第6章 第167話 学園に潜む亡霊 ⑦
「……ふにゃ? 何してるのかニャ、こんなところで君たちはー? もう下校時間とっくに過ぎてるでしょー?」
「「え? ルグニャータ、先生……?」」
俺とロザレナは呆然と立ち尽くし、旧音楽科の教室から出てきた猫耳幼女先生をジッと見つめる。
ルグニャータはそんな俺たちの様子に首を傾げると、教室の戸を閉め、とてとてと廊下を歩いてきた。
「ロザレナさんに、アネットさん。あとは……鷲獅子クラスのジェシカさんに、三期生のグレイレウスくん……? いったいどういう組み合わせ……あぁ、そっか。学生寮のメンバーかニャ。なるほどなるほど…………って、ん?」
ルグニャータが、足を斬られて倒れ伏している鎧たちの姿を見つめて、目を見開く。
「え? 学園の防衛用ゴーレムたちが何で、こんなに居るんだニャ……?」
「学園の……防衛用ゴーレム?」
あ、何となく、悪い予感してきたぞ。やっぱり幽霊じゃなかったのか、こいつら。
「うん。この子たちは学園に異常があった際に、問題解決するようにプログラムされている防衛用のゴーレムなんだニャ。学園には貴重品も多くあるから、守衛代わりなんだニャ。でも……おかしいなー。この子たち、学園の腕章を付けた生徒は絶対に襲わないように命令されているはずニャんだけど……何でゴーレムが動きだしてるんだろ? んん?」
ルグニャータはポリポリと、頭を掻く。
そして、チラリと前に視線を向けた、その時。その視線を防ぐようにしてロザレナが前に立ちはだかった。
ルグニャータは横にずれ何度も前を見ようとするが、そんな彼女と一緒にロザレナも横にスライドし、何故かその視線を遮った。
「……あの、ロザレナさん?」
「何ですか、先生?」
「前、見せてくれない? 何でそんなに先生の視線を隠そうとするのかニャ?」
「さぁ、何ででしょう?」
「ふにゃぁ……」
ルグニャータは大きく欠伸をした、後。
一度フェイントを見せて、ロザレナの横を素早く通って行った。
「あ!」
思ったよりも素早い動きに驚きの声を上げるロザレナ。
そして幼女教師は、目の前に広がる光景を視界に捉えると……大きな悲鳴を上げるのだった。
「な……なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?!?」
全体が焼け焦げた廊下。爆発したような小さなクレーターの上に、粉々になった鎧が落ちている姿。
その光景に、ルグニャータは身体をプルプルと震わせる。
そして、引き攣った笑みを浮かべ、背後にいるロザレナへと肩越しに顔を向けた。
「……ロ、ロザレナさん? これはいったい……どういうことなのかニャ?」
「あたしたちは何も知りません。何も」
「嘘言わないで欲しいニャ」
「知りません」
知らんぷりして、口笛を吹き始めるロザレナ。
そんな彼女の肩を―――背が低すぎて肩は掴めないため、服を握ると、ルグニャータは目をグルグルとさせて再度、悲鳴を上げた。
「先生、今日は当直の日だったのニャァァァァァァ!! それなのに、よりにもよって先生が学校に残っている日に何でこんな……廊下が丸焦げになってるの!? あり得ないニャ!!!!! 全部先生の責任になっちゃうんだよ、これぇっ!? ただでさえ少ないお給金が、もっと少なくなっちゃうんだよぉぉぉぉ!!!! お酒飲みたいのにぃぃぃぃ!!!!!! フニャァァァァァァァ!!!!!!」
「せ、先生、いつもやる気なさそうなのに、今日は元気なんですね?」
「先生は夜行性なんだニャァァァァァァ!!!! 猫型の獣人と人族の時間感覚を一緒にしないで欲しいのニャァァァァァァ!!!!!!」
うーん、ロザレナの仕業とはいえ……ちょっと可哀想になってくるな、この酒猫教師。
だけど、普段の行いがアレのせいで、完全な被害者であったとしても、心の底から可哀想とは思えないのが不思議だ。
「……そうだ。先生、学校でピアノを弾いていたのって、先生なんですか?」
クールダウンさせるために、違う話題を猫先生に投げてみる。
すると彼女はロザレナから手を離し、ゼェゼェと荒く息を吐きながら俺の問いに答えた。
「はぁはぁ……そうだよ、アネットさん。それが何かニャ?」
その後、ルグニャータは俺の方に顔を向けると……何故か、先ほどまでの怒りを納めて、無表情になった。
そして、ほんの一瞬だけ辛そうな顔を見せ、首を横に振ると、彼女はすぐにいつもの気怠げな様子を見せた。
「先生は、聖騎士団に在籍している時、主に密偵をやっていたんだニャ。その時に、ある人物の調査をするために冒険者ギルドに潜入していた時期があったんだニャ」
「密偵、ですか?」
「そうニャ。まぁ、その密偵をしていた時に出会った友人が……冒険者ギルドのウェイトレスをしていてニャ。その友人が、酒場で弾く、先生のピアノの音色が好きだったんだニャー。だから……たまにこうして弾いているんだよ。これはある意味、鎮魂歌のようなものかな。私の大好きなお友達は……私がこの手で殺したようなものだから、ね」
「え……? 殺した……?」
「何でもないニャー」
そう口にすると、ルグニャータは再びチラリと窺うように俺の顔を見つめてくる。
だけどすぐに視線を外し、彼女はロザレナに身体を向けて口を開いた。
「……まっ、こうなったら仕方ないニャ……ここは先生に任せて、貴方たちは早く寮に帰りなさい」
「え?」
「見知らぬ者が学園に潜入して勝手に暴れたって、そういうことにしてあげるから。はぁ……これは始末書から逃れられそうにもない事案だニャ~……教師には夏休みも何も無いんだニャ~……ついてないニャ~」
「先生……ありがとうございます!」
俺たち(グレイを除いて)は礼を言って、ルグニャータへと頭を下げる。
するとルグニャータはヒラヒラと、ダボッとした長い袖を振ってみせた。
「まぁ、良いよ~。私が受け持つ黒狼クラスの生徒がこの場にいなかったら、他の教師の格を落とすために、吊し上げていたところなんだけど……クラスの進退は先生の今後のお給金にも響いて来るから、今回ばかりは自分のためにも見逃すしかないのニャ。お酒飲めなくなったら、先生、死んじゃうし。お酒は命の燃料だし」
「……生徒を守るというよりは、一番大事なのはお酒なんですね……少しでも良いところがあると思ったあたしが馬鹿でした」
眉間に手を当てて、呆れたように首を横に振るロザレナ。
――――――その時だった。
下の階から「ぴぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」「ですわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」という、悲鳴の声が聴こえて来た。
……うーむ、何という分かりやすい叫び声。誰が発したものなのか丸わかりだ。
でも、まぁ良いか。ぴぎゃあさんとですわさんは別に放置しても問題なそうだし、うん。
あの二人生命力凄まじいし、どんな状況でも生き残っていそうなタフさあるし。大丈夫だろ(適当)。
「今の声は……先生! この防衛用のゴーレム? って奴ら、あたしたち生徒を襲ってくるんです!! 多分、他の生徒も襲われてるんだと思います!! 何とかしていただけませんか!?」
「え~また面倒事かニャ~? とはいっても、生徒を見捨てるわけにはいかないし……やれやれだニャ……」
やれやれ系猫耳幼女教師はやれやれと首を回すと、そのまま気怠げな様子で廊下の奥へと進んで行った。
その姿を見て、今まで黙っていたグレイレウスがぽそりと呟く。
「……あれが、師匠とロザレナが所属している、一期生黒狼クラスの担任教師、ルグニャータ・ガルフルですか……。何というか、適当な性格が表ににじみ出ていて……教師の風上にも置けない奴ですね。師匠が担任教師をやられた方が百倍、いえ、一億倍良いのではないでしょうか?」
「…………いや、多分、あの先生も良いところがあるんだと思うんだよ…………多分な」
俺たちは幼女教師の背中を追いつつ、同時に静かにため息を溢した。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「……貴様、学生にしてはなかなかやるな」
仮面の男はマイスの剣を身体を逸らし、回避する。
それでもマイスの猛攻は止まらない。袈裟斬り、左薙、左切上、右薙、逆袈裟、連続で剣を振っていく。
その全てを簡単に避けてみせた仮面の男は、剣を下方から上へ振り放った。
キィィィンという金属音が鳴り響き、マイスの剣は空を舞う。
「終わりだ、元王子」
青い瞳をギラリと暗闇に輝かせ、男はマイスの脳天に剣を放とうと上段に構える。
その光景を見て、マイスは―――ニヤリと、不敵な笑みを浮かべた。
「こいつをひとつくすねておいて助かった」
マイスは懐から光合石を取り出すと、ギュッと握り、魔力を流し込んだ。
その瞬間。石は光り輝き出し、暗闇の中に突如まばゆい光が産まれた。
その光は、闇の中に慣れていた男の目を突き刺した。
「む……!?」
「悪いな、お客人。俺はこういう戦い方が得意なんだ」
マイスは光合石を放り捨てると、視界を奪われた男の元へと向かって、剣を持ちながら駆け抜ける。
その足音に気付いた仮面の男は、片手で両目を押さえながら後方へと下がると、マイスへと向かって手のひらを掲げた。
「我が敵を穿ち殺せ―――【ストーン・バレッド】!」
小石の散弾が、マイスに向けて放たれる。
マイスは足を止めて剣をまっすぐと構えると、その小石を、剣を使って器用に斬り飛ばし、防いで見せた。
三十数個にも及ぶ小石の銃撃を完璧に捌いてみせたその剣の腕に、仮面の男は驚きの声を上げる。
「ほう……? ただの女好きの馬鹿王子だと思っていたが……存外、やるな。もしや、巷で聞く阿呆王子の噂話は全て演技による産物だった……ということか?」
「ハッハッハー! そんなわけがないだろう! 俺は貴族のご令嬢に手を出して勘当された、ただの馬鹿な元王子さ!」
前髪をファサッと靡き、爽やかな笑みを浮かべるマイス。
視力を取り戻した仮面の男は、そんな彼をジッと見つめると……クククと不気味な嗤い声を上げる。
「王族などどいつもこいつも欲に溺れた馬鹿ばかりだと思っていたが……それらとは少し違うようだな。貴様、表に出て来る気はないのか? 武力と知略。貴様なら、あのエステルにも引けを取らない器だと、私は思うがな」
エステルという言葉に、マイスは眉をピクリと動かし、一瞬無表情になる。
だが彼はすぐに微笑を顔に張り付かせ、飄々とした様子で口を開いた。
「悪いが、王位には興味ないな。俺は、俺の大切なもののためだけに剣を振るう。……お客人。察するに君は、眼帯の姫君の父君と我が父王に相当な恨みを持っているご様子のようだな?」
「そうだ。特に、そこに居る女の父には、深い憎悪を抱いている。ゴーヴェン・ウォルツ・バルトシュタイン。奴は、絶対に殺さなければならない男だからな。……クク、フハハハハハハ!! バルトシュタイン家に名を連ねる者たちは、総じて全てだ!! その顔の皮を剥ぎ、その臓物を引きずり出し、串刺しにして我が故郷の地に飾ってやらなければ……私のこの心が満たされることはけっしてない!!!!」
仮面の奥にある瞳が血走り、オリヴィアを睨み付ける。
オリヴィアはその視線にビクリと肩を震わせると……意を決して前に出て、口を開いた。
「あ、貴方は、お父様を……ゴーヴェンを恨んでいるんですね?」
「そうだ!! 貴様らのせいで、私の大切な人たちは皆、殺されたんだ!! お前たちさえいなければ……全部全部、お前たちバルトシュタイン家の者が居たせいだ!! だから私の家族は……!! 死ね!! 今すぐここで死ね、オリヴィアァァァ!!!!!!」
怨嗟の声を上げ、咆哮を上げる仮面の男。
オリヴィアはその姿に動揺するも、マイスの前に出て、彼を守るようにして両手を広げた。
「!? 眼帯の姫君、何を……!?」
「わ、私を殺して気が済むのなら、殺してくださって構いません!! ですが……私のお友達を傷付けるのは、どうか、やめてくださいませんか!!!!」
「何?」
「お父様が貴方に何をしたのか、私には分かりません。そのご様子から、相当なことを貴方にしてしまったんでしょう。でも……でも、もし、私のせいで大切なお友達が傷付いたとなれば、私は、我慢できません!! マイス君だって私の大事なお友達です!! 彼が私のために傷付いたとなれば、私は、私が許せなくなる!! ですから……私を殺したら、もう、誰かを傷付けるのはやめてくださいませんか!?」
「この私に命令するな!! 悪魔の血筋の娘がぁっ!!!! 友達を傷付けるのはやめろ、だと!?!? 貴様らが先に手を出してきたんだろうがぁぁぁぁぁ!!!!! 貴様らが、貴様らがぁぁぁぁ!!!! ……うぐっ!!」
仮面の男は片腕を押さえると、フラリとよろめく。
そして彼は、過去の光景をフラッシュバックさせた。
―――――幼いオリヴィアが、オフィアーヌ家の庭で自分に花冠を作ってくれた、過去の出来事を。
「……チッ!! 薬が利きすぎたか……!!」
「あ、あの、大丈夫……ですか?」
「ゼェゼェ……」
額を押さえ、荒く息を吐く仮面の男。
――――――その時だった。
男の背後にある階段から、四階に駆け降りて来る二人の少女が現れた。
「ぴぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!! 何であの鎧さん、しつこくうちらを追いかけて来るんですかぁぁぁぁ!!!!!!!」
「はぁはぁ……陰気女!! あ、貴方、思ったよりも体力ありますわね!? というか逃げ足、速いですわね!?」
「先日の大森林での一件で、うちの脚力は強化されたんですよぉぉぉぉぉ!!!!!」
「何ですか、大森林での一件って!? ちょ……も、もう、無理……足がガクガクですわぁぁぁ!!!!」
「ぐふふふ。このまま囮になってくださいですぅ、ルナティエさぁんー♪ ――――って、ぎょえええええ!?!? 前に何か人がいましたぁぁぁ!! 後ろばっか見てたら全然気が付きませんでしたぁぁぁぁぁぁ!!!!! どいてくださーい、そこの仮面の人―っ!!」
ミレーナは猛スピードで階段を駆け降りると、崖下にいた仮面の男へと盛大にダイブする。
男は体力を失ってしまっていたからか……飛んでくるミレーナを避けることができず。
そのまま彼女に腹を頭突きされ、床に倒れ伏してしまった。
「ぐはっ!?」
「ぴぎゃう!?」
仮面の男は仰向けになって倒れ伏し、その上にミレーナが圧し掛かる。
突然起こったその光景に、マイスとオリヴィアは思わず固まってしまった。
「えっと……あの……これ、どうすれば良いのでしょうか?」
「俺に聞かないでくれたまえ」
互いに顔を見合わせるマイスとオリヴィア。
その時、ミレーナが後頭部を押さえて、男の上で起き上がった。
「いたたたた……酷い目に遭いましたですぅ~。何でこんなところに人が立ってるんですかぁ? ちょっとそこの、私の下で寝ている悪趣味な仮面付けた変態さん!! 貴方、もう少し周りを見た方が良いですよ!! あ、あと、少し足擦りむいたので、損害賠償? 請求しますですぅ!!」
「あ、あの、ミレーナちゃん? 早く、その人の上から降りた方が……」
「退け、小娘。いつまで私の上に乗っている」
「ぴぎゃう!?」
仮面の男は立ち上がると、ミレーナを床に叩き落した。
そして彼はオリヴィアとマイスをギロリと睨み付けると、開口した。
「少し興が乗りすぎて、遊んでしまった。貴様らを相手にしている時間は、私には無い」
そう口にして踵を返す仮面の男。そんな彼に対して、マイスは不敵な笑みを浮かべた。
「逃げるのかね?」
「マイスウェル・フラム・グレクシア。貴様程の智者であれば、この私が手加減して相手をしてやっていたことを理解していると思ったのだがな?」
「フフッ、無論だ。君は察するに、かなりの腕を持った魔法剣士だ。それなのに低級の地属性魔法の【ストーンバレッド】しか使っていなかった。この場で本気で私たちを殺しにきていないことは、早々に理解していたよ」
「……覚えておけ。いつか必ず、貴様らは私が殺す」
そう言葉を残すと、仮面の男は漆黒のコートを翻し、廊下の奥へと進んで行った。
そんな彼の後ろ姿を……オリヴィアは小さくなるまで、見つめ続けていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「……オリヴィア、マイス先輩、大丈夫ですか!?」
「え? アネットちゃん? あ、みんなも!」
ルグニャータ、ロザレナ、ジェシカ、グレイレウスと共に四階に降りると、すぐに二人の姿を見つけることができた。
ルナティエの姿もそこにはあった。あと何故か、ミレーナも居た。
何だか、この二人が揃うと面白いな。
聖騎士養成学校が誇る、面白ろ可笑しい女二人組がここに揃ってしまっている。
「わ、またアネットさんに会っちゃいました……。うぅ、何でいつもトラブルが起こる度にこの人がうちの傍に居るんですかぁ……? 疫病神ですよぉう、この人ぉ……」
「うん、まぁ、ミレーナさんは無視しておくとして……」
「ちょ、無視しないでくださいですよぉう!? アネットさん!?」
「粉々になっている鎧が三体……オリヴィアが加護の力を使用して倒したんですね?」
しゃがみ、床に落ちている鎧の破片を手に取る。
するとオリヴィアが俺の傍に近寄り、コクリと、頷きを返してきた。
「はい。この階に居たのを二体と、ルナティエちゃんとミレーナちゃんを追いかけてきた奴を一体、私が倒しました」
「もしこれが、物理攻撃を無効化する幽霊だったとしたら、オリヴィアと最も相性が悪い敵だったと思います。ですが、どうやらこれは、防衛用のゴーレムだったみたいですからね。オリヴィアの力の前ではゴーレムなどガラクタ同然だった、ということですか」
「え? 防衛用のゴーレム、ですか?」
「はい。そうですよね、ルグニャータ先生」
俺の言葉に、背後にいたルグニャータが「うん」と声を上げる。
「そうだニャ~。でも、不思議なんだよね~。このゴーレム、そんな簡単に作動するようなものじゃないニャよ~。複雑な術式が施されてるから、普通の生徒が喚び起こせるものじゃないしね~~」
「だとしたら、何故、ゴーレムは暴走してしまったんでしょうか?」
うーんと首を傾げていると、ルナティエが腕を組みながら開口した。
「さっき、ここに不審な仮面の男がいましたわよね? あの男が何かやったんじゃないんですの?」
「あ、そのこと……なんですけど……」
オリヴィアは突如俯き、沈痛な様子を見せる。
その姿にマイスは小さく息を吐くと、前に出て、口を開いた。
「そのことに関しては俺から説明しよう。ルグニャータ先生、この件はすぐにでも聖騎士団に報告した方が良い。この校舎に、何か仕掛けられているかもしれないからな」
「え? な、何!? 何があったのかニャ!?」
――――その後。
俺たちはマイスから、先ほど起こった事の詳細を聞いた。
ゴーレムが暴走したのは、学園に侵入した謎の仮面の男の仕業だと。
その仮面の男は、オリヴィアに対して深い憎悪を抱いていた、と。
そして、その仮面の男の言動を聞いた俺は……その正体に、誰よりも早く気が付いてしまうのだった。
第167話を読んでくださって、ありがとうございました!
この章は、次話で終了させる予定です!
初めて短編というものに挑戦しましたが……どうでしたでしょうか?笑
次章、来年からは、ついに夏休み編の始まりです!
季節外れですが、元オッサンメイドに水着を着せたいです……笑
次章も楽しみにしていただけると嬉しいです!!
まだ早いですが、本年はありがとうございました!!
この作品を書籍として世に出せたのも、ここまで読んでくださったみなさまのおかげです!!
来年も頑張りたいと思います!!




