3. ゴッドスーパーマキシマムウルトラハイパーレジェンドマン
……ユウには勝てなかったよ。
でも、負けてない。オレの心が折れるまでは負けてない。そう、戦いはまだ続くのだ。
家に帰ったオレは今日の一人反省会を行っていた。ちなみに今日は時間もあまりなかったので剣で挑み、1分経たずに吹っ飛ばされた。
がむしゃらに挑んでは辛酸を舐めさせられているので、最近はこのように反省会を行っている。ただ負け……じゃなかった、一時撤退をしているだけではない。オレは次に活かせる男なのだ。マリに何やら可哀相なものを見る目をされたような気がしたが、きっと気のせいに違いない。
……腕を組んでうんうんと唸っていたが、ある事を思い出した。そういえば、ユウにはまだ挑んでいない分野が一つある。魔術だ。正直、小難しい事はあまり得意ではなかったから、覚える気は無かったのだが……。この際四の五の言っていられない。かの化け物を倒すには悪魔とも契約しなければならないのだ。
思い立ったが吉日。魔術といっても知識がまるで無いので、家の倉庫に何かないか、やさがしを始めた。ちなみにあくまで勉強の為、という名目である。ばれたら大目玉だ。
ガサゴソと奥の方を探索していると、やたら重厚な箱の中に一つの本を見つけた。ボロボロで雑な装丁であるが、どこか目を引く真っ黒な本だ。表紙をめくってみると、題材は『極の魔術理論』。なんとも仰々しい題だ。ペラペラとページをめくってみると、小難しい話と共に、魔術が記載されている。その中に一つ、面白いものを見つけた。
「自身の内なる力を解放し、潜在能力を引き出す。 ……こ、これは……」
恐らくだが、自己強化の魔術……だと思う。いや、自己強化なんて魔術があるのかは知らないけれども、なんとなく凄そうで、描かれた魔法陣はなんとなく強力そうな雰囲気がある。生贄とかそういった物騒なものを要求されたらたまったものじゃないから他のページも見たが、特にそのような記載はない。
……こいつを使えば、奴に勝てるのではなかろうか。
<<ふはは、ゴッドスーパーマキシマムウルトラハイパーレジェンドマンとなったオレの剣を受けてみるといい!ちょいやー!>>
<<うわー。参りました。もうあなたに絶対逆らいません。ちゃん付けもやめます。マオ様!>>
グレードアップしたイケメンなオレが奴をクールに倒すイメージが脳裏に浮かぶ。いける……いけるぞこれは……!まさしく天命得たり!
オレはそそくさと本を持ち出すと、早速コイツの解読を開始するべく倉庫を後にした。自分の部屋に戻り、ばっと机の上にペンとインク、件の本を並べ、とりあえずで挟んだ葉っぱのあるページを開く。
必要な魔力は……かなりの量な気がするが、多分余裕だ。但し書きに書いてある魔術論理……とやらは良く分からん。魔法陣は……複雑だが、何とかできそうだ。最後に詠唱……は、無い。魔術を使う奴らはいつもボソボソと何か言っていた気がするのだが、なんとも珍しい魔術だ。
それから、コツコツと2週間程度かけて、オレはこの魔術を完成させることに至る。
……それが、地獄の始まりだとも知らずに。
本題はもうちょっと後です。