8. 学園からの通達
次の日。今日もさわやかな快晴である。小鳥たちはさえずり、花は咲き乱れ、日の光は優しく、世界は今日も美しい。……さーて現実逃避は済んだ。もちろん魔術は解けていませんクソが。
しかし、父さんと学園まで赴いて学園の教頭から話を聞いたのだが、そこで聞いたのは驚くべき内容だった。なんと、もう事情は把握しているというのだ。
そして、このような類まれなる魔力を持つ生徒をむざむざ手放すのは惜しいという事。魔術による肉体の変化は今まで確認されているものに当てはまらず、アカデミーで研究をしている医師が観察、治療をしたいという事。とある有力貴族にオレの身元は保証できるとの太鼓判を押された事。だが、男子寮にはさすがにどうか、という話があるので寮は現在協議中との事。
……話が早すぎる。有力貴族……くっ、いったい何ロック侯爵なんだ……。いや、絶対奴の差し金だというのは分かるのだが、なぜこんなにしてくれているのかが分からない。
そもそも奴とオレは敵同士。やるかやられるか、デッドオアアライブの関係。敵に塩を送っても良い事などないはずなのだ。よしんば母さんの伝手だとして、こんなに情報が早いのは少々不自然だ。
まあ、助かってはいる……のだが……。正直にいうと、借りなど作りたくないという気持ちの方が強い。なんだったら、奴のせいでこんな事になっている気がする。うん、絶対そうだ。許すまじ。
「と、いう事で。保護観察も兼ねて、君は特待生という立場にしようと思う。どうかね?」
手渡された書類には、先ほど説明された事がつらつらと記されている。あと、これはもうしょうがないのだが、魔術科は必ず単位を取得する事という条件がある。
「……分かりました。それでお願いします」
父さんと顔を合わせてから、それを了承することにした……ひとまず、これでどうにかなりそうだ。安堵してほっと一息ついていると、お茶を一口すすった教頭が話をつづけた。
「そう、君の制服だが……。そのとある有力貴族殿が手配してくれることになった」
「はい……はい?」
いや、さすがにうちでも制服くらい用意できると思うし、いっその事昨日着ていた男子用の制服の丈詰めで良いと思っていたのだが……。そもそも、サイズを測っていない。
「で、もう明日には完成しているだろうとの事だ」
「えっ、はっや!?にゃにそのすぴーど感!?」
突然の話に、横で聞いていた父さんもポカンとしているようだ。で、明日はその制服を有力貴族様から受け取りに行かなければならないとの事なのだが……嫌な、とても嫌な予感しかしない。まあ、仕方がない……。渡された書類に指印を押し、話がまとまると、今日はこれまでとの事だったので、教頭に軽く挨拶をして、そのまま帰宅する事になった。
父さんはこの後仕事があるとの事で、家まで送ってくれたが、その足で王宮へと戻っていった。こんな姿になったばかりにわざわざ家まで送ってもらって申し訳ない……。
家に入ってから、書斎に行くと、母さんが書類とにらめっこをしていたが、オレを見つけると、仕事の手を止めてくれた。報告も兼ねて学園での話と制服のくだりを説明すると、丁度母さんが明日はフリーだということで、一緒にその制服を取りに行くことになった。
……どうか、嫌な予感は当たりませんように。
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これから、目一杯マオくんをいじっ……愛でてまいりますので、是非お付き合いください。