第135話 元剣聖のメイドのおっさん、順調に大森林を攻略していく。
「―――老剣士よ。貴様はまさに、武の極致を体現した者だった。恐らくは、気が遠くなる程の時間を修練に費やし、常人が狂う程の時間の中、ひたすら剣を振り続けてきたのだろう。貴様が老いていなければ、今頃我は、細切れにされていたのだろうな。……だが、この勝負、最後に立っていたのはこの我だ。勝者の権限として、貴様の血肉、我が喰らわせてもらうぞ」
オークはハインラインの頭を掴み、宙に浮かせると、その顔をジッと静かに見つめる。
そして、彼の首元を噛みつこうと、大きく口を開いた。
数秒もすればハインラインのその細い首は嚙み切られ、王国最強の剣神は即座に絶命していくことだろう。
だが―――その時。オークの背後から、一人の剣士が姿を現した。
「お爺様を離せ!! 化け物ぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
オレンジ色の髪のその青年―――ハインラインの孫であるアレフレッドは、高く跳躍すると、ロングソードを力いっぱいに振り、オークに目掛け斬撃を放つ。
オークはハインラインから手を離すと、即座に振り返り、腕をクロスさせてその斬撃を防御した。
斬撃の威力に土煙が舞うが……オークの腕には軽い痣ができるのみ。
ほぼ、オークはダメージを受けている様子は無かった。
その光景に、アレフレッドは目を見開き、驚きの声を上げる。
「なっ……!? 俺の斬撃を受けて、無傷だと……!?」
「何者だ? 貴様は?」
「チッ…………ロドリゲス!!」
「承知」
アレフレッドが大きく叫ぶと、その言葉に応じ、紫色の髪の青年が草陰から姿を現す。
青年は地面に倒れ伏すハインラインを脇に抱えると、オークの後方へと周り、腰からサーベル剣を引き抜いた。
前方と後方を二人の剣士に取り囲まれたオーク。だが、その顔に、一切の恐れの感情はない。
オークは「ククク」と笑い声を上げ、静かに口を開いた。
「貴様らは、見たところ……そこの老兵の仲間、というところか?」
「魔物が人の言語を喋るだと!? 貴様、まさか、ロード級の―――」
「その老兵は我の獲物だ。我は武の極致たるその老兵を喰らい、さらなる強者へと進化する。邪魔をするならば……貴様らも喰らい殺すのみだぞ」
オークは、背後にいる紫色の髪の男……ロドリゲスへと肩越しに顔を向ける。
ロドリゲスはハインラインを右脇に抱え、左手で剣を構えながら、その視線に冷や汗を流した。
「な……何だ、この醜い怪物は……っ!! こんな化け物に我が師が敗けただと!? 我が師は、王国最強の剣士だぞ!? そ、そんなことがあって良いはずが……」
「ロドリゲス!! 行け!!」
アレフレッドは跳躍し、剣を上段に構え、オークへと渾身の唐竹を炸裂させる。
だが、オークはその剣を軽く腕で弾いてみせた。
そのままオークはアレフレッドの腹に蹴りを放ち、遠方へと拭き飛ばす。
みぞおちに放たれた蹴りだったが―――アレフレッドはゴロゴロと地面を転がった後、すぐさま立ち上がり、そして、咆哮を上げた。
「行けぇぇぇぇぇ!!!! ロドリゲス!!!!!」
「……ッ!! 必ず生きて帰って来るのだぞ、ボーイ!!!!」
ロドリゲスはサーベルを仕舞うと、脇にハインラインを抱えたまま、まっすぐと歩みを進めて行くのだった。
だが……その道の先に、フードを被った見知らぬ女の姿があった。
「あらあらあらぁ? 【剣王】ロドリゲス・イラト・エンドクライブじゃなぁい? ねぇ、見て見て、これぇー? 可哀想だとは思わない~?」
「や、やめて……た、たすけて……!!」
フードの少女は湾曲した鎌のような武器を、幼い少年の首元へとあてがっていた。
その足元には、泣きじゃくり、四つん這いになりながらフードの女に踏まれている―――幼い少女の姿もあった。
その光景を見たロドリゲスは足を止めると、眉間に皺を寄せ、ギリッと歯を噛み締める。
「貴様……いったい何をやっている!! 今は、魔物が人間の世を喰らおうとしている、絶体絶命の状況なのだぞ!! 人間が人間を襲うなど、そのような醜い行いをやっている状況じゃ―――」
「キャハッ、キャハハハハッ!! アタシにとって一番楽しいこと……それは、破壊と混沌、そして、才能ある若い芽が潰されること―――!! アタシ、毎日が退屈で退屈でしょうがないの。だって、アタシってば……誰よりも強いから♪ 人生イージーモードすぎるとぉ、暇で暇でしょうがないのよぉ? キャハハハハッ☆」
フードを外すと、女は素顔を晒す。
その目は長い金髪で覆い隠されており、唇は緑色の口紅が塗られていた。
そして、首元には蜘蛛のタトゥーが彫られているのが見て取れた。
その姿を見て、ロドリゲスはサーベルの持ち手に手をやり、緊張した面持ちで開口する。
「…………【迅雷剣】ジェネディクト・バルトシュタインと並ぶ力を持つとされる、SSS級犯罪者……闇組織の長の一人……『首狩りのキフォステンマ』!! な、何故、貴様がここに……!!」
「キャハハハハッ!! あんたに答える義務はないわぁ。今ここで、あんたは―――」
「おい―――てめぇら、オレ様のいないところで随分と面白そうなことやってんなぁ? オレも混ぜろよ」
ドシンと、強烈な地響きと土煙と共に、ロドリゲスとキフォステンマの間に何者かが降って来る。
土煙が漂う向こう側には―――鉱山族の戦士、ルティカ・オーギュストハイムの姿があるのであった。
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「おぉ……でかい滝だなー」
大森林、第1界域『古代種の森』の進むこと数十分。
鬱蒼とした深い森を抜けたと思ったら、今度は、目の前に深い渓谷と大瀑布が現れた。
赤褐色の崖の上から100メートルはあろう巨大な滝が、崖下の川へと流れ落ちている姿が見て取れる。
ここから落ちたら、流石にどんな強者であろうと即死だろうな。
ゴーッと轟音を響かせながら落ちていく滝を眺めていると、エステルが隣にやってきて、声を掛けてきた。
「この滝の上にあるのが、第2界域『黄昏の古代都市』だ。古代の遺跡が残っている場所で、この森よりも幾分か開けた場所になっているんだよ」
「そうなのですね。やっと第1界域をクリアですか……第6界域まで先が思いやられそうです」
「はははっ、とはいっても、僕たちは正規のルートで進んでいなかったからね。古代都市の方で正規ルートに合流すれば、もう少し早く次の界域に到達できるはずだよ」
そう言って彼女は鞄からロープと杭を取り出し、ニコリと微笑みを浮かべた。
「さぁ、ここからは崖登りをするよ。気張っていこう!」
「崖登りですか……これまた疲れそうな作業ですね」
俺とエステルは微笑を浮かべ、お互いにクスリと笑みを溢した。
その後、俺たちは順調に冒険を進めて行った。
とはいっても、勿論、トラブルが無かったわけではなかったのだが。
「ぴぎゃあああああああああああああ!! 怪鳥グリフォン・イーグルですぅぅぅ!!!!」
ロープと杭を使って崖を登っている最中、巨大な鳥型の魔物に、ミレーナが襲われたり。
「あっ、開いていない宝箱ですぅぅ!! 遺跡の遺産がまだこんなところに残っているなんて……ラッキーですぅぅ~♪」
「あっ、ミレーナさん、そこには―――」
「何ですか、グライスくん。これはミレーナのものですぅ。絶対にあげませんよ―――って、ぴぎゃあああああああああああああ!! 遺跡に住み着いている巨大蠍、ジャイアント・スコーピオンですぅぅぅぅぅ!!」
第2界域に着くや否や、宝箱に目が眩んだミレーナが魔物の巣に飛び込み、喰べられそうになったり。
「ぴぎゃあああああああああああああ!!」
「今度はどうしたんだい!? ミレーナさん!?」
「果物かと思って手に取ってみたら、目がついていましたぁぁぁ!! 擬態した魔物ですぅぅぅぅ!!!!」
まぁ、こういった感じで、ことあるごとにトラブルは起こったのだ。……主にミレーナのせいで。
そんなこんなで俺たちは第2界域『黄昏の古代都市』の中腹を無事通り抜け、第3界域の目の前まで到達した。
だが、日も暮れて来たことで、とりあえず俺たちは野営を取ることに決める。
助かったことに、古代の遺跡が残ってくれていたおかげで、雨宿りには問題が無さそうだ。
先ほどから天候がどうにも良くはなく、曇り空になっていたのが気がかりだったからな。
崩壊した二階建てらしき石造りの家屋、そこの一階部分にテントを立てたので、雨が降っても濡れることはまずないだろう。
フーフーと息を吹き火の番をするグレイレウスを一瞥した後、俺は、エステルへと声を掛けた。
「野営地が決まったのは良いことですが、夕飯はどうしましょうか? 食材が無いのなら、今から私が野生動物でも狩りに―――」
「その必要はないわぁ」
ジェネディクトはエステルの横に立つと、ドサッと、目の前に巨大な猪の死体を放り投げてくる。
そして、俺を見下ろし、フフフと不気味な嗤い声を上げた。
「さっき、そこらで適当に見つけてきたの。ぴぎゃあちゃんと一緒に、ね」
「ぴ、ぴぎゃあちゃん……? え、もしかしてミレーナさんと一緒に、ですか?」
「クスクス……あの子はレンジャーとしてはそれなりに優秀のようだからねぇ。生物を探知する能力はそれなりのものよ。ただ、お馬鹿さんなところがマイナスではあるけれどねぇ」
そう言ってジェネディクトは俺とエステルの横を素通りし、遺跡の壁に背を預けると、目を伏せた。
……驚いたな。あの男がまさか、俺たちの食料を獲ってきてくれるなんて。
それに、ミレーナと一緒に行動をした点も、よく分からないな。
あいつ、基本的には他人を遠ざける一匹狼のようなタイプだと思ったが……誰かを頼ることもするのだな。
離れていったジェネディクトへと訝し気な視線を向けていると、遅れて、ミレーナが俺たちの傍にやってきた。
ミレーナはゼェゼェと息を荒げると、涙目になり、俺の腕にギュッと抱き着いて来る。
「き、聞いてください、アネットさん!! あ、あの、オカマの人!! ミレーナのことを脇に抱えて崖を飛び降りたり、林の中を疾走したり……挙句の果てには、貴方は単なる探知道具なのだから、余計なことは喋らないで頂戴―――って、言ってきたんですよぉう!? 信じられなくないですかぁ!? 人でなしの鬼畜生ですぅぅぅ!! 絶対に裏切りますよ、あの人ぉぉぉ!!!!」
「……私的には、ミレーナさんも十分、自己保身のために裏切ってきそうなのですがね……」
「な、何を言ってるんですかぁ、アネットさん~。ミレーナは、アネットさんと古くからのお友達じゃないですかぁ~。裏切りだなんて、そんな……ねぇ? ミレーナのこの綺麗な目を見てくださいよ! この純粋無垢で綺麗な目が、裏切ると思いますですかぁ! きらきらきら~☆」
「……なんか、突然目を輝かせ始めて……逆に胡散臭さが増しましたよ、ミレーナさん……」
「ガーン!! うぅぅぅ……泣きそうですぅぅ、おうちに帰りたいですぅぅ……」
「ま、まぁ、ミレーナさんが裏切るか裏切らないかは置いておくとして……」
「置いておくんですかぁ!? グライスくん!?」
「とりあえず、夕飯を作るとしようか。アネットさん、旅の途中で聞いたけど、君は料理ができるのだろう? ぜひ、君の手料理を御馳走してもらいたいのだけれど……大丈夫かな?」
「ええ。構いませんよ。元からそのつもりでしたし」
「本当!? やったー!! 君の手料理が食べられるだなんて、僕、ワクワクしてきたよ! どんな料理を作ってくれるのかな!!」
「そうですね……猪肉ときたら、ぼたん鍋……が、王道ですかね。持参してきた調味料の中に、ソイソースと砂糖もありますし、甘しょっぱくしてみるのも良いかもしれません。香草と山菜は、フィアレンスの森で採取してきたものも少量残っていますから……うん、鍋を作るのには問題なさそうですね。しいていえば、具材が少し、足りないかな?」
「ふふん、アネットさん、これを見てくださいです!!」
ミレーナが鞄を開け、その中にある色とりどりのキノコの山を見せて来た。
その中には、大森林に入ったばかりに見つけた……殺人キノコ『ナイトメア・マッシュルーム』の姿もあった。
その光景を見て、俺とエステルは思わず後ずさり、叫び声を上げてしまう。
「ちょ、ちょっと、ミレーナさん!? な、何てものを持って来てるんですか!?」
「そ、そうだよ!! そのキノコ、生き物を眠らせて菌糸を植え付けるやばい奴だったよね!? き、危険だよ、ミレーナさん!!」
「フッフッフッ。博識なミレーナには、このキノコを胞子を出させずに採取する方法が分かっているんです。傘を触らずに根だけを取れば……胞子は出ないんですよぉう。あと、一度地面から取れば、傘から胞子は出なくなるんですぅ。さらに火を通せば、中の胞子を完全に殺せますしねぇ。だから、危険ではなくなるんですよぉう」
「ほ、胞子が出なくなるのは分かりましたけど、それを持って来ていったい何をするつもり―――」
「食べるんですぅ。結構美味しいらしくて、たまにミスリル等級冒険者が持ち帰って、市場に出しているんですよぉう。ただ、まぁ……知識が無いと採取するのも命がけなので、滅多に食卓に並ぶものでもないのですが……」
な、なるほど。つまりは、東方の島国で食べられる『フグ』と似たようなものか。
フグは基本的にはその身に猛毒を持つ魚だと言われているが、東方の国の人々は匠な包丁捌きで無毒化できるらしいからな。
一定の危険はあるが、専門家が無毒化することで食べることが可能になる食材……恐らくは、珍味、と呼ばれるものなのだろうな。
俺は恐る恐ると言った様子で鞄を受け取る。
それと同時に、背後から声が聴こえて来た。
「師匠!! 火の準備、できました!! エプロンや調理道具も並べておきましたよ!! 料理の準備はバッチリです!!」
振り返ると、シートの上に、包丁やナイフ、レードル、鍋、まな板などの調理道具一式が揃えられていた。
そしてその奥で、俺のエプロンを両手に持って膝を付くグレイレウスが、こちらをキラキラとした目で見つめている。
俺はそんな彼の様子にため息を溢した後、キノコの入った鞄を焚火の傍に置き、グレイレウスからエプロンを受け取る。
そして慣れた手つきでエプロンを身に着け、三角頭巾を頭に被ると、ぼたん鍋を作るべく、鍋を手にした。
「―――美味しいっ!!!! アネットさん、これ、美味しいよ!! 今まで王宮で色んなものを食べて来たけれど……こんなに美味しい料理、僕、始めて食べたよ!!」
そう言ってエステルは岩の上に座りながら、美味しそうに碗に入ったぼたん鍋を食べる。
そんな彼女に微笑を向けた後、俺は静かに口を開いた。
「ありがとうございます。そう言っていただけると嬉しいです」
「はふっはふっ……確かに美味しいですぅ~~。ミレーナ、おかわり欲しいですよぉう、アネットさん~!!」
「おい、ぴぎゃあ女、貴様、少しがっつきすぎではないか? もう既に三杯目だぞ?」
「うるさいです、マフラー変態男! いいえ……今はマフラーエプロン変態男ですかねぇ。何でピンクのエプロン付けてるんですか? 正直、似合ってないです。気持ち悪いですよ?」
「貴様! これは、我が師とおそろいの戦闘着なのだぞ!! 料理とは、剣の道でもあるのだ!! 馬鹿にすると許さんぞ!!」
「料理が、剣の道……? ミレーナには、ただ、アネットさんの料理のアシスタントをしているようにしか見えませんでしたが?」
「貴様のような未熟者には分からんだろう……。良いから早く椀を寄越せ! 鍋をよそってやる」
「あっ、じゃあ、お肉多めでお願いしますぅ」
「駄目だ。野菜もしっかり取れ。バランスの取れた食事こそが、真の剣士への頂に通じる一歩なのだ」
野菜をこんもりとよそられ、むぅと頬を膨らませるミレーナ。
そんな彼女にフンと鼻を鳴らすグレイレウス。
何とも平和なやり取りだなと笑みを溢していると、エステルが椀を置いて立ち上がり、俺の傍に寄って来た。
そしてエステルは俺の手を両手で包み込むと……こちらに熱のこもった視線を向けてくる。
「この旅の期間中は我慢していようと思っていたけど……やっぱり無理だ。アネットさん、僕は君が好きだ! ぜひ、結婚を前提に、僕の恋人になってくれないかな!」
「へ……? え、えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?!?!?」
「前に僕が言ったことを覚えていないかな? 君を、将来僕が座る玉座の隣に座らせたい、と。あれは嘘じゃない。僕は奴隷として捕まって初めて出会ったあの時から君が好きだった。僕に毎日……このぼたん鍋を食べさせて欲しい」
エステルはしゃがみ込むと、俺の左手を取り……その甲にチュッと、キスをしてくる。
その咄嗟の行動に顔を真っ赤にさせてあたふたしていると、エステルは顔を上げ、フフッと微笑を浮かべた。
「君は本当に可愛い人だよ、アネットさん。今夜は僕のテントに来ないかな? 一緒に、夜通し、愛を語ろうじゃないか―――」
その時、エステルの首元に刀の切っ先が向けられる。
彼女の背後にいるのは……グレイレウスだった。
グレイレウスはエステルに鋭い目を向けると、怒気を含んだ口調で開口する。
「貴様……女だと思って油断していたが、まさかとんだナンパ野郎だったとはな。今のお前を見て、満月亭にいる年中発情野郎のことを思い出したぞ。以前から思っていたが……貴様と奴は少し、何処か似ているな」
その発言に、エステルは何故か―――一瞬、不快気に顔を強張らせた。
だがすぐにいつもの優し気な微笑に戻り、彼女は目を伏せ、両手を上げると、俺から離れる。
「その何処かの誰か、というのは……マイス・フレグガルトのことかな、グレイレウスくん」
「? 貴様……奴のことを知っているのか?」
「あの男と似ていると言われるのは少し、不愉快だね。いったいどこが似ていると言うんだい? 僕と彼は、見た目も中身も、欠片も似ていないと思うのだけれど?」
「……雰囲気、だな。常に飄々としていて、本性を表に出さない……嘘吐きの気配がする。そこが、特にお前と似ている」
「……」
エステルは振り返ると、グレイレウスに鋭い目を向ける。
だが、大きく息を吐き出し、すぐに疲れた表情を見せた。
「……すまない。空気を悪くしてしまったかな。少し……夜風に当たって来るとするよ。申し訳なかった」
そう口にして……エステルは夕飯の席を立ち、付近の森の中へと消えていくのだった。
第135話を読んでくださって、ありがとうございました。
前回のお話の捕捉をさせていただきます。
まず、グレイレウスとルナティエの間に恋愛感情はありません。
グレイレウスは、恋愛というものを知らない、剣が恋人の奴です笑
もし知るとしたら、アネットに対してだけだと思います。
オーク編、楽しんでいただけているかは不安ですが……あまり長引かせるとグダグダになりそうなので、早めに終了する予定です!!
ですので、お付き合いの程、よろしくお願いいたします!!




