50. メンバー集め (1)
翌日。オレは授業を終えた後、サキと共に誰を誘おうかと教室で話し合っていた。
「で、マオはどんな人をスカウトするべきだと思いますの?」
サキが髪をさらりと整えながら、オレに話した。ふっふっふ、それは寝る前にしっかりと考えてきたから抜かりはない。
まず、今回は前衛2,後衛2でパーティを組もうと思っている。というのも、オレは防御魔術はそこまで上手くない。適当に闇属性の壁をドンと前に置くのが精々だ。だから、防御魔術が上手そうな魔術師をひとりスカウトしたい。
次に前衛だが、サキは前のユウとのバトルを見ている限り、スピードで攻める感じだから、盾を使ってガードできるような剣士をスカウトする予定だ。
「……と、こんにゃかんじ」
「しっかりと考えていますのね」
「そりゃもう!ユウに勝つためだから!」
「……ん?どうゆうことですの?」
サキに首を傾げながら尋ねられて、オレははっとした。 ……そういえばサキにはまだ説明をしていなかった。オレはサキに、最近のユウの所業と、この課外授業でユウよりもポイントを稼いで、良い成績を取ることで、見返し、勝つことをかくかくしかじかと説明した。サキは静かにそれを軽く腕組みをしながら聞いていたが、話し終わったところで小さく口を開けた。
「そんな羨ましい事が……」
「……むぅ?」
「ごほん、何でもありませんわ。そういう事でしたのね。成績が上がる事は良いことですし、構いませんわ」
……う、うぅん……サキも何だかオレの事を熱が籠った目で見ている気がするんだよなぁ……。まぁ、今は勝負とパーティメンバー集めが先決だ。聞かなかった事にしよう。そうしよう。
さて、とにかく見つけるべき人材ははっきりとしているわけだ。あとは行動あるのみ。オレ達はまずは教室を見回した。辺りにいる生徒の人数は大体10人程度。 ……見た感じ、オレと同じ魔術科を受けている人はいなさそうだ。剣術科の生徒がいれば、サキのほうが詳しいだろう。オレはサキに目配せして「良い人材はいないか?」と念を送ってみると、コクリとうなずいたサキが「まぁかせてくださいまし」という感じのドヤ顔とサムズアップを見せた。
……だ、大丈夫かぁ?不安だ……。
「みなさーん!我々は今、課外授業のメンバーを募集中ですわ。今なら……」
サキが大きな声を出したかと思った矢先、オレの脇を両手で掴んで、ひょいとオレを前のほうへと移動させて抱き込んだ。おいコラ、猫みたいな扱いをするんじゃない。というか、一体どういうつもりだ。
「ほら、マオの事も撫で放題ですわ」
「にゃにいってんのぉ!?」
大急ぎで見上げると「ふふん、これが正解!」と言わんばかりのドヤ顔が見える。いや全然ちげぇよ!ま、まずい。教室と、教室の外にいた何人か……特に女子連中の目の色が変わった気がする。さっそくサキの言葉を聞いた数人が、オレとサキの周りに集まってきた。
「「「マオちゃんを好きにしても良いと聞いて!」」」
「い、いまのにゃし!にゃしだから!というか好きにしてもいいにゃんていってにゃい!」
拒否するオレを尻目に、どんどんと人だかりは大きくなっていって、あっという間にオレとサキを取り囲むように人が並んでいる。いやなんでこんな事に釣られてんだよ!あと多人数から見下ろされると正直コワいから近づくな!
しかし、そんなオレの心の叫びとは裏腹に、もう人だかりは出来てしまっている……し、仕方がない。サキに直接言って説得してもらって帰ってもらおう。
「サキ!いまのにゃしだって言って!はりーあっぷ!!」
「え? ……あぁ……。ええと、みなさん。募集はしていますけれど、こちらの希望するスキルがある方、ですわ」
サキが頭の上でかくかくしかじかとオレが希望している人材について説明している間も、視線はオレに注がれて、居心地は最悪だ。しかし、目を逸らすと、耳とかをいいようにされそうで、目を逸らすわけにもいかない。オレは周りに威嚇するようにガンを飛ばしつつ、サキの説明が終わるのを待った。
「と、こんな感じなのですけれど……」
ようやくサキの説明が終わった。時間にしたら1分そこらだろうが、体感1時間はかかった気がしたぞ……。オレは一息ついてから周りを見渡してみたが……「えー、残念」と言い合っているのを見るに、ここにオレたちの求める人材はいなかったようだ。ついには皆諦めたようで、「今度は誘ってね」と言いながら人混みが捌けていくのを見てオレは深いため息をついてサキを恨むように睨みつけた。
「サキぃー……?」
「も、申し訳ありませんでしたわ。人を集めてと言っているものかと……でも、ほら。効果は抜群ですわ」
「今後はコレぜったいきんし!!!」
そんな身を切るような事してたまるか!まったく、昔からサキはよく突拍子も無い事をする。 ……と、こんな事をしている場合では無い。早く人材を探さなくては。
オレは「つぎはあっち」と、武術棟のほうにサキの手を引いた。しかし、後ろから「まってくれまいか」と呼び止める声が聞こえ、オレは振り返った。そこには、金髪を小奇麗にまとめ、制服をしっかりと正した、すらっとした印象がある男子生徒が立っていた。
「呼び止めてすまない。僕はウィリー。先ほどのサキさんの話を聞いてね。僕は防御魔術にはそれなりに自信がある。どうだろう?僕を入れてみないかい?」
ウィリーと名乗った男子生徒はオレの目の前に跪くと、スッとオレの手を掬い上げて、オレを見つめた。
……え、いや……え?ナニコレ?あまりに咄嗟の出来事で、オレはしばらく硬直していたが、ハッと我に返り、コイツの手を振り払った。
「こ、こういうことはすんにゃ気持ちわるい!」
「おや、これは失礼。お姫様はこういった事はお嫌いだったようだ。 ……それで、パーティメンバーの件はどうだろう?」
随分濃い奴が出てきたものだ……う、うーん……まぁ、後衛をしてくれるというなら、探す手間が省けるのだが……。オレがどうしたものかと悩んでいると、サキがスッとオレの横に顔を差し出して、耳打ちしてきた。
「彼、中々手練れですわ。気配を消していたし、一挙手一投足が洗練されていますわ」
まぁ、確かにサキの言う通り、今まで気配を感じ取れなかったし、キビキビとした動きをしているようにも思う。肝心の魔術の腕前がいか程かはまだ分からないけれど……まぁ、サキのお墨付きもあるし、手練れというなら歓迎だ。
……それにしても、コイツどこかで見たことあるような……。うーんどこだったか……。まぁ、今はいいか。
「うん。それじゃあよろしく」
「ふふ、これは光栄だ。よろしく頼むよ、お姫様」
「そのよびかたはやめろ」
……一抹の不安が残るが……とりあえず、これでパーティメンバー一人ゲットだぜ。これであとは前衛のみ。さて、今度は武術棟へいかねば!
「ところで」
「んぅ?」
「撫で放題というのは本当かい?」
「……うそだからみみをさわろうとすんにゃ」




