7. 家族会議発足
サブタイトルにとりあえず題名を付ける事にしました。
ひとしきり笑われた後、家族会議が発足された。議題は……まあ言うまでもない。
どうやら、オレが帰ってくる前にユウがこちらに寄っていたらしい。何かおかしな魔術でオレの体が可愛い感じに変わってしまっているかもしれないから、もし可愛い感じの幼女が可愛く訪ねてきたら、それはオレだから、追い出したりしないであげてほしい……と伝言があったとの事だ。
助かった、助かったんだが……素直に喜べない。というか、絶対悪意あるだろこの説明。ムスッとしたオレを取り囲むように家族がしげしげと俺を見つめている。右隣りには母……ラミ母さん、左にはマリ、正面は王宮に勤めている補佐官であり、普段はあまり家にいないのに、今日はタイミング悪く帰ってきていた父、カールス父さんである。
「本当に……すごい事になっているな。耳も、尻尾も、体も。で、使ったのがここに書いてあった魔術だと……」
困った声色の父さんの手には元凶となった魔術書があり、まじまじとページを眺めていた。とはいえ、父さんも別に魔術に精通しているわけではない。魔力は人並か少し高いくらいだし、専門的な魔術を学んでいたわけでもないから内容はあまり分からないようだ。
「それ、うちの倉庫の奥のハコにあって……」
「そんな本がまぎれていたなんて、知らなかったわ…なんか装丁も杜撰な本のようだけど……」
ちょっと貸して、と母さんが父さんから本を受け取ると、頁を1ページ、2ページとめくる。すると、その顔はだんだん表情が険しくなってきた。母さんはアカデミーで魔術科の単位を取得していたらしく、ある程度魔術を扱える。この魔術書に何か気が付くことがあったようだ。
「……マオ。あなた、本当にコレを行使できたの?」
真剣な瞳をこちらに向けた母さんが静かに訪ねてきた。その瞳に気圧されて、言葉を発せずコクリと首を縦に振ると、母さんはまた本に目を通して、ぽつりとつぶやいた。
「……これ、恐らく禁術だわ。それも、普通の人じゃ発動すらできない感じの」
「きん……じゅつ……?」
母さんの口から物騒な単語が飛び出し、思わず体勢が崩れる。禁術って、絶対使っちゃいけない感じの奴……なんだろうな……。体中から冷や汗が流れる。
……安易に手を出すべきではなかった。
「まず、この魔術、相当凄まじい魔力が無いと行使できないわ」
「え。で、でもそこのかずって……」
「……マオ、この単位ね。検査の時使われていた物の、約100倍よ」
……わお、なんてこった……。
「魔術陣も規則性が無い絵…これは今の魔術の円陣ではない、何か特殊なもの。詠唱が無いというのは、現代魔術ではほとんどあり得ない」
……ひぇ……。
「と……。これはもう専門家にお願いしたほうが良いわね」
ふぅとため息をついた母さんはその魔術書を机に置くと、ポンとオレの頭に手を乗せてきた。「無事で良かった」と言われたが、現にまったくもって、これっぽちも無事ではないと思う。
……いや、まあ、命が取られたりしなかっただけ良いのかもしれないのだが……。
とりあえず、そう思う事にしたオレは大きなため息をついた。その様子を静かに見守っていたマリが怪訝そうな顔をして、オレの前に立つと、こちらを指さした。
「で、兄さん。アカデミーどうするの?」
……あ。
「それ、どう見ても、15歳じゃないよね?通えるの?」
…………う。
「そもそも男子寮に入るんでしょ?大丈夫なの?」
…………ぐふっ……。
机に撃沈したオレを苦笑いした父さんと母さんが支えた。そ、そうだ。アカデミーどうするんだ……。いや、もう既に見学で顔は出したし、教師の人もオレだって断定してたみたいだし、大丈夫……だと思いたいが……実際どうなるかは分からない。前例なんてあるはずないだろうし、最悪「病気の為、入学見送り」なんてことにもなりかねない。
「……とりあえず、俺も顔出すから、アカデミーに事情説明しに行くぞ?」
「父さん……」
……という事で、後日学園に事情を話す事になった。その日は一杯一杯で、家族会議が終了してからすぐに、自分の部屋に戻るとベッドにダイブしてそのまま寝てしまった。
きっと、明日のオレが何とかしてくれる、あわよくば、目覚めたら何もかも治っているはずだ……と。