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58. 課外授業からおはよう

 

「……知らにゃい天井だ」


 ……うん、嘘である。知ってる天井です、寮のオレの部屋ですね。


 あの後、医療班に担ぎ込まれたらしいオレは、寝ている間に色々と手当され、絆創膏や湿布を沢山付けられた状態で目を覚ました。服も制服は手当の時に脱がされたようで、今の恰好はぶかぶかの柄のないシンプルなパジャマのようだ。 ……これ、誰のものだろうか。後で返さないと。


「んんー……よくねたぁ」


 寮の部屋は静まり返っていて、ベッドに備え付けられた懐中時計のチクチクと針の進む音だけがこだましている。なんとなしに寂しかったオレは独り言を言いつつ、背伸びをしてからベッドを飛び降りた。そして、部屋のカーテンを開けると、まぶしい光が飛び込んで、部屋全体を照らしだした。


 ……ん、まぶしい……?


「……も、もしかして……」


 オレは急いでベッドの横の懐中時計を開けて中身を確認した。時計の短針が指し示している時刻は、朝の10時。 ……おーう……マジかぁ……。


 どうやら、一日すよすよと寝過ごしてしまったようだ。まぁ、課外授業の後は休暇となっているはずだから、また寝坊欠席とならなかったのが救いだ。ただ、肝心の結果を聞きそびれてしまった。勝負の行方が分からない……仕方ない。ユウの部屋を訪ねるか。


 このままの恰好で出歩くわけにもいかない。オレは着替えるためにいそいそと上着を脱ぎ始めた。…む、ズボンがずり落ちた…まぁいいか。オレはそのままずり落ちたズボンを拾ってポイとベッドの上に放り投げて、どの服を着ようかとクロゼットに手を掛けた時だ。


 いきなりガチャリと玄関のドアが開いて、何者かがオレの部屋へすたすたと入ってきた。オレが驚いて硬直していると…大きな体が玄関から現れた。どうやら、フォリアだったようだ。


「あ!マオちゃん!ようやく目が覚めたんですね、良かったですー!」

「……にゃッ……」

「……あ。お着替え中でした?」

「……もー!はいるときはノックして!」


 今のオレの恰好はパンツ一枚だけの状態だ。まったく、オレの周りの女子はデリカシーってモノが無さすぎる。オレはとりあえず、シャツだけでも着てしまおうと、もう一度、クロゼットに手を掛けると、また足音が聞こえてきた。


「何か大きな声が聞こえたけど大丈夫……か……」

「………………。」

「す、すまない!」

「……~~ッ!!」


 ……ちょぉっ……馬鹿馬鹿どいつもこいつもなんでこんな時に来るの!!


 オレは咄嗟にベッドの上の布団を引っぺがしながら、そのままベッドの隅へ、大急ぎで逃げ込んだ。声の主はウィズ王子で、どうやら目覚めなかったオレを案じてここまでやってきていたらしい。


「寮母さんに許可を貰って、見舞いに来たのだけれど、あ、後で来る!すまなかった!」


 王子はオレが着替えを取っているのをみて、大急ぎでUターンしてひきかえしたようだ。


「あー……マオちゃん、お着替えが済むまで外で待っていますねぇー」


 それに引き続き、非常に気まずそうな顔をしたフォリアもいそいそと部屋を出て行った。 ……まったく、朝から騒がしい限りだ。さて、とりあえず着替えをしないと……。


「とりあえずこれでいっか……」


 オレはチェストの中の一番上の無地のシャツと、クロゼットの一番左に掛かっていたワイシャツを取り出して、いそいそと、服を着替えて、適当に髪をばさりと後ろへと流した。


「きがえおわった」


 玄関のドアを開けると「やってしまった」という顔をした者たちが二人佇んでいる。仕方がないから、オレが怒ってないと伝えると、二人はほっとしたように胸を撫でおろし、改めてオレの方へと向きかえった。


「体はもう大丈夫そうだね。改めて……森で君だけを危険に晒すような形になってしまった事、本当にすまなかった。小さな君を置いて安全な所へ逃れ、自分の不甲斐なさを思い知ったよ。私はこの国を背負う者として、まだまだ未熟者のようだ」

「いえ、殿下に共に応援をと頼んだのは私なのです……。見捨てるような真似をしてしまい、本当にごめんなさい」

「ほぇ?」


 二人はオレに向かって深々と頭を下げた。一方のオレは「なんで謝ってんの?」状態だ。今回の件は、オレが勝手に飛び出しただけであり、無事で何よりと思っているくらいで、まして怒ってなどいない。オレが間の抜けた声を上げたからか、二人も「あれ?」というような顔になってしまっている。


 うーん、すれ違っている気が……。


「よくわかんにゃいから、この話はこれでおしまい」

「……そ、そうか。うん、そうだね。ありがとう、マオ嬢」


 さて、今聞きたいのは、謝罪の件ではない。勝負の行方だ。オレ達のパーティはトカゲが出てくる前の時点で、結構な数の魔物を討伐できていたはずだ。最後のトカゲで色々と大変になってしまったが、結果は期待できるのではないだろうか。


「オレたちのポイントってどうにゃったの?」

「あぁ。どうやら全体で3位だったようだね」


 ほうほう、3位。これは結構な好成績な気がするぞ……!


「1位と2位は?」

「キャリアに関わる可能性があるから、他のパーティのポイント情報は伏せられているはずだよ。直接聞かないと分からないね」


 む。たしかに、今は振り分けられたパーティに入っていた人達が、色々と合わなくて成績に活かせなかった、なんて話も無いわけではないだろう。どのみち結果はユウから直接聞き出すしかないようだ。


「じゃ、ユウに聞いてくる!」

「あ、マオちゃん、ちょっと待ってください」


 オレがユウの部屋へと走り出そうとしたところで、フォリアがオレの肩に手を掛けて、オレを制止した。どうやら、まだ何か用事があったらしい。


「……その、起きたらケイシー先生が話があると聞いていますから、まずはそちらに……」


 あ……わ、忘れていた。どうやらケイシー先生は今日は学園にいるらしい。絶対怒られる……怒られる……オレは思わず一歩後ずさりした。しかし、また逃げようものならもっととんでもない叱責があるに違いない。これはもう、どうしようもないだろう。オレは観念して、がっくりと肩を落とした。


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― 新着の感想 ―
[良い点] ほほう、男に見られて恥じらいを覚えると?
[一言] ラッキースケベ発動ってされる側かいw
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