98. 夏の浜辺の戦い (12)
更新遅いよ!なにやってんの!
……どうやらシールドはユウが出したらしい。いや、オレの謎パワーまで突破してくるんかい……なんつー奴だ……。
で、今は女子から何故かユウに身柄を引き渡され、抱きしめられている。なぜ渡した……!
「ええと、Bクラスのユウさん……っすよね?助かったよ、ありがとう」
「ううん……居てもたってもいられなかったから」
「で、俺達もうここ出てもいい感じですかね……?」
「うん、外の奴らはほとんど片付けたよ。シールドもまだかなり持つはずだから、一度外へ出て」
「おいユウはにゃせ」「ダメ」
「……えーと、とりあえず皆持ち物と、散らばった服を集めて出ようか」
「そうだなー、俺の服と荷物どこいったー?」
「だからはにゃせ」「ダメ」
「えと、マオちゃんの服はこっちで回収しとくね?ご、ごゆっくり?」
「いや自分でひろうから。だからはにゃ」「ダメ」
……さっきからオレにだけ全く聞く耳を持ってないんですが。っていうか服!このまま行ったら結局外の全員に水着姿公開だろうが!
「うがーーー!!!HA☆NYA☆SE!!!」
「マオちゃん」
「にゃんだよ!」
オレが少しキレ気味に返事をしたところでユウは少し黙ってぽつりとつぶやいた。
「……心配、だった」
「う、む?」
え、何いきなりしおらしくなって……。体を反らせて見上げてみると、すごく、深刻そうな顔で抱き着いているのが分かる。
「ずっと助けようとしてくれてたんだよ、マオちゃん」
「うん、あの凄い水の渦を突破してくるくらいだもの。本当に心配してたんじゃないかな」
オレが納得いかんという顔をしていたのを察してか、向こうで荷物を集めながら遠巻きに見ていたクラスメイト達が気を遣った感じに話しかけてきた。
……いや、別に頼んでないというか、そもそもコイツが勝手に突っ込んできたというか……オレはコイツのライバルであってだね?
…………むう、しょうがねーなー……。
「あんがと」
「うん」
ポンポンとオレの体を捕まえている腕を優しく叩くと、ユウは満足したのかゆっくりと下した。まったくコイツは。妙に子供っぽい所があるんだから……。
「……ご褒美」
「あん?」
「ごほうび!折角、海来たのにマオちゃんたら全然構ってくれない!」
「えぇー……」
十分抱きしめられたし、今も撫でくり回されてるし、もうよくないっすか……。なんか、ここぞとばかりに駄々をこねられている。
……まぁ、確かにずっとクラスの連中と行動してたからほとんどユウは見かけなかったけども、犬かお前は!
「……にゃにがほしいのサ」
「マオちゃんからハグして」
そういってユウはぱっと両手を広げている。いや体格差……男子のままだったら抱くこともできたろうけど、今だとどちらかというと抱きつく感じになるって……。
ていうか、まだクラスの連中が見てるし恥ずかしい。それも複数人。おいコラ固唾飲み込んでんじゃないよソコ!向こうのリジェに至ってはなんか小声で「……せっ……せっ」って呟いていてちょっと怖い!
「……ん!」
少しだけ頬を膨らませてもう一度ユウがアピールしている。
う、むむ…………あーもー!!
「ほら!よく!がんばりました!!」
オレはユウの膝元辺りにぴたっと抱きついて、ヤケクソ気味に声をあげた。
……。
…………。
「おい、にゃんかいえよ」
あまりに長い時間の沈黙に耐え切れずに、真っ赤になった顔で上を向くと……目、閉じてフリーズしていらっしゃる。おいどうすんだこの空気。なんか周りも視線を送りつつも黙りこくっていて、イカの浄化される音しか聞こえないんだが。
「……お……おしまいおしまいおしまーい!オレかえる!」
……も、もう知らん!切り替えていこうそうしよう!オレは赤らんでしまった顔に自分の髪を少しだけ被せて見えないようにしながら、大急ぎでべりっとユウから離れた。
「…………マオちゃんっっっ!」
「んにゃあ!?」
そこにすかさず後ろから抱き上げられ、ぎゅーっと強く抱きしめられる。結局そっちから来るんじゃねーか!
「ふふ、一旦戻らなきゃ。また後でねマオちゃん!」
「え?あ、ちょ……」
あ、荒らすだけ荒らしてルンルンで帰っていきやがった……。な、なんだったんだよもう……。
こんな事をやっている間に、渦は大分勢いを無くし、空の大部分が見えている。この調子ならあと数分くらいでなくなりそうだ。
「はーあ……もー……つかれた」
オレは落ちてくしゃくしゃになった上着を拾ってはぁとため息をついた。んー……うわ、ぐしょぐしょ……これ着るのはちょっと嫌かも……。
仕方がないからオレは濡れた服を少しだけぎゅっと絞ってから、肩にだけ羽織って、シールドをくぐった。あれだけうようよしていたイカももう姿が見えない。本当に討滅が終わったのだろう。
「いだっ!?あ、魔核……」
何か踏んずけたと思ったら、どうやらイカの魔核らしい。丸っこい形をしたものが大半だけれど、たまに尖ったのもあるから、歩くときは注意しないと……。
にしても、ここにばかり散乱しているようで一面が紫色だ。これってひょっとしてひょっとしなくても、校長のご褒美はオレたちのものなのでは……?
「ま、マオちゃん!上!」
「ほぇ?」
オレが地面をしげしげと見ながら考え事をしていると、後ろから声が上がった。咄嗟に見上げると……なんか、こう、キモイ何か……がー……。
「んにゃあ!?」
ってぇ!?まだ残ってたのかよイカァ!!
「ちょぁ!?ぬるぬるでっ……剣!あ、や!」
短剣持てない!はぅ!?ど、どこに入り込んで!!?こ、この!ぬるぬるで手でも振りほどけない!!
どんどんとぬるぬるが体中に広がってっ……ふぎゃっ!?た、立てない?!
「……か、会員!集合!!!」
オレがイカに悪戦苦闘していた所に、後ろからリジェが大声で叫ぶと、四方八方から誰かが集まってきた。そして、すぐさま張り付いたイカの額を剣でぶっ刺してくれた。
イカは一回うねうねと大きく動いたかと思うと、すぐさま動かなくなり、小さな魔核となって消えていった。
けどもー……。
「う、うえぇぇ……ぬるぬる……」
うぇぇ、結局こうなるのかよぉ……髪までぬるぬる、今すぐにお風呂入りたい…………はっ。なんか……視線が……。
気が付いたら、色んな人から見られているようで、そこには先程と同じような静寂が漂っている。
どうやら、救助にきた連中とは別に色々人が集まってきていたようで先程の一部始終が見られていたようだ。
「ま、マオちゃん……タオル、はい」
後ろからクラスの女子が水に濡れて絞ったであろうタオルをいそいそと渡してくれた。きっと今のオレは戦っている最中に見たような『人に見せない方が良さそう』な感じになっているのだろう……。
「う、うー……」
オノレ、イカ……この恨み、忘れまじ……。




