40. 試着室にて
「は、はいちゃった……」
……オレは簡易試着室の中、半裸のまま立ち尽くしていた。
少しだけ丸みを帯びたお尻には……可愛らしい下着。ついこの間までは考えつかないブツがオレのお尻を隠している。
履き心地は……悔しいけど、思ったより悪くない。柔らかい布で出来ていて、しっかりとフィットしている感じがする。少しだけもじもじと足を動かしてみても、股が擦れたりしそうもない。後ろは丁寧に尻尾の所が少しくぼんだようになっていて、尻尾をゆらゆらと動かしてみても、今までみたいに干渉して痛くなったりしない。
……つまり、マリの言う所の、自分にあった防具……なのだとは思うのだけれど……。
「……………………はいちゃったぁぁぁ……」
羞恥心と精神的なダメージが波のように押し寄せて、オレは自分の顔を両手で覆った。穴があったら入って蓋して閉じこもりたいくらいには、色々と一杯一杯だ……。しかし、こんな半裸のまま何時間と過ごすわけにはいかない。
仕方無しに、ユウから手渡されたワンピースを手に取る。 ……いや、この服も大概だと思う……。
以前は無理矢理着せられただけであって、精神的な抵抗は少しだけ軽減されていたような気がするが、今回は自らこれに袖を通すわけである。 ……なんというか……しんどい。 ……が、着ないと終わらないのだからやるしかない。
ワンピースに袖を通して……む、前にボタンがないから後ろで留めるタイプだ……。こうゆうときに髪が邪魔で困る。が、髪を切るとマリさんがご立腹だとの事なので、切れないわけで。周りを見回してみるが、どうやら手の届く所に髪留めは置いていないようだ…誰かに頼むしかないか……。
誰かに頼もうとひょっこりカーテンから顔だけ出してみると、ユウとマリの姿が見えず、サキだけが近くにいた。どうやら、この部屋の服を物色していたようだ。その手には何処で着るんだそんなもんって感じの踊り子が着ているような南のスーディーン国風の服が握られている。
……一番怖いのは、それがオレの体格に合っていそうなことだが……。
「サキぃー……とめらんにゃいー……」
「あら……分かりましたわ。ちょっと失礼しますわね」
オレが低い声でサキを呼ぶと、物色していたサキはその服を元のハンガーに掛け、すぐにこちらに寄ってきた。オレの状態を一瞥して、どうやら何を言わんとしているか分かったようで、すぐに近くの机の上にあった髪留めを持ってきた。
「気が付くのが遅れて申し訳ありませんでしたわ。それじゃあマオ、後ろを向いて」
「……へい」
成すがままに後ろを向いておく。サキが馴れた手つきで、髪をさらりと上にあげる。髪で隠れていた背中に、少しだけ外の空気が当たってこそばゆい。じっと我慢しているのだが、なにやら一向に終わらない。
「……マオ、あなたの髪、まるで絹のようですわね……。羨ましいですわ……」
「ぜんっっぜんうれしくにゃい……」
どうやら、サキが感心したように髪を触っていたようだ。いいから早く終わらせてくれ…。
少しの間オレの髪をさらさらと手で流していたサキだったが、「いけない」と小さく呟いて、ようやく手を動かし始めた。髪を上に纏めてから、オレの着ているぱっかりあいた背中の留め具をパチパチと留めて、纏めた髪をおろす。これで完了だ。
「これで終わり……これは……ヤバいですわね……」
サキがヤバいと言いながら、オレの目の前に小さな鏡を持ってきて、コトリと置いた。
置かれた鏡をみると、顔が真っ赤で、少しだけ涙目な猫耳の幼女が潤んだ目でこちらを見ている。服も着せられている感じはなく、自然な感じ。何処からどう見ても完璧な幼気な女の子だ……。
……これ、オレなんですよね……。ぐぬぬ……。
「……ねぇマオ……」
「……にゃに?」
鏡に映った自分を眺めていた所、後ろに立ったサキが手を握ってうずうずとした様子で訪ねてきた。
「折角だしヘアアレンジも……」
……どうやら、髪をいじりたかったらしい。
「……もう、すきにしろぃ……」
サキの問いに対して目を逸らしながら答えると、サキは目を輝かせて、どこからともなくヘアブラシとヘアゴムを取り出し、早速オレの髪をいじり始めた。
……しかし、これがなかなか俊敏かつ繊細な手つきで、痛かったり痒かったりはしなかった。貴族のお嬢様なんて、こういうものはみんなメイドにやらせて、自分の髪なんて整えたりしないだろうに、随分手馴れているように思う。オレの髪は瞬く間に纏まって、もう既に下に流すようなサイドテールが一本出来上がってきている。
「サキ、いがいと器用だにゃ。どこでおぼえたんだ?」
「あぁ……ほら、うち昔は貧乏だったでしょう?メイドを雇ったりする余裕もなかった時に、お母様の髪を……。で、これが面白くてハマってしまって。今は道具がないからこれくらいしかできないけれど、他にも色々と出来ますわ」
「……ふぅん」
そんな会話をしている間に、オレの髪のセットが終わり、仕上げにサイドテールの根元に白いリボンがついた。 ……いや、それは要らない……。オレが要らないからと、白いリボンに手をかけようとした所、バタンと向こう側の扉が開く音が聞こえ、オレは手に掛けるのを一旦やめて、向こうを向いた。
どうやら、丁度ユウとマリが帰ってきたようだ。 ……トイレにでも行っていたのだろうか?
「おまた…せぇ!何この可愛い生き物ぉー!!」
「うにゃあぁぁぁぁあ!だから抱きつくにゃああああああああ!!!」
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……が、最近リアルが忙しくなってまいりました。
頑張ってなるべく早めに投稿いたしますが、少しだけ更新が遅くなるかもしれません……!




