42. とある男子生徒の活動
今回は別のキャラ視点となっています。
俺の名前はリジェという。フルネームはリジェ・プリストだ。
代々聖職者の家系であるプリスト家に生まれ、今年このアルカ王国の学園に入学をした。そして、そんな俺にはある秘密がある。ここではない世界の記憶。そう、前世の記憶があるのだ。
それをはっきり自覚したのは10歳の頃。俺は町の喧嘩に巻き込まれて、階段から落ちてしまった。幾日か意識が戻らなかったのだが、目覚めたその時に、俺が転生者であることを自覚した。
以前、俺は日本で生活していて、「両国宗太」という名前のサラリーマンだった。死因は、10歳の頃に階段から落ちた時のように、仕事帰りに駅の階段から足を踏み外して落ちた事故だった。
しかし、なんの因果か、また人間として、しかも魔術の使える世界に転生したのだ。これはかの有名な異世界転生チートをして、色々な種族とハーレムしてやるぜ! ……と息巻いていたのだが、世界は、そんなに単純に出来ていないわけで……。
まず、何か能力的な物を授かっているかと色々試してみたが、この世界の一般人とさほど変わらなかった。プリスト家の血の影響で、水と風の魔術が得意ではあるが、父上のほうが上手く扱う事は出来る。魔力測定も中の下といった感じ。ある程度魔術が扱えるという具合だ。
次に容姿。プリスト家の象徴たる深緑の髪と瞳は割と珍しい色ではある。顔もかなりイケメンといっても良いのでは?と思っているが……。
これがまた、この世界の人間は中々容姿が整っている人が多く、俺よりもレベルの高い美丈夫など沢山いるわけで……。
……あと、この世界の残念な点として異種族、エルフやドワーフ、獣人というような亜人種は存在しないらしい。地球で言う所の有色人種という感じに、肌の違いはありそうだが人種差別なんてものは存在しないようで、そもそも肌の違いが語られる事もない。
では、前世の知識を活かしてやろうかと思うと…この世界の文化レベルだが、これがかなり高い。冷蔵庫、洗濯機、オーブン、エアコンなんかはもう開発されて、普及しているような状態で、日本で言う所の昭和時代くらいは発展していそうな程だ。
これらは電気で動いているわけではなく、魔核という、瘴気と呼ばれる物が浄化されたり、自然に凝固したりしたときに生成されるエネルギー物質を使っているようだ。
無線機のような電話システムも出来上がってきていて、テレビやラジオが出来るのも時間の問題だろう。電波ではない、別の技術だそうだが俺にはよくわからなかった。
唯一、交通という面でほとんど発展しておらず、馬車、自転車のような乗り物くらいしかないのだが……。まぁ、元一般人の俺が自分だけの知識で車やら飛行機なんぞ作れるわけも無いわけで……。少し地頭の良い子供。というのが落としどころだった。
そんな俺だったが、この学園に入学し、とある人物に出会った。いるはずがないと思っていた獣人。同じクラスになったマオという子である。
オレっ子で、本人曰く同い年だとの事なのだが、背はとても小さく、俺の半分くらいの背丈しかない。その容姿は、まるで絵本の世界から飛び出してきたのかと思うくらいに愛らしく、その銀髪は絹のようにサラサラ。頭の上には少し大きめの耳がピンと立っていて、お尻からはふわふわの尻尾をいつも揺らしている。
俺はそれはもうテンションが上がった。魔術ではないファンタジー要素がついに姿を表したのだ。なんとしてもお近づきになりたい、そう考えていたのだが……俺は踏みとどまった。
こんな格言をご存知だろうか。「ロリは愛でるべし。触るべからず」。
マオちゃんはどうみても15歳だと虚栄を張っているかわいいロリっ子である。現在15歳とはいえ前世で生きた分も合わせれば十分おじさんと言える年齢である俺が「お友達になろうよ、ぐふふ」なんていうのは、どう考えても倫理的にアウトなのだ。
だから、俺は静かにその子を見守る事にした。
マオちゃんはどうやら隣のクラスのユウさんという、これまた凄い美少女がいるのだが、そのユウさんをライバル視しているらしく、いつも突っかかって行っては、負けて帰ってくる。
今日も廊下でばったり会ったユウさんに……。
「ふざけんにゃ!きょうこそせーばいしてくれる!てりゃー!!」
……と攻めかかり、あっけなく捕まった後にもみくちゃに可愛がられ、ちょっと涙目で友達であるセシルの元に戻っていくのを見かけた。
……これが、また……良い。
そう、おねロリ、百合の波動をひしひしと感じる。美少女が美幼女を可愛がる、そんなエデンが目の前で繰り広げられているのだ。ここに無粋な男が割って入るなど言語道断。仮に許されたとして、それはマオちゃんが心を許しているセシルだけだろう。 ……ぶっちゃけセシルも女子か?と思うほどの可愛らしい顔なので、あまり気にならないというのもある。
……このエデンは決して侵されてはならない。守らねばなるまい。
この世界の人間には「ロリは愛でるべし、触るべからず」という不文律は浸透していない。何より、たまに「両方とも娶りたい」「間に挟まりたい」という度し難い声が聞こえてくるのだ。これは、非常に良くない。
そう考えた俺は同志を募り「マオちゃんを見守る会」を学園に設立する事を宣言した。現在、会員は約20名。活動内容はマオちゃんを陰ながら見守り、応援し、邪なる野郎は密かに排除するという物だ。
昨日も何か「あのガキ、ここの生徒だったのか……良い機会だ、復讐してやる」と息巻いていたオールバックに髪を固めた上級生をちょっとしたお話に招待し、無事分かってもらえた所である。
……さあ、今日も張り切って活動を行おう。
マオちゃんとユウさんのカップリングは俺が守る!




