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第133話 元剣聖のメイドのおっさん、神秘の秘境【大森林】へと足を踏み入れる。


「ついに着いた……。みんな、ここから先が、大森林の入り口だよ」


 そう言ってエステルは立ち止ると、背後にいる俺たちへと振り返り顔を見せる。


 俺はそんな彼女にコクリと頷くと、目の前に広がる異質な光景にゴクリと唾を飲み込んだ。


「これが……人類未踏の領域とされる、神秘の秘境―――大森林、ですか……」


 そこは、明らかに、先ほどまで居たフィアレンスの森とは異なった風景となっていた。


 背後にあるフィアレンスの森に生えている樹木は、せいぜい8メートルといった高さだったが……目の前に広がる木々たちはゆうに20メートルは越えている背丈となっていた。


 幹の周囲はざっと見た感じ、30メートルはありそうだ。


 大木の表面には無数の苔が生えており、木々の間には、草木が道を塞ぐようにして生い茂っている。


 まるで、古代の森をそのまま残したかのような様相だ。


 何千年も人の手が入っていないだろうことが、簡単に推測できる。


「―――しかし、師匠(せんせい)。不思議なものですね。見てください、まるで境界線が引かれているようですよ」


 そう言ってグレイレウスはキョロキョロと辺りを見渡した。


 境界線、か。確かにその通りだな。


 フィアレンスの森と大森林は、途中から線を引いたかのように、別世界のようになっていたのだ。


 後ろを振り返れば、そこにあるのは普通の森林風景―――フィアレンスの森。


 だが前を見れば、そこに広がっているのは巨大な大木が聳え立つ―――原始の森の姿。


 どこからが大森林で、どこからがフィアレンスの森なのかが、素人にだって見て分かる光景となっていた。


 こんなに分かりやすいものだとは、正直、俺も思ってはいなかったな。


 思わずその光景に、圧倒されてしまう。


「……さて。ぼんやりとしてはいられないよ。さっそく行くとしよう。ミレーナさん、先行してルート確認をしてもらっても良いかな?」


「え? うえぇぇぇ!? う、うちがですかぁ!?」


「ん? 何をそんなに驚く必要があるんだい? レンジャーである君は、いつも率先してルート確認をしているはずだろう?」


「そ、それはそうですがぁ……。こんな恐ろしい状況で、しかも、パルテトの村からではない、正規ルート以外からの大森林への進行は初めてのもので……ちょっと、あんまり、自信が無いと言うかぁ……」


「おい、ぴぎゃあ女、うだうだ言ってないでさっさと行け。こんなところで時間を無駄にしてルティカ・オーギュストハイムに見つかっては、元も子もないぞ」


「ぴぎゃう!? わ、分かりました!! 分かりましたから、剣の柄で私のお尻を突っついてこないでください!! マフラー変態男ぉ!!」


「誰が変態だ!! あと、けっして尻など突いてはおらん!! オレは貴様の背中を突っついたのだ!!」


 ミレーナは何処か不満そうな様子だったが、先行して大森林へと歩みを進めて行った。


 そんな彼女に続いて、エステル、俺、グレイレウス、ジェネディクトの順番で森の中へと進んで行く。


 大森林の中に入ると、辺りは一気に暗くなっていった。


 真っ暗というほどでもないが、まるで屋内にいるかのように、視界は少々見え辛い。


 その光景に驚いていると、前を歩いているミレーナは慣れた手つきですぐに鞄からランタンを取り出し、周囲を照らし始める。


 エステルも同様に、リュックからランタンを取り出した。


 俺はその光景を見つめた後、手にひらの上にある魔法を発動させる。


「遍まねく光の渦よ、聖なる加護で汝の眷属が征く道を明るく照らしたまえ―――【ホーリーライト】」


 詠唱を唱えた瞬間、俺の掌の上にポゥッと小さな光の球が浮かび上がる。


 これは、俺が聖騎士養成学校に入学する際に習得した、低五級の信仰系魔法の【ホーリーライト】だ。


 その効果は、半径2メートル程を明るく照らすことができるだけの、攻撃能力も治癒能力もないただの生活雑貨魔法。


 それ故に、今後、絶対に役に立つことはないだろうと思っていたのだが……意外なところで役に立ったな。


 まさかこの魔法に助けられる日がくるだなんて、思いもしなかった。


「へぇ? アネットさん、信仰系魔法が使えるんだね」


 そう言って、前方からエステルが声を掛けてくる。


 俺は手にひらの上に白い球を浮かべながら、彼女にニコリと微笑みを浮かべた。


「いえ、使えると言う程ではありませんよ。私が扱える信仰系魔法は、この【ホーリーライト】のみですから」


「そうなのかい? だったら、僕がこの旅の期間中に他の信仰系魔法を教えてあげても良いよ? 僕はこう見えても、治癒魔法や補助魔法は大の得意なんだ。逆に、戦うことに関しては大の苦手なのだけれどね」


「なるほど……エステルさんはサポートタイプの修道士(プリースト)、という感じなんですね」


「一応、この国の聖王の血を引いているからね。信仰系魔法の因子は通常の人よりも多く持っているんだよ」


 そう口にすると、エステルは何処か困ったように笑みを浮かべる。


 確かエステルは、王が手を付けたメイドの子供――庶子の出、だったな。


 その出生からして、やはり王家には何か想うところがあるのかもしれない。


「みなさん、ちょっと止まってくださいですぅ!」


 先行して五メートル先くらいを歩いていたミレーナが足を止め、こちらに振り返る。


 俺たちはそんな彼女にすぐに駆け寄り、声を掛けた。


「どうしたんですか、ミレーナさん? 魔物でもいましたか?」


「い、いえ、こ、これ……この足元に生えているキノコ、絶対に踏まないでくださいぃぃ」


「キノコ?」


 ミレーナの指さす方向に視線を向けると、そこには、斑点模様の付いた紫色のキノコが群生して生えている姿があった。


 ミレーナは背中にある矢筒から一本の矢を取り出すと、その矢でキノコを突いてみせる。


 すると、その瞬間。キノコの傘からブワァッと、ピンク色の粉が舞い出て来た。


 それを見て、ミレーナは肩をビクリと震わせ、ゴクリと唾を飲み込む。


「やっぱり、これ……ナイトメア・マッシュルームですぅぅ!! 何でこんな危険な原生菌生物が、この第一界域に生えているんですかぁぁぁ!! やっぱり、今の大森林、何かがおかしいですぅぅぅぅ!!!!!」


「ナイトメア・マッシュルーム? それはいったい何なんだい? ミレーナさん?」


「ナイトメア・マッシュルームは、触れたものに催眠効果のある粉を噴射して、眠らせ、その獲物に自分の菌糸を植え付け繁殖する恐ろキノコですぅぅぅ!! あっ……ほ、ほら、あれ! 見てください!!」


 ミレーナは立ち上がり、群生するキノコの群れの奥へと指を差し示す。


 その指の先へ視線を向けると、そこには……白骨化した魔物の死体の上に生える、無数のキノコの姿があった。


 その恐ろしい光景に、驚いてその場に立ち尽くしていると、ミレーナは怯えた表情をして再び開口した。


「本来であれば、あれは第8界域にしかいない、恐ろしいキノコなんですよぉ!! 奥にいる魔物が浅い領域にやってきたせいで、多分、魔物の身体に付着していた菌糸がこの辺に撒かれたんだと思いますぅぅぅ!!!! やばいですぅぅぅ!!!! 危険ですぅぅぅぅ!!!!!」


「なるほど、ね。確かに、今の大森林は通常とは状況が違うようだね」


 エステルはそう言って小さく息を吐くと、ミレーナの肩をポンと叩いた。


「キノコを燃やすという手もあるけれど……大森林で不用意にものを燃やすのは止めておいた方が良いだろう。火災になっても困るからね。だから、ここは迂回していくしかないね、ミレーナさん」


「え? か、帰るという選択肢は……?」


「残念ながらそれは無いよ」


「ですよねぇ……分かっていましたぁ……」


 あからさまに落ち込むミレーナ。そんな彼女を一瞥すると、エステルは振り返り、俺に声を掛けてくる。


「アネットさん、ロザレナさんの病に効くという薬草が生えている界域はどこなのかな?」


「第6界域と、書物には書かれていました」


「そうか。じゃあ、これを見てくれるかな」


 そう口にすると、エステルは俺に一枚の紙を見せてくる。


 それは、この大森林の地図のようなものだった。


 第1界域から、人類が到達したことのある領域、第11界域までの詳細な地形が描かれている。


 その紙を手に持ちながら、エステルは『パルテト』と書かれた入り口地点から東にある端の部分を指さし、口を開いた。


「ここが、僕たちが今いる場所だ。先ほどミレーナさんも言っていた通り、僕たちは正規のルートからは大分異なった道を歩んでいる。パルテトから大森林に入ると、第1~3界域までは、ある程度道が舗装されているらしいんだ。だから、迷うことはほぼほぼないのだけれど……横道から入った僕たちはそう簡単にはいかない」


「そうですね。できれば、途中から正規ルートに合流したいのですが……そう簡単にはいかなそうですね」


 地図を見る限り、俺たちが進む先には川があるようだ。


 その川の向こう側に正規ルートがあるのだが……そちら側に渡る手段は、地図を見る限りどこにもなさそうだ。


 どの程度の規模の川かも分からないし、先ほどのキノコのように、得体の知れない能力を持った生物がいる可能性もある。

 

 流石に泳いで渡るのは、無茶がすぎるだろうな。


「今はとりあえず……第2界域のある北へと向かって、ひたすらに歩いて行くしかなさそうですね……」


 俺のその言葉に、エステルは疲れたようにコクリと頷きを返した。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 ―――ハインライン・ロックベルト、87歳。


 22歳の時に剣神の座に就き、それ以来、その座を誰にも奪われたことはない王国最高齢の剣士。

 

 彼は元来、武の才能がある男ではなかった。


 魔法因子は殆ど無く、運動神経・動体視力共に弱く、加えて反射神経も良い方でもない。


 先々代剣聖アレスの道場に入門したが、幼少期は特に頭角を現すこともなく。


 日々、組手をしては同年代の子供に打ち負かされるという、惨めな毎日を送っていた。


 だが―――彼は、諦めるという言葉を知らなかった。


『才能が無いんだから、さっさと道場から出て行ったらどうだ』


『お前みたいな能無し、この道場にいるべきではないんだよ』


『何度挑もうが、何をどう努力しても無駄だ。才能というものは、産まれた時から決められているんだよ』


 そんな心無い言葉が、幼いハインラインに容赦なく飛んできた。


 けれどハインラインは誰に馬鹿にされようとも気に留めることなく、ただ無我夢中に剣を振り続け、ただひたすらに己を鍛え上げ続けていくのだった。


 人より劣っているのであれば、人より過酷な修練をすれば良いだけのこと。


 次の決闘で勝てなければ腕立て一万回、それでも駄目なら指立て二万回。


 彼は、何よりも挑戦することそのことに、楽しみを見出していた。


 どんなに打ちのめされ、馬鹿にされようとも、ハインラインは敗けた相手に何度も対決を申し込む。


 そしてその相手を乗り越えれば、次なる強者を探して挑み続ける。


 努力に終わりなどはない。剣士である以上、挑戦することに終わりはない。


 そうしてハインラインはいつの間にか、剣聖アレスの門下において最強の剣士へと変貌していった。


 だが……15歳の時、彼は、どんなに努力をしても到達できない大きな壁を知ることになる。


『あ? 何見てやがんだ、雑魚ども。ぶっ殺すぞ!! あぁ!?』


 突如、師アレスが連れて来た奈落の掃き溜めの鬼子―――アーノイック・ブルシュトローム。


 彼は、ハインラインより五つも年下だというのに、怪物じみた強さを持っていた。


 何度挑んでも底が知れない、尋常ではないスピードで成長していくアーノイック。


 いつの間にか、ハインラインにとって、アーノイックを超えることこそが、自身の生涯を賭けた夢へと変わっていった。


『アーノイック! 俺は、この生涯を賭してお前を必ず超えてやるぞ!! お前と言う天才を降し、努力に不可能はないということを証明してやるのだ!!』


 一万二千回目の決闘で敗北した、25歳になったその時。


 ハインラインはボロボロになりながら膝を付き、目の前に居るアーノイックにそう宣言をした。


 そんな彼に対して、アーノイックは困ったようにため息を吐き、口を開く。


『ハインライン。別に力があるからって、幸せなことばかりじゃねぇんだぞ。知っているとは思うが、俺は城下に行けば化け物だの怪物だのと罵られるんだ。人々を守る剣聖であるこの俺がだぜ? 笑っちまうだろ」


『……』


『だから……だから、あまり強すぎるのも困りものなんだよ。例えお前が俺を超えることができたとしても、その時は、今度はお前が化け物と呼ばれることに―――』


『何を言っている、アーノイック。お前は人間だ。化け物が、そんないちいち感傷に浸るわけがあるか』


『ハインライン……?』


 紅い夕陽が照らす土手の上で、ハインラインはよろめきながら立ち上がる。


 そしてアーノイックの胸倉を掴み、大声で叫び声を上げた。


『お前が誰に何と呼ばれようと、お前は俺の弟弟子であり、俺の生涯の好敵手だ!! 化け物だと? そんなくだらない呼び方でいちいち剣を鈍らせるんじゃない!! そんなにその呼び方が嫌なら、この俺がお前がただの人間であることを、いずれ一刀のもとに証明してやろう!! 俺はまごうことなき凡人だ!! 凡人がお前を降せば、結果的にお前は化け物では無くなる!!!! 民どもの目が間違いだったということの証明に繋がる!!!!』


『……証明って……今度はお前が化け物と呼ばれることになるかもしれないだろ。それでも良いのか?』


『一向に構わん。むしろ、そうなれば今度はお前が俺を追いかける番だ、アーノイック。俺とお前は生涯、剣を通して頂きへと向かって共に歩いて行く運命(さだめ)にある。だから……だから俺がお前に勝つまで、絶対に死ぬんじゃないぞ。俺たちは老人になっても生涯、共に戦い続けるのだ、弟よ』


『何だよ、それ。お前は本当に馬鹿な奴だな。でも……そうだな。この俺……アーノイック・ブルシュトロームに勝つ奴がいたとしたら、それはお前しかいないだろうな。―――努力の鬼、ハインライン・ロックベルト』


 そう言ってアーノイックは笑みを浮かべると、空に浮かぶ夕陽を仰ぎ見たのだった―――。






「こんな時に昔を思い出すとは……ワシも歳かの」


 そう言ってハインラインは目を開けると、10メートル先に居るオークへと不敵な笑みを浮かべる。


 そして、眼前で剣を横にして持ち、柄に手を当てると―――静かに口を開いた。


「―――目覚めよ、【蒼焔剣】」


 そう言葉を呟いた後、ハインラインは鞘から剣をゆっくりと引き抜く。


 するとその瞬間。剣の刀身にブワッと青白い炎が浮かび上がり、刀全体を炎が覆い包み込んでいった。


 蒼い炎が宿る剣を右手に持ちながら、ハインラインは好々爺とした笑みを浮かべる。


 そんなハインラインに対して、オークは背中に背負っている無数の剣の中から大剣を手に取ると、それを抜き、剣を中段に構える。


 そして―――ハインラインに向けて、声を放った。


「……老人。見たところ貴様の剣に宿るその炎、魔法によるものではないな?」


「ほう? 驚いたな。そんな化け物の(なり)をして人の言葉を喋れるのか、お主。それも、ワシの剣の原理を即座に見破るとは……カッカッカッ!! 面白いのぉう!! 何も因縁がなければ少し対話を試みたいところじゃが―――我が弟子ルイン・ウッドの剣を使っている以上、そうも言ってられんな」

 

 ハインラインは腰を低くすると、切先を相手の顔に向けるようにして―――雄牛の構えを取る。


 そして、目をカッと見開くと、ハインラインは不気味な笑い声を上げながら地面を蹴り上げた。


「ヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!!!!!」


 一瞬にして間合いを詰めて来た老人に対して、オークは咄嗟に大剣を盾にして、刀による一撃を防ぐ。


 だが―――。


「ぬぅっ!?」


 刀が触れた部分の大剣にボウッと火が灯り、瞬く間に蒼い炎がオークの剣を覆って行く。


 その炎に嫌な気配を感じたオークは即座に大剣を地面へと捨て、すぐに背中にある別の剣を手に取った。


 しかし……そんな隙を、剣神、ハインライン・ロックベルトが見逃すことはなかった。


「危機感知能力は一級品じゃが……ワシがそれを見逃すとでも思うたか?」


 ハインラインは前へと一歩踏み出すと、オークの首に向かって剣を横薙ぎに振る。


 だがそれを、オークはしゃがむことによって、寸前で回避して見せた。


 けれど、ハインラインの猛追は止まらない。


 袈裟斬り、突き、右薙、逆袈裟、右切り上げ、突き。


 蒼い炎の軌跡を描きながら、ハインラインは剣を神速で振って行く。


 当初こそ、その剣の速さに何とかついていけていたオークであったが、徐々にスピードが上がって行くその炎の剣に対処が追い付かず、ついには右手の甲を剣で斬られてしまった。


「ぐぬぅぅぅ!!!!!」


 剣が一瞬触れただけの、単なるかすり傷。


 だが、そのかすり傷からボウッと、蒼い炎が浮かび浮かび上がった。


 その炎は瞬く間に手から腕を飲み込み、上へと登って行くと、オークの肩までをも浸食しようとしていた。


 オークは左手に持っていた剣を使い、即座に自身の右腕を肩から斬り落とす。


 ボトッと地面に落ちた右腕は一瞬にして炎に包まれ――炭化していった。


 その光景を見つめた後、オークはゼェゼェと息を乱し……「うぐっ」と力むと、蛇人(ナーガ)から

奪った加護【原初の蛇】を使用し、失った右腕を再生していった。


 斬ったはずの肩から蜥蜴の尻尾のように生えて来た右腕の姿を見て、ハインラインは目を丸くさせる。


「何とも珍妙な力を持っておるのう、お主……。失った部位を即座に再生する能力、か。ふむ。厄介なこと極まりないな」


「はぁはぁ……。老人、貴様のその力は、いったい何なのだ……!? 察するに、刀身に魔法属性の効果を宿す、魔法剣と呼ばれる代物とは全くの別物だな……っ!! それは、単なる魔法の炎が宿った剣ではない!!」


「ほう? 今の一瞬でそんなことまで理解できたのか。その剣技を見破る才覚は、我が弟弟子を彷彿とさせるものじゃのう。じゃが―――――ここで終いじゃ。【狐火】」


 ハインラインは、ヒュンと剣で空を斬る。


 すると周囲一帯に、無数の蒼い火の玉が浮かび上がった。


 その光景を見たオークは、ハインラインへと驚愕の目を向ける。


 その視線を受けたハインラインはというと、髭を撫で、つまらなさそうにため息を溢した。


「お主の程度ももう知れた。災厄級の魔物と聞いたからどれほどのものかと期待しておったのじゃが……蓋を開けて見ればこんなものか。お主程度の実力なら、幼少の頃のアーノイックの方が強かったぞ。実力的には剣神の一歩手前、といったところじゃな。くだらぬ。こんなものならば、ルティカやヴィンセントの奴にくれてやった方が良かったわい」


 そう言ってハインラインは刀をオークへ向けてまっすぐと構えると、静かに口を開いた。


「【狐火】よ、喰らい尽くせ」


 その言葉と共に、空中に浮いた火の玉は一斉に―――オークへと襲い掛かったのであった。

第133話を読んでくださって、ありがとうございました!

ハインラインによってオークが追い詰められていますが……まだ、オーク編は終わりではありません笑

よろしければ、いいね、感想、評価、ブクマ等、お願い致します! 励みになります!

いつも読んでくださって、ありがとうございます!!

また次回も読んでくださると嬉しいです!!


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[良い点] まず、ハイラインがきたおかげて子供達が助かったのが良かった、ルティカでは間に合わなかったから実力の差が知れたよな ジェネディグトも今のアネットと対峙して子供の頃と比べて数段強くなっているの…
[一言] 強い老人ってめっちゃかっこいいですよね!! こんなにあっさりやられるとは思いませんがどうなるのか・・・気になります!(^^)! アーノイックとハイラインの組合わせ最高です!お互いをすごく信…
[良い点] お~ミレーナ詳しいじゃないか、その調子でしっかり働いてくれよ❤ アネットとジェネディクトが居るんだからそこが一番安全なんだからね、裏切りが発生しなければ [一言] ハインライン、老いて益々…
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