝物庫は、本当の宝物庫ではないと、ヴィンセントは言っていたっけ。
いったい俺たちは伯爵にどんな事を説明されるのだろうか。
少し、ワクワク感を覚えなくもない。
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数分後。連れて来られたのは、中庭にある古ぼけた狼のモニュメントの前だった。
台座に置かれた狼の石像は、口を開け、遠吠えするように夜空を見上げている。
伯爵は石像の前に立つと、狼の口の中にある下顎に生えた牙を……下に押した。
「ロザレナ。宝物庫へと入り口はここに繋がっている。よく覚えておくと良い」
その瞬間。石像はゴゴゴと音を立て、横にスライドしていった。
現れたのは、地下へと続く隠し階段。
その階段からは、ひんやりとした空気が流れていた。
「さて、行くとしようか、二人とも」
「はい」「分かりました」
ランタンを手に持って、伯爵は先に階段を降っていく。
俺とロザレナも続いて、地下へと繋がる階段を一歩、降っていった。
「……なんか、真っ暗なところね」
「そうですね。とても暗い場所です」
階段を降りると、そこには暗闇が広がっていた。
見たところ、光源は、前で階段を降って行く伯爵のランタンだけ。
地下宝物庫へと続く屋敷の階段は、とても薄暗い場所だった。
「アネット、怖くない? 怖かったら、このあたしの手を握っても構わないわよ!」
その途中。ロザレナがこちらに振り返り、そう声を掛けてくる。
俺はそんな彼女に、肩を竦めながら言葉を返した。
「申し訳ございませんが、私は暗闇には恐怖心を抱きませんので」
「まったく。まるで隙を見せないのね、貴方は……」
「お嬢様も、先日の肝試しではあまり怖がってはいませんでしたよね?」
「別に、怖くないわけじゃないわよ。あの時は学校のみんなもいたわけだし。あと、相手が倒せる存在であれば、特に怖くは感じないわ」
「……剛剣型には脳筋が多いとは聞きますが……お嬢様、いつの間にかまごうことなき脳筋剣士に……」
「んんー? 今、何か言ったかしら、アネットさぁん?」
肩越しに、こちらに怒気を含んだ笑みを浮かべるロザレナさん。
うん、頬に光が当たって影ができて……普通に怖いです、お嬢様。
「コホン、何でも。そんなことよりもお嬢様。こちらを見てお話するのも結構ですが、ちゃんと足元を見て階段を降りてください。転んで頭を打っても知りませんよ?」
「本当にこの子は……口が減らないんだから。もう少し主人を敬うということをして欲しいわね」
俺にジト目を向けた後、ロザレナは前を振り向き、階段を降りて行く。
そんな俺たちの様子に、伯爵はクスリと笑みを溢した。
「君たちは本当に、幼い頃から仲が良いね。見ていてとても微笑ましくなるよ」
「いつもこの毒舌メイドに泣かされてばかりですよ、お父様」
「もし本当に僕の身に何かあっても……君たち二人ならば、この家を立派に引っ張ってくれそうだね」
「え? お父様……?」
「何でもない。それよりも二人は、四大騎士公の家にはそれぞれ家紋があることを知っているかな?」
「え、家紋なんてあるの? アネット、知ってた?」
「いいえ。私も初めて知りました」
俺たち二人は揃って言葉を返す。
すると伯爵は、静かに語りだした。
「戦務卿バルトシュタイン家は、『鷲獅子の家紋』。財務卿オフィアーヌ家は、『毒蛇王の家紋。軍務卿フランシア家は、『天馬の家紋』。そして、初代剣聖レティキュラータス家は……『黒狼の家紋』」
「鷲獅子、毒蛇王、天馬、黒狼、ですか……。でも、あれ? この家紋って……」
「気付いたかい? アネットくん」
俺がハッとした表情を浮かべていると、エルジオ伯爵は肩越しにこちらに笑みを向けてきた。
遅れて、ロザレナもあることに気付く。
「ちょっと待って! まさか、四大騎士公の家紋って、騎士学校のクラス分けと同じなの……!?」
「その通りだよ、ロザレナ。騎士学校のクラスは五匹の聖獣で組み分けされている。それは、元来、四大騎士公の家紋から来ているものなんだ」
「で、でも、待ってください、お父様! クラスは五つ、ですよね!? 四大騎士公は、四つの家しかありませんよ……!?」
「そうだね。牛頭魔人の家紋の家だけ、ないね」
「それは、いったいどういう……?」
「―――――王国で最も権威を持つ、四つの伯爵家は、四大騎士公と呼ばれている。けれど、この騎士の家系は元々、五つあったんだ。200年程前には、ね」
「え……?」
「ついたよ。ここが、レティキュラータス家の宝物庫だ」
階段を降りきって、最下層へと辿り着く。
目の前にあるのは巨大な藍色の門。
その両開きの門には、金の装飾で、二匹の狼と二人の女剣士の絵が左右に描かれていた。
伯爵は門の前でコホンと咳払いをすると、扉に手を付ける。
そして、静かに呟いた。
「――――我、狼の血に連なる者なり。初代剣聖ラヴェレナの魂よ、我を宝物庫へと導きたまえ」
そう呪文のようなものを唱えると、ゴゴゴと門が音を立て、両開きに開いていく。
そして、完全に開き切ると、伯爵はこちらに顔を向け……俺たち二人に声を掛けてきた。
「さぁ、目的の宝物庫はここだ。入ろう、二人とも」
俺とロザレナは呆けた顔をしてコクリと頷き、伯爵の後に続いて宝物庫の中へと入った。
「すごい……なにここ……」
ロザレナが感嘆の息を溢し、周囲を確認する。
レティキュラータス家の宝物庫。
そこには、壁際に配置された大量の本棚と、床に置かれたたくさんの宝箱の姿があった。
そして、最奥にある祭壇の上―――左右に置かれた燃え盛る黒い炎の松明が置かれた、その中央にあるのは、二本の剣が飾られていたと思しき、台座だった。
剣が置かれていたであろう台座。その場所にだけ、異様な空気が漂っているように感じられる。
祭壇の背後にある壁には、この御家の家紋であると思われる、巨大な黒狼の紋章の姿があった。
その光景に、ロザレナは当たりをキョロキョロと見渡して、興奮した様子を見せる。
「ここが、レティキュラータス家の宝物庫……!! まさか、うちにこんなに財宝があるだなんて……!! お父様、宝箱の中身を見てみてもいい!?」
「……あぁ、構わないよ」
「やった!!」
ロザレナは、嬉々として、近くにあった宝箱を開けてみる。
だが、それは……ただの空箱だった。
「あ、あれ……?」
もう一度、ロザレナは他の宝箱を開けてみる。しかしそれも空箱。
何個も何個も箱を開けてみるが、どこにも財宝は見つからなかった。
「お、お父様!? どこにもお宝が入っていないわ!!!!」
「そうだね。残念だけど、うちには宝物はひとつもない。先々代の祖父が、御家の存続に悩み、家財を全部売ってしまったんだ」
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっっっ!?!?!?」
叫び声を上げ、愕然とした様子を見せるロザレナ。
そんな彼女に申し訳なさそうに笑みを浮かべた後、伯爵は頭を横に振る。
「僕の祖父、ロザレナのひいお爺様の時代、この家は没落寸前までいってしまってね。その際に、伯爵位を保つために、持っていた家財を全て売り払ってしまったんだ。だからここは、もぬけの殻の宝物庫になっている……というわけなんだよ」
「何か……改めて、うちって本当にお金が無いということを実感したわ」
何処か気落ちした表情を浮かべるロザレナ。
俺はそんな彼女の隣で、先ほどから気になっていた質問を伯爵へと投げてみる。
「あの……さっきから気になっていたんですけど、あそこにある、剣の台座はいったい……?」
「あぁ、これのことか」
俺の言葉に頷くと、伯爵は、剣が置かれていたと思しき台座の前に立つ。
そして、何処か神妙な面持ちで口を開いた。
「四大騎士公の家には、それぞれ、初代当主様から【英傑の神具】と呼ばれる強力な武具を受け継いでいる。レティキュラータス家が代々継いできた神具は、伝説の刀匠ラルデバロンが打ったとされる二つの姉妹刀。一つ目を【青狼刀】と呼び、二つ目を【赤狼刀】と呼ぶ。別名『狼の牙』と呼ばれる神具だ」
「………………は?」
伯爵のその言葉に、俺は思わず呆けた声を出してしまった。
しかし伯爵は気にすることなく、続けて口を開いた。
「【英傑の神具】は、その家の血族が持つことで、真なる力を開放する。まぁ、血族以外の人間が使っても絶大な力を発揮する武器でもあるけれどね。ほら、ロザレナが大好きだった先代剣聖アーノイック・ブルシュトローム様は、【青狼刀】を使っていらっしゃったんだよ。アレは元々、うちの神具だったんだ」
「へぇ、そうだったんだ。面白いですね……って、ん? 【青狼刀】と【赤狼刀】……? その名前、何処かで……」
「? どうかしたかい? ロザレナ」
「って、ちょ、ちょっと待って、お父様ッッ!!!! ねぇ、アネット!! 【赤狼刀】って、確か、聖騎士商店街のあの店で売られていた、あの妖刀の名前よね!?!?!?」
情報が多すぎて色々と混乱しつつも、俺は、ロザレナにコクリと頷きを返す。
するとロザレナは、伯爵に向けて大きく口を開いた。
「な、何でうちの神具が、商店街なんかで売られてるのよ!? というか、アーノイック・ブルシュトロームが持っていた青狼刀はどこにいったの!? 何で、レティキュラータス家の神具を、うちが一つも所有していないのよーっ!?!?」
その叫び声に、伯爵は大きくため息を吐く。
「さっき言った通り、レティキュラータス家の宝物は全部、先々代のご当主様がお金に代えてしまったんだよ。だから、うちにあった二つの刀は、全て外にあるんだ」
「ば……馬鹿じゃないの!? ひいお爺ちゃん!? 何でそんな大事なものを売ってしまうのよぉ!!!!」
「これは、仕方がないことなんだよ、ロザレナ。さっきも言ったけれど、ひいお爺様の時代は、今以上に家計が厳しかったんだ。没落寸前だったところを宝物を全て売って回避した。そして、お母さま……ロザレナのお婆様、メリディオナリスの経営手腕で、この家は何とか回復するに至ったんだ」
「そ、それにしたって、初代当主から代々受け継いできたものを……そんな……」
俯き、先ほどよりもさらに落ち込むロザレナ。そんな彼女の肩を、エルジオ伯爵はポンと優しく叩く。
「失った神具は、またいつの日か買い戻せば良いさ、ロザレナ。まぁ、そんなわけで……うちには、財宝というものは一切存在しないんだ」
「これが、お父様があたしたちに伝えたかった事の全て、ですか……?」
「もうひとつある。こっちの方が本題かな」
そう言って伯爵はコホンと咳払いをすると、ロザレナの目を見つめ、静かに開口した。
「……この言葉は、初代当主ラヴェレナ様から代々の当主に、受け継がれてきている言葉だ」
「初代当主様から……?」
「―――――『女神に気を付けろ。奴らはこの国を裏から支配する人の形をした怪物、人類の敵だ』」
「え……?」
その言葉に、ロザレナは瞠目して驚く。俺も思わず、目を見開き硬直してしまった。
「女神……? 女神って、この聖王国の国教である『セレーネ教』の……主神、月の女神アルテミスのこと、ですか……?」
「この言葉の意味は、よく分かっていない。だけど、この遺言は代々のレティキュラータス家当主に伝わっているものだ。そして、その忠告を守ってなのか、実際、レティキュラータス家は女神の信奉には疎い家系だ。そのことから初代当主は、セレーネ教と何らかの確執があったと見るべきなんだと思う」
「そう、ですね……。女神なんてものが実際にいるなんて思えないから、この忠告は、セレーネ教のことを言っているのかもしれませんね……」
顎に手を当て考え込むロザレナ。
確かに……この言葉には何らかの意図が隠れているように思える。
元々色々ときな臭い国ではあったが、ますます、怪しく思えてきたな。
とはいえ、ただの剣士だった俺に、貴族たちの思惑など分かるわけもないのだが。
「あと、四大騎士公の家系には、神具と共に、ある特殊な『加護』の力が受け継がれていると聞いている」
「『加護』? 『加護』って何ですか? アネット、知ってる?」
「はい。『加護』とは、魔法因子と同じく、血脈によって代々受け継がれていく固有能力のことです。ただ『加護』の力は魔法とは違って、常時自動で発動してしまいますので……自分の意志でオフにはできません。強力な力程、日常生活に支障をきたす恐れがあります」
オリヴィアが【怪力の加護】のせいで料理下手になってしまっているのと同じように、加護の力を持つ者は、能力を完全にオフにすることができない。
昔聞いた話では、視界に入った者を強制的に石に変える【石化の魔眼】を持った者は、常に両目を布で塞いで生活していたとか。
そういったことから加護の力は、使用者にも害を成す、諸刃の剣ともいうべき力と言われている。
「アネットくんの言う通り、加護の力は諸刃の剣だ。しかしレティキュラータス家の加護の力は、残念ながらこの家が持つ文献には載っていなくて、分かっていないんだ。ただ、うちは魔法因子が少し特殊と聞いている」
「特殊、ですか?」
「うん。表向き、レティキュラータス家の魔法因子は【炎熱属性】とされているんだ。だけど、稀に【闇属性魔法】を発現する者がいたらしい。そういった能力を持った者は、代々、日の目に出ないように座敷牢に閉じ込め、軟禁生活を余儀なくされていたらしいよ。王国では闇魔法は、色々と曰く付きの力だからね」
「え゛」「な、軟禁生活……」
「だけど、ここ数百年、レティキュラータス家から闇属性魔法因子を持つ者は産まれていない。まぁ、恐らくは、その魔法因子も潰えたんじゃないのかな。だから、心配する必要は……」
「アネット……」「え、えぇ、そうですね、お嬢様……」
俺とロザレナは思わず、お互いの顔を見合わせてしまった。
そんな俺たち二人に、伯爵は首を傾げる。
「どうしたんだい、二人とも?」
「お父様……あたし…………闇属性魔法、使えます……」
「へ?」
宝物庫に、何とも言えない空気が漂っていった。
第173話を読んでくださって、ありがとうございました。
今回のお話を書くに至って、少し過去に書いた設定を修正しました。
……家紋……何でもありません笑
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また次回も楽しみにしていただけると幸いです!




