46. お持ち帰り
「全く……また、とんでもない無茶をしてくれたものだな……」
「ふええぇん……からだうごかにゃい~……」
オレは気がついたら、保健室のベッドの上に寝かされていた。どうやら寝ている間に担ぎ込まれたらしい。目が覚めたと同時にディアナ先生の長いお説教を経て、今に至るわけである。
「ともかく、今日明日は絶対安静。あと、今後は新しい魔術の練習は危ないから先生同伴で行う事」
「……うー……はい……」
……うー……なんで、こう上手くいかないの……。オレは……オレはただ、ユウに勝って、それで、かっこいい冒険者になりたいだけなのにぃ……。
い、いけない……何だか悲しくなってきた。この目は随分涙腺が緩いから、気を付けていないとすぐに涙が出てきてしまう。
オレが口をへの字にして泣くまいとベッドで踏ん張っていると、突然横のカーテンがばさりと開いた。
「マオちゃん大丈夫!?」
「……へっ?あ、ユウ……」
カーテンの先から現れたのは、随分急いできたのか息を切らしているユウだった。どうやら、どこからか話を聞いて放課後の随分遅い時間にも関わらず駆けつけてきたらしい。
「……泣いてた?」
「にゃいてにゃい! ……てゆうか、にゃんでここに?」
オレは驚いた拍子に少しだけ漏れてしまった涙を無理矢理顔を横に振って振り払いつつ、ユウに訪ねると、ユウはにっこり笑ってオレの体を抱き起した。
……む。なんだ……?
「元気そうで良かったぁ。で、マオちゃん今って体が動かないんでしょ?だからお世話しなきゃーって事で立候補したの」
「…………はい?」
お世話とやらに立候補したというユウが、オレのお尻の方に腕を回して、そのままひょいと持ち上げた。
なす術もなくお姫様だっこされたオレが目を丸くしていると、ユウが微笑んだ。
「もうディアナ先生には許可貰っているから!マオちゃんお持ち帰りぃー!」
「ちょ、ちょっとまってええええあああああああーーー!!」
―――……。
……ユウに拉致されて、寮まで運ばれたオレは今、寮の共有スペースにある食堂で、ユウの前の椅子に座らされている。
「マオちゃん次はなに食べたい?」
「……さかにゃ」
「ふふ、骨はとってあげるねー」
……確かに手も動かない今の状態でご飯は食べられない……のだけれどさぁ……。
ユウはナイフとフォークで器用に骨をひょいひょいと除けると、オレの目の前に魚の身を手を添えながら差し出した。
「はい、あーん」
「あむ」
ん、この魚おいしーい。 ……じゃ、無くて!
皆の前でコレは、さすがに恥ずかしいだけど、もっと何とかできなかったのか……!しかし、目の前のユウはなんというか「幸せ一杯!」という満面の笑顔だし、オレも夕食を食べられるのはありがたいから、無碍にする事も出来ない。
唯一動く首でちらちらと周りを見てみると、何やら温かい視線を感じる……どうやら、おおよその事情は皆知っているようなのが救いだ。
「あら?マオちゃん、犬歯すごい尖ってる?」
「……じっとみつめんにゃ」
ユウはオレが食べてる間もじっとオレの顔を見ているせいで、オレはさっきからそっぽを向きつつ食べている。ちなみに、犬歯は本当に尖っていて、まるで本当に猫のようになっている。以前からこうだったわけではなくて、この体になってからだから、耳や尻尾以外にもいろいろと変わっている所はありそうな感じだ。
「ユウ~……はずかしいし、もういらにゃい」
「そっか。うーん、ちょっと残念……」
もうずいぶんと食べたし、お腹いっぱいだから、オレはユウを急かした。これで後は寝るだけだろう。
「じゃあマオちゃん、この後は歯みがきして、お風呂一緒に入ろうね!」
「……え゛っ」
しかし、予想とは裏腹にユウの口からいきなり刑の執行が飛び出して、オレの尻尾の毛がブワりと逆立った。今までなんだかんだと言って避けてきていたが、今日は事情が違う。体は動かないし、断る理由も思いつかない。いわゆる詰みという奴だ……。
「ほら、いこ」
「やだ!!!」
「はいはーい、わがまま言わなーい」
ユウはそう言ってオレの体を持ち上げて、抱っこのような形になった。……くうぅぅ……おのれぇ……!体が動くようになったら絶対に、ぜぇったいに倒してやるんだからなああ!!
「ふんふんふ~ん♪」
「うにゃあああああああああん!おぼえてろおおおおおおおーーーー!!!」
投稿が遅くなってしまいました……!
Cから始まって9で終わるアレに罹ったのが原因で、考えていたお話の展開が頭からすっぽ抜けました……。
皆さんもお気をつけて……!




