44. 読書と司書さん
「はぁい。ここですよぉ」
マミィさんに連れられてきたのは入口から丁度真反対に位置している図書室の二階部分だ。目の前には分厚そうな本が所狭しと並べられている。少しだけ背伸びしつつ本のタイトルを見てみると…。
『ゴウ・ブリンクウェルによる魔術相関と瘴気による反転作用考察』
『夢の技術、魔術の力』
『魔術技能の発展とその過程』
『魔術を紐解く幾何学の世界』
…………。
うむ。物凄く小難しそうなものばかりだ。ぶっちゃけると、タイトルだけ見ても、何が書いてあるのかさっぱりだ。まぁそれもそうだろう。そもそも応用を学ぼうって話になると、どうしてもこうなりがちだ。
オレはその中から、適当に一番難しくなさそうな、『夢の技術、魔術の力』を手に取ってペラペラと頁をめくってみたが……読んでも何が書いてあるのかさっぱりだから、これはいかん……。
「……マオちゃんは字は大丈夫ぅかしらぁ?」
「よめます……けどー……」
……まあ、ここは仕方がないだろう。オレは本を閉じて、元の場所に戻すと、マミィさんのほうへ向きかえった。
「あの……めぐらせるものっていう分野?のほんはどこに……?」
「あぁそれはぁ、隣の本棚の上からぁ…………お取りしますねぇ~」
「ちょっとぉ!にゃんでオレの方見ていうのやめたの!!」
オレの問いに対し、マミィさんは「まぁまぁ」と笑いながら隣の本棚へと歩き始めた。
……ああ分かっていますとも『あっ、背、届かないだろうな……』って思ったんだろう!くそう、絶対に、元の状態に戻ってやるんだからな……!
マミィさんの対面の隣の本棚も、これまた分厚そうな本が並んでいる。マミィさんは「ちょっとまってねぇ」というと、服のポケットから包帯を取り出して、しゅるしゅるとその包帯を広げ始めた。 ……顔の包帯がほどけでもしたのだろうか。そう思っていると、マミィさんはぼそぼそと何かを口ずさむと、その包帯がうねうねと動き始めた。
「ふふ、これが魔術の応用ですよぉ。動かすもの、洗濯機なんかにも使われているものですねぇ~。えぇ、おすすめはぁ、これと、これと、これとぉ~……あ、初めてならこれが良いかもしれませんねぇ~」
包帯はまるで意思をもっているかのようにしゅるしゅると目的の所に伸びていっては、本をしっかりと掴んで帰ってきて、あっと言う間にマミィさんの手元には本が5~6冊溜まっている。
あんなに自在に動かすのは多分、相当な技術なのではなかろうか。どうやら、マミィさんは中々の魔術の使い手だったらしい。一体なぜ司書をしているのだろうか……。
「あ、今『なんで司書しているんだろ』って思いましたぁ?ふふ~、答えは簡単、本が好きだからですよぉ。マオちゃんも好きな事を出来るのはしあわせでしょぉ?」
「……にゃるほど」
うむ、何故オレの考えている事が分かったのかはともかくとして、オレだって将来の予定は冒険者だけど、今必死に関係ないと思っていた魔術を勉強しているわけだし、得意と好きは必ずしもイコールにはならないってわけだろう。でも、好きな事をやるのは良い事だ。きっと本にも相当精通しているに違いない。これはマミィさんの選ぶ本には期待が出来そうな気がするぞ。
マミィさんはそのまま4つほど先の棚の横に備え付けられた小さな席に、例の本を運んでくれた後、「何かあったら声をかけてねぇ」と、業務へと戻っていった。
……さて、それではいざいざ、勉強開始だ!
―――……。
数十分後。オレは頷きながら一冊の本を読んでいた。
「ふむ~……分かりやすい。マミィさん、ぐっじょぶ」
マミィさんが選んだ本のうちの一つ、『流派”気とかチャクラとか良く分からないから術構成で何とかする”による巡らせるもの講座』という本が実に分かりやすかった。 ……本当にそんなふざけた名前の流派が存在しているのかは分からないが、書かれている内容から、なんとなく実在していそうなのが面白い所だ。その流派によると、この本の最後のほうに書かれている魔術陣と詠唱をつかえば、本場の格闘技を使う者と似たような事が可能…との事だ。
なので、オレはまるっとその内容をメモ帳に写すことにした。昔から、とりあえず写す!というのは得意だ。これで母さんの手伝いをしてきたといっても過言ではない。
それからは無心でカリカリと写して……ようやく終わったのは、もうそろそろ図書館が閉まる時間になるかという頃だった。少々時間は掛かったが、あとは、これを実践するのみだ。ふふっ、ふっふっふ!物凄く楽しみになってきたぞ、早く試してみたい!
……と、その前に本を元の位置に戻さなくては。本には元の場所が書いてあるラベルが張られているから、位置は大丈夫だ。それを見つつ、元に戻せばよいだろう。
えーまずは上から2段目ぇー……。
………………。
こ、こんな高さがなんだ……オレは超えてみせるぞ……!
「とぉっ!たぁっ!てりゃぁっ!せいやぁっ! ……はぁはぁ……とどかにゃい……」
「ふ、くすくす、あらあらぁ……」
「……ん?」
オレがぴょんぴょんと飛び跳ねていた所、後ろからくすくすと押し殺した笑い声が聞こえてきた。後ろを向くと、マミィさんがオレの後ろに立っていた。どうやら、一部始終をずっと見ていたようだ……。
「むぅぅー!!」
「あ、あらぁ。ごめんなさいねぇ、あまりにかわいらしくてついぃ~。ほら、私があとはやっておきますねぇ。子供はぁ帰る時間ですよぉ」
「……ぐぬぬ。こどもじゃにゃい!でもおねがいします!」
最後が締まらなかったが、まあいい。これでオレはさらなる高みへと至る! ……あれ?なんか以前も似たような事を言って、失敗したような気が……?
…………きのせいだな!
ブックマークが500件を超えていました!感激です!
最近間違えて小説のネタ帳の方を投稿してヤッベェ!となる夢を見ました。
思わず確認して、もちろんそんな事は無かったですが……小説投稿を行っている人は一度は見たことがあるんじゃないかなぁなんて思いました。心臓に悪いですね……。
あ、さすがに投稿いたしませんのでご安心ください。




