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76. おしおきのないよう

 

 ……椅子の上に正座させられて数十分。


 長々と続くお説教に、可動域の広い頭の上の猫耳をちょっとだけ逸らしながらぎゅっと目をつぶって耐えていたが、ようやく一段落ついたのか、母さんはふぅと一息ついて、横の椅子に腰かけた。


「ところでマオ、今日はなんで一人で王都にいたの?」

「そ……それはー……その……」


 う、ぐ。言いたくないところに突っ込まれた。しかし、怒られた手前、嘘をつく事は避けた方が良いだろう。仕方がない、ここは正直に訳を話そう……。


「…………ふくを買いに」


 なんというか、女子会という単語に憚られたオレは、適当に濁しつつ、すっと目線を逸らした。それを聞いたマリが何か思う所があった様で「む」と声を上げた。


「あれから私の管轄の商店で全然服、買ってくれないじゃない。王都で一人で買い物?」

「だってぇ…………」


 あそこの商店には確かに、下着も、服も、なんだったら日用品まですべて揃っている。距離も寮からそれなりに近いし、オレが不便することもないだろう。だが、立地と条件が悪すぎるのだ。商店はマリの手腕のお蔭で繁盛してしまっているから、高確率で知り合い、もしくは、クラスメイトに会う可能性が高い。

 すると、出会ってしまったが最後。着せ替え人形にされ、最大限の恥辱を味わう事になるだろう。だったら少々遠いが、王都まで赴いてフツウのを買う方が良い。


「兄さんに合わせて、用意したんだけどな」


 マリは少し俯き加減に顔を逸らして、腕をぎゅっと握っている。そ、そんな悲しそうな顔をしないでほしい……。


「……マオ。今は一人で遠出するのはダメよ。わかるでしょう?」


 オレが兄としての良心の呵責に苛まれ、一歩後ずさりながらぐるぐると思考を巡らせていると、横から母さんがしゃがみながら目線を合わせて呟いた。


「にゃんで?」

「……はぁー……この子には色々と自覚が足りない気がするわ」


 母さんがそう言いつつ、眉間を抑えながら首を横に振っている。


 自覚……と言われましても……オレは15歳の男子で冒険者志望の学生、と、ここから変更は無い。自衛手段だって魔術を持ち合わせている。今日だって、ちゃんとヤバかったら逃げるつもりだったのだ。だから、心配しなくても大丈夫だと思うけどなぁ……。


「ほう、自覚」


 そんな母さんの言葉を聞いたマリはキュピーンと目を光らせ、何やらオレの頭からつま先までをざっと見回した。おいさっきまでの悲しそうな顔はどうした。


 しばらくして、何やら良からぬ事を思いついたようで、マリは、すすっと母さんの横に移動すると、こそこそと耳打ちをした。


「……と、言うのはどう?」

「ふむ……。でも、この子を不特定多数に意図的に晒すのはあまりお勧めしないわ」

「ふふ、兄さんは明日、ルーンウィンドでイベントあるんでしょ?そこでだけね」


 ど、どっから仕入れたその情報!?マリの言葉を聞いた母さんは「イベント?」とキョトンと首を傾げている。一転マリは心底楽しそうな笑顔……というか、恍惚とした顔だ。絶対碌でもない事なのは確かだろう。


「……なら、いいかしら。お仕置きにもお勉強にも」

「やった」

「おしっ……!?よくにゃいんだけど!!?」


 小さくガッツポーズをとったマリに食い下がるようにオレは母さんの方を見ながら、ぶんぶんと首を横に振って拒否の姿勢を見せたが、この悪の権化達はどうやら聞き入れてはくれないようだ。


 そんな様子を見かねたのか、横からククがすっと手を上げながら涙目になりつつあるオレを庇うように抱き寄せながら口を開いた。


「明日の女子会は、わし……じゃなかった。私が無理に誘ったようなものなので……その、あまり痛い事とかは」

「ああ、大丈夫ですよ」


 マリはそう言うと、こっちへと手招きしてククを誘導すると、母さんにしたように耳打ちを始めた。

 それを聞いたククは「あぁそういう事」と、何を聞いたのかは分からないが、納得したように一息ついた。


「それなら、私も付き添います。私の兄も多大なご迷惑をおかけしましたので……」

「……分かりました。では二人分ですね」


 二人分……?なに、なんだ、一体何が話し合われたんだ……?


 オレが戦々恐々としていると、ククがオレの手を握りながら「明日は頑張ろうの」とつぶやいた。いや頑張るも何も、本当に何させる気なんですかね……?


「さて、マオ。明日はルーンウィンドで働いてもらいます」


 ……なんだ、ただの料理の皮むきとかか。まったくびっくりして損した。まぁ、お菓子は食べられなくなってしまいそうだが、この程度であれば問題ない。これでも料理は得意なほうだし、今の季節は皿洗いをしても手が悴んだりもしない。


「ウェイトレスさんとしてね」

「……。」


 …………よし逃げよう!!


「逃がさない」


 オレがくるりと後ろを向いた瞬間、マリががっしりとオレの体をホールドし、ふわりと体が宙に浮く。そして、その足で、すたすたと店の外へと歩き始めた。


 ……スゥー……。


「んにゃああぁぁぁあああ!!?」



「さぁて、とびっきり可愛い服を用意しなきゃ。ふふ、お尻を痛めた甲斐があったというものね」

「……ちょっと楽しみじゃな」

「ぜんぜんたのしみじゃにゃあぁぁぁあい!!!!」

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― 新着の感想 ―
[一言] お仕置きと目の保養を両方行えるとはやりますね
[一言] お前はもうメスなんだ!自覚するんだな!ハッハッハ!
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