第121話 元剣聖のメイドのおっさん、冒険者パーティーを組む。
「師匠、お待ちしておりました」
試験会場の中庭から冒険者ギルドへと戻ると、グレイレウスがこちらへとすぐに近寄って来た。
グレイレウスは俺の前に立つと、微笑を浮かべ、再度、声を掛けてくる。
「試験の結果はどうでしたか、師匠。等級ランクは如何ほどに調整を?」
「お前が無事に銀等級より上のミスリルにいけたからな。当初の予定通り、最下級のブロンズだよ」
そう言って手に持っている証明書を見せると、グレイレウスは悲し気に眉を八の字にさせた。
「……そう、ですか。仕方のないこととはいえ、何だか複雑ですね。偉大なるアネット師匠が最下級冒険者に認定されるというのは……どうにもモヤモヤします。師匠の本来の実力であれば、最上級であるフレイダイヤ等級でもおかしくないというのに」
「別に、他人の評価なんざ関係ねぇよ。それに、俺の目的は冒険者稼業で成功を収めることじゃなく、ロザレナお嬢様の病に効く薬草を採取することだからな。等級なんざ端からどうでも良い話さ」
「他人の評価など、関係ない、ですか……」
そう口にして、グレイレウスはポカンと驚いたような表情を浮かべる。
そして、目をキラキラとさせると、グレイレウスは突如床に片膝を付き、こちらに深く頭を下げてきた。
「やはり、アネット師匠は素晴らしい御方です!! 剣の実力だけでなく、人としての在り方そのものが、真の強者として相応しい器だと思います……!! 貴方様を師に選んで、本当に良かったと、改めて思いました!!」
「なっ……えぇ……?」
その突然の行為に面食らっていると、グレイレウスは顔を上げ、何故かこちらに潤んだ瞳を見せてくる。
「剣の世界は、称号や等級などでランク付けされることが多いですが……師匠は、誰かが決めたその枠組みで一喜一憂することなど、くだらないことだと、そう言いたいのですねっ!! 己の価値を決めるのは、己自身だと……その高潔な在り方に、このグレイレウス、酷く感銘を受けました!!」
「いや……あの、さっきのは、そこまで考えて言った言葉じゃねぇぞ? ただ単純に、ロザレナを救うことが第一目的であって、そもそも俺は冒険者稼業に興味が無いから、等級に興味がないってだけの話でだな……」
「ご謙遜を!! 師匠の言動全てが、剣士の頂へと繋がっていることを、オレは既に知っています!! 師匠の料理の包丁捌きを学んだおかげで、オレ、以前よりも闘気の数値が上がっているんですよ!! さっきの試験だって、20くらい上がっていました!! これも、師匠の料理の動きを見て学んだおかげです!!」
「……絶対に違うと思うぞ? 俺は、普通に料理しているだけだぞ? 言っておくが、料理の腕と剣の腕はまったく関係ないからな? 前から思っていたけど、お前、そこ勘違いしているからな?」
「またまた、御冗談を!! ……はっ! なるほど、これはそういうことか……師匠は、このオレに安易に答えを与えずに、自分で料理と剣の動作の秘密を模索していけと……そういうことを言いたいのですね!! 流石です!!」
「…………えぇ……?」
何か……こいつ、俺の言動全てに意味があるものだと、勘違いし始めてやしないか……?
以前から謎に俺のことを崇拝しているなとは思ったが、何か、ちょっと怖くなってきたぞ……?
若干、俺を崇拝していたリトリシアに似てきている気がする……俺の弟子って何でこう、俺を必要以上に持ち上げて、暴走気味になる奴が多いのだろうか……。
お嬢様だけだな、弟子の中で比較的まともなのは。……いや、彼女もまぁ、問題がゼロというわけではないのだが。
俺は「ふぅ」と大きくため息を吐いた後、踵を返し、酒場の奥にあるカウンターへと歩みを進める。
そして、振り返らずに、背後にいる謎のテンションの弟子へと言葉を放った。
「……とりあえず、証明書と等級プレートを交換してもらってくるとするか。行くぞ、グレイ」
「はっ!! どこまでもお供致します!!」
先ほどよりもどこか上機嫌のグレイレウスの様子に呆れたため息を吐きつつも、俺はそのままカウンターへと向かって行った。
「―――採用試験合格、おめでとうございます。こちら、等級プレートでございます」
カウンターに赴き、受付嬢に証明書を渡すと、俺たちの前に15cm程の大きさの二つのプレートが置かれた。
俺の前には、銅色に輝く、銅のプレートがひとつ。
グレイレウスの前には、薄水色に輝く、ミスリルのプレートがひとつ。
俺たちはそれぞれのプレートを手に取り、それをまじまじと至近距離で観察してみる。
すると受付嬢は微笑を浮かべ、再度、声を掛けてきた。
「改めて説明させていただきますが、冒険者は、実力に応じてその階級が個人、またはパーティーによって異なります。階級が低い順で、最下級クラスが銅・鉄等級。中級クラスが銀・金等級。上級クラスがミスリル・アダマンチウム等級。そして、英雄の領域とされる最上級冒険者が、フレイダイヤ等級――となります」
冒険者の世界は【剣聖】や【剣神】などの剣の称号とは違い、単純に強者だからといって、ランクが上がるわけでは無い。
確かに、強力な魔物を討伐して実績を上げていけば手っ取り早く昇進することは可能だろうが、彼ら冒険者は魔物を狩るだけではなく、他にも、未知の領域を調査する探索者としての仕事もある。
いくら他を凌駕する力を持っていたとしても、方向音痴やサバイバル術がない奴に、冒険者は務まらないだろう。
故に、パーティとして個々を補い合う完成度の高いチームこそが、より、上位の冒険者へと成り上がることができるのだ。
「―――――グレイレウス様、アネット様。これより貴方様方は、聖グレクシア王国の冒険者となります。どうか、人類の発展のために、ご尽力してくださいませ」
そう口にして、受付嬢は深く頭を下げる。
俺とグレイレウスはそんな受付嬢に会釈を返した後、カウンターを離れた。
「……さて。予定通り、無事に冒険者になることができたな」
「そうですね、師匠。では、これからさっそく大森林に向かわれるのですか?」
「そうしたいところだが……前にも言った通り、俺たち二人で広大な大森林を探索しても、ロザレナの病を治す【ラパナ草】を見つけることは難しいだろう。できればどこかのパーティーに同行させてもらいたいところだ」
「師匠がいれば、大森林の攻略など、簡単だと思うのですが?」
「馬鹿野郎。職業的に言えば、俺はただの剣士だ。野営の知識も無ければ、フィールドワークの技術もない。加えて、薬草が生えている場所もまるで分からん。分かるのは、ブルーノ先生に貰った書物に書かれていた【ラパナ草】の古い絵だけだ。いくら剣の腕があっても、これじゃあ、大森林の探索も徒労に終わるだけだろう」
「……そうですかね? 師匠に不可能なことがあるなど、オレには想像も付きませんが」
「お前は……ただのメイドである俺をいったい何だと思ってるんだ……。俺にできるのは剣を振ることと、炊事洗濯、あとは料理くらいのもんだ。それ以外の能力は人並みだ」
「もっとたくさんありますよ。まず、師匠は誰よりも頭が良い。あとは、人を魅了するカリスマ力がある。あとは―――む!」
突如、グレイレウスが俺の前に出て、腰の剣に手を当てた。
彼が鋭く睨みつける先。そこにいたのは、先ほど採用試験会場で出会ったエステルとジェネディクトだった。
エステルはニコリと柔和な笑みを浮かべると、ジェネディクトを連れて、こちらに近寄って来る。
「良かった。先に行ってしまったから、もう帰ってしまったかと思ったよ、アネットさん」
「エステ――いえ、グライスさん。何か私にご用でしょうか?」
敵意剥きだしのグレイレウスを片手で制しながら前に出て、エステルへとそう声を掛ける。
エステルはチラリとグレイレウスを一瞥した後、再び俺へと視線を向けて来た。
「少し、僕と話をしないかい? 先ほど、向こうでアンナさんたちを見かけてね。久しぶりに、君たちと旧交を深めたいと、そう思ったんだ。……そうだ、ロザレナさんもここに呼んではどうかな? 幼馴染同士で再会を祝すというのも、悪くないんじゃないのかな」
「ロザレナお嬢様は残念ながら、ここへは来られません。我が主人は、今、病に伏していますので」
「病……?」
驚いたように目をパチクリとさせるエステル。
俺はそんな彼女から視線を外し、エステルの背後にいるジェネディクトへと目を向けた。
「アンナさんたちとお話するのは別に構いませんが……グライスさん、まさかその男を会合の場に連れていくつもりですか? そこにいる男は、アンナさんたちやロザレナお嬢様を攫った、奴隷商団の元締めです。彼がいては、みなさん、旧交を深めるどころではないと思われますが」
「勿論、彼を連れていくつもりはないさ。―――ジェネディクト。少し、席を外してくれるかな?」
その言葉に、ジェネディクトは何も答えず。
奴はそのまま肩に掛けた漆黒のコートを翻し、ギルドの外へと出て行った。
そんな彼の姿を静かに見送ると、エステルはこちらに微笑を向けてくる。
「アネットさんは何やら、僕のことを警戒している様子だけど……僕は、君に何かをするつもりは一切無いよ。むしろ、君に動かれて困るのは僕の方だからね。君は謂わば、一人で戦局を動かし、策略家の脚本を破壊するトリックスターだ。アネットさんがメイドとして大人しくしていてくれた方が、僕には都合が良い」
「……貴方がこの先何をしようが、私には関係のないことです。ですが、私の周りの者に手を出した、その時は―――容赦なく貴方を叩き潰します。ですから、ジェネディクトとギルフォードの手綱はしっかりと握っておいてください。良いですね?」
「……肝に銘じておくとするよ。どんな戦略を前にしても、圧倒的な武力の前では、簡単に盤上は覆ってしまうものだ。僕としても、君に全力で暴れられては、手の付けようがない」
そう口にして肩を竦めるエステル。
そして踵を返すと、肩越しにこちらに顔を向けてくる。
「それじゃあ、行こうか」
「……はい」
俺は、エステルの横顔をジッと静かに見つめた後、そのまま彼女の背後をついて行った。
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先ほどのテーブル席に向かうと、そこにはまだ、アンナ、ミレーナ、ギークの三人の姿があった。
遠目で見て、何やら、アンナとミレーナがもめている様子が見て取れる。
その光景に首を傾げていると、俺の姿に気が付いたアンナが席を立ち、声を掛けてきた。
「あっ、アネットちゃん!」
こちらに駆け寄って来ると、アンナは俺に申し訳なさそうな顔を向けてくる。
「さっきはごめんね、アネットちゃん。採用試験、どうだった?」
「無事、合格できましたよ。これで晴れて、銅等級冒険者です」
「銅等級冒険者? え? アネットちゃんが?」
「そうですが……何か、おかしなことでも?」
「いや、さっき、近くのテーブル席に座る冒険者たちが、採用試験で最上級のフレイダイヤ級冒険者が出たって話をしていたから……てっきりアネットちゃんのことだと思ったんだけど?」
「それは……恐らく、別の方のことですね」
まぁ、十中八九、ジェネディクトの野郎だな。
そう、先ほど去って行った長髪オカマ野郎のことを考えていると、隣に立っていたエステルが楽しそうに笑みを溢した。
「フフフッ。久しぶりだね、アンナさん。僕のこと、覚えているかな?」
「え? 誰、この人? アネットちゃんのお友達?」
キョトンとした顔を俺に向けてくるアンナ。
俺はそんな彼女に対して、クスリと笑みを返す。
「この方は、みなさんもよくご存知の方ですよ」
「え?」
「……こうして君たちと再会するのは、五年ぶりかな。アンナさん、ミレーナさん、ギークくん。本当に、懐かしい顔ばかりだ」
「五年ぶり? えっと……?」
「分からないのも無理はない、か。僕は、君たちと一緒に奴隷商団に捕まっていた―――グライスだよ」
「「「え……? えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっっ!?!? グライス!?!?」」」
目の前にいるアンナだけではなく、テーブル席に座るミレーナとギークも同時に驚きの声を発する。
そんな彼女たちの姿に、グライスは過去を懐かしむようにして、目を細めた。
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その後、俺たち六人――エステル、アンナ、ギーク、ミレーナ、グレイレウスは、丸いテーブル席に座った。
エステルは、すぐに自分の素性を、アンナ、ミレーナ、ギークへと話していった。
どうやら王子であることは話さない様子だったが―――まぁ、この場では仕方のないことだろう。
衆目の前で王族であることを明かせば、何が起こるかは分かったものではないからな。
この状況下での彼女のその選択は、妥当だと思える。
「―――――嘘でしょっ!? グライス、女の子だったの!? 本当に!?」
エステルが女性だったことに驚き、テーブルにバンと手を叩きつけて、目を見開いて驚くアンナ。
そんな彼女に対してエステルは微笑みを浮かべると、手に持っていたティーカップを優雅に揺らした。
「そうだよ。とは言っても、身体は女性なだけであって、中身は男性なのだけれどね。だから、昔と変わらずに男性として接してもらえれば嬉しいかな」
「えぇぇ~~? ってことは、今も男装してるんだ? ……確かに、よく見れば中性的で、綺麗な顔立ちしてるかも……」
「フフフッ、ありがとう。アンナさんも、とても綺麗になったよね」
「え? な……何か照れるなー」
頬をポリポリと掻き、恥ずかしそうに笑みを浮かべるアンナ。
エステルはアンナに微笑を向けると、目を伏せ、感慨深そうに息を吐いた。
「五年、か。長いようで短かったような気がするね。この五年で、みんな、すごく大人になったものだよ」
「そうだねー。こうしてあの時のみんなが、冒険者ギルドで集まるなんてすごい偶然だよね」
「あぁ。この偶然には月の女神様に感謝しなければならないな。こうしてまた、奴隷商団に捕まっていた幼馴染全員が揃うことができて、僕は今、とても嬉し―――いや、全員じゃない、か」
そう口にして、エステルはこちらにチラリと視線を向けてくる。
その視線にどう答えようか迷っていると、アンナが、悲しそうな表情をして眉を八の字にさせた。
「そうだよ……ロザレナちゃんは、病気のせいで、この場にはいないんだよ……」
そう小さく呟いた後、アンナはギロリとミレーナを鋭く睨みつける。
ミレーナはというと、肩をビクリと震わせながらも、引き攣った笑みを浮かべていた。
「えへ、えへえへ……か、可哀想ですねぇ、ロザレナさん。は、早く治ると良いですねぇ~~」
「ミレーナ! 友達が病気で苦しんでいるんだよ!! 助けてあげようよ!! 私、やっぱり納得できないよ!!」
「い、嫌ですぅぅぅぅぅぅ!! 今は、大森林には極力近づくなと、ギルド長が言っていたじゃないですかぁ!! 私、こんな非常時に、危険なことはしたくないんですぅぅぅ!! 安全地帯でぬくぬくと過ごしていたいんですぅぅぅぅ!!!!」
「薄情者!! 何でそんなに大森林に行くのを嫌がるのさ!! 別に、剣神さまたちの予想が外れて、大した異変は起こっていないかもしれないじゃない!! よく分からない注意喚起なんて、前にもあったことでしょ!? 気にする必要ないって!!」
「嫌ですぅぅぅ!! 断固として、拒否しますぅぅぅぅ!!!!」
そうか。彼女たちは末端の冒険者のため、大森林に災厄級の魔物が発生したことを知らないのか。
先ほど、採用試験の待合室で、聖王は緘口令を敷いたとエステルは言っていたが――なるほど、これが、その結果か。
納得気に頷いていると、エステルがアンナたちに疑問の声を投げる。
「? さっき、アネットさんも、ロザレナさんが病に罹ったとか言っていたけれど……それは、いったいどういうことなのかな?」
「あっ、そっか。グライス、知らないんだ。……ロザレナちゃん、現代の医療技術では治せない、古代の病気に罹っちゃったんだって。それで、アネットちゃんは古い文献を頼りに、病に効く薬草が生える大森林に行こうとしているの」
「なるほど、それでアネットさんは冒険者に……」
「でね、私とギークは、幼い頃に助けて貰った彼女に少しでも恩返しするために、アネットちゃんの旅に同行しようと思ったんだけど……リーダーのミレーナが何か、頑なに反対しているの。絶対に大森林には行かない、絶対に拷問メイドとは関わりたくない、って。そんなふざけたことを言っているのよ?」
不機嫌そうな顔でミレーナを見つめるアンナ。だが、ミレーナはどこ吹く風で、口笛を吹いている。
そんな二人の顔を交互に見つめた後、エステルは、ミレーナへと静かに声を掛けた。
「……君は、思ったよりも中々に優秀な冒険者かもしれないね、ミレーナさん。君子危うきに近寄らず。危険なものには極力手を出さない。目の前の敵を踏破する戦士ではなく、未知の領域を探索する冒険者としては、君は実に優秀な人材だと言えるだろう」
「えへ、えへへへぇ、ありがとうございますぅ。まぁ、それほどでもあるかもしれませんねぇ~えへへぇ~」
「そんな優秀な君ならば……今が、絶好の稼ぎ時ということも理解しているのだろう?」
「へ……?」
驚き、目をまん丸とさせるミレーナ。
そんな彼女の様子の変化に、エステルは銀の瞳をキラリと光らせる。
「おや? まさか、気付いていなかったのかい? 現状を考えれば、他の冒険者たちは大森林に足を運ばない。つまり現在、ライバルが少なく、大森林内の様々なアイテムが自由に取り放題な状況とも言える。第1~3界域の浅い領域であれば、強力な魔物も出現せずに、安全に薬草などが採取し放題だ。優秀なリーダーである君ならば……真っ先にそのことに気が付くと思ったのだけれど? まさか君は、気が付けていなかったのかな?」
「も、もももも、勿論! う、うちは、最初から気付いていましたよぉ!! そ、そうですねぇ~。入り口付近の浅い界域であれば、強力な魔物も出ない……剣神さまたちが危険視しそうな魔物は、きっと、深層界域にいるでしょうからねぇ……ぐふふふ、た、確かに、稼ぎ時ですぅ!!」
下種い笑みを浮かべて、ぐふふと笑い声を溢すミレーナ。
……この女、マジで殴りたくなるような性格をしていやがるな。
ルナティエは勝利に拘るために姑息で卑怯な手を使うが、こいつは何というか、純粋に……クズ女だわ。
最初はぴぎゃあぴぎゃあ言う人が苦手の少女かと思ったが、なかなかに、自己保身と損得勘定で動く奴だ。
「……ミレーナ、もしかしたら、私たちを心配して反対しているかと思ったのに……流石にそれはないわー」
アンナがドン引きした様子で、そう、言葉を発する。
俺以外のその場にいる全員も、皆、ミレーナのその言動に引いている様子だった。
そんな全員の視線を受けて、ミレーナは「ごほん」とあからさまに咳払いをする。
「……拷問メイド……じゃなかった、アネットさん。と、特別に、うちのパーティー『宵の明星』が、貴方の大森林探索に同行してさしあげましょう。ベテランの先輩がついていくことに、泣いて喜ぶと良いですぅ。この優秀な冒険者であるミレーナさんを、崇め奉ると良いですぅ!! えへえへぇ」
「おい、貴様!! 何だその上から目線は!! 我が師を愚弄する気なら許さんぞ!! 斬り殺すぞ!!」
「ぴぎゃあああああぁぁぁっ!!!! 変態マフラー男が、また、うちに向けて剣を抜こうとしていますぅぅぅぅ!!!! 恐ろしいですぅぅぅぅ!!!!」
何か、まぁ、よく分からないが……とりあえず、ミレーナたちが、俺の大森林探索に同行することになった……のかな?
果たしてこれで良かったのか、悪かったのか……。
まぁ、現段階で理解したことは、ひとつだけ。
ミレーナは、信頼には値しない、ということだな。
第121話を読んでくださって、ありがとうございました!
みなさまに、ご報告があります!
本日、オーバーラップ文庫創刊10周年特番にて、剣聖メイドの書籍版カバーイラストを公開してもらいました!
何と、アネットがABEMA様に出演です! ものすごく感動しました!!
6日間、見逃し視聴できますので、見て頂けたら幸いです!
カバーイラストや書籍の情報に関しましては、X(旧Twitter)の方で逐一発信していこうと思いますので、ぜひ、チェックの方をお願いいたします! →@mikatukineko
azuタロウ先生の描く美しいアネットを、ぜひ、みなさまにも見て貰いたいです!
投稿、遅れてしまい申し訳ございません!
今やっている作業がもう少しで一区切り付きそうなので、近いうちに、再び毎日投稿(できる限りですが笑)を再開致します!
書籍版発売日の11月25日まで全力疾走できたら良いなと考えていますので、お付き合いいただければと思います!
また次回も読んでくださると、嬉しいです!
三日月猫でした! では、また!




