48. 作戦会議
「うーん……どーしたものか……」
オレは放課後の教室で一人、作戦会議の為にマル秘ノートを開いて腕組みしていた。というのも、先の巡らせるものとお持ち帰り事件で気がついたのだ。最近のオレはたるんでいるのではないかと。
直近の出来事だけ見ても、ユウに抱きつかれたり、ユウの腕の中で寝てしまったり……これは由々しき事態だ。本来オレは精悍でクールでダンディな冒険者になる予定の男子生徒なのだ。これでは、その前提が崩れかねない。
だから、近いうちにまた、奴に挑むつもりだ。これまでは何度も無念の撤退を続けているが、今度こそ完膚なきまでにワカラセてやる予定なのだ。
オレは開いたノートになんとなしにスマイルマークを書きながら、思考を巡らせた。
まずはなんといっても、どのようにユウを攻略するかだ。マル秘ノートにも書かれているが、最近の作戦傾向は力押しに近い。同じ学園で過ごしているから、不意のエンカウントが多くなったというのもあり、どうしても搦め手を実行する時間が取れないのだ。
だが、このまま力押しでは奴には勝てないだろうことは分かっている。
例えば以前のように決闘に呼び出し、連続魔術で弾幕を張るとすると、ユウはやたら身体能力が高いから、それはまた避けられてしまうだろう。すると、接近戦となる。…ここがマズいポイントだ。オレの今のぷにぷにボディは接近されたり、捕まえられたりするとあまりに無力なのだ。
じゃあ接近戦に持ち込ませないためにはどうするかというと、オレの周りの地面にぬかるみを作るとか、落とし穴を掘っておくとか……。そんな話になってくるのだが、学園の敷地でそんな事は出来ない。絶対にながーいお説教が飛んでくる。
つまるところ、今は決闘では勝てないという事は明白だ。
では次に決闘以外だ。以前から剣でダメならと弓、馬、勉強、かけっこ、ボードゲーム…これらで挑んでも、勝てたためしがない。
……しかし、分からないのはカードゲームのような運要素が絡むようなものでも勝てないんだよなぁ…。ユウに一度まじまじと顔を見られつつ「マオちゃん、ゲームは向いてないよね」と言われた事はあったけど、いつもオレの作戦は完璧だったはずなんだけど……。
後は、この学園に入る前、とりあえず何でもいいから勝ちたいと、一度激カラのお菓子を用意して、奴に一泡吹かせてやろうとしたことがある。しかし、これが普通に美味しそうに食べられた挙句「一緒に食べよ?」と差し出され、あわてて拒否したら「ほら」と隙をつかれて口に放り込まれ……。
……まぁ、そこは置いておいて……。結論を言うと、アイツに辛い物は通用しなかった。むしろ喜ばれたくらいだ。 ……隙がねぇ。
と、力押し決闘以外もこんな感じだ……ぐぬぬ、どうしたものか…。
「ん?マオ?こんな時間まで残って何をしているの?」
オレが眉間にしわを寄せながら考え込んでいると、突然後ろから声を掛けられた。振り返ってみてみると、いつもの青髪が目に入ってきた。声の主はセシルだ。
「あ、セシル。今オレはだいじにゃかいぎをしてるんだ」
「か、会議?ひとりで? ……え、えーと、そう、なんだ?」
オレがノートに書いていたスマイルマークを少しクオリティアップして描きながらそう言うと、セシルは困惑したように返事をした。 ……考えてみれば、確かに一人で会議というのもおかしな話だ。そうだ丁度いい。
「にゃあにゃあ、セシルもかんがえて。オレがユウに勝てるほうほう」
「えぇ? ……うーん……」
オレがセシルを会議に誘うと、セシルは向かいの椅子に座ってカバンを降ろして、人差し指を下唇に当ててつつ、目を閉じた。しばらくして、セシルが困ったように笑ってこちらを見た。 ……えー、その反応は……。
「ごめんね、思いつかないや……」
「そんにゃぁ~……」
オレはがっくしと肩を落とした後、マル秘ノートの上に突っ伏した。くそう、セシルでも考えつかないなんて、なんつう強敵だ……。
「ところでマオ、課外授業は出るんでしょ?準備は始めてる?」
セシルは倒れ込んでいるオレにまぁまぁと言いながら、質問をしてきた。課外授業……そういえば、そろそろそんな行事があるってウォウのおっさんが言っていたな……。
たしか、一定数で班に分かれて、魔物に対する対処を学びつつ、魔物駆除の奉仕活動を行うというものだ。剣術、格闘術なんかがある武術科全般や医療術科と合同で行われるかなり大々的な行事らしく、アイミス連合王国の各地に学生が派遣されることになっている。今年の俺たちの担当は、学園から離れたアルカ王国とイングス王国の国境沿いの森で、班で倒した魔物はポイント制で倒した分だけ成績に反映されるとか。
……む?ポイント制……そ、それだ!
「そのかがいじゅぎょーでユウよりもいっぱいポイント取って、オレのほうがつよいってことをしょうめいする!」
オレは立ち上がってガッツポーズを取った。そう、森なんて貴族のお嬢様であるユウはほとんど行く事もないだろうからいつもより力が入らない事だろう。そんな中、オレが天性のワイルドさを発揮し、魔物を狩って狩って、狩りまくってやれば、ユウだって負けを認めるはずだ! ……一つ問題があるとすれば、オレも魔物が出る森なんてほとんど行ったことが無い事だけど、そこは気合でカバーだ!
「ふははー!もえてきたああぁー!」
「授業は勝負ではないんだけど……まぁ、やる気がある事は良い事…かなぁ」
オレがやる気を出している横で相変わらず困ったようにセシルが笑っているが、セシル、グッジョブだ。ふっふっふ、セシルのお陰で良いアイデアが降ってきた。やはり会議は誰かとやった方が良いという事だな!
そうと決まれば早速準備開始だ!
評価、感想、そして、誤字報告ありがとうございます!
誤字報告便利ですね……。




