34. なんでこうも行動が裏目に出るのか
4文字で分かる前回のあらすじ。
『捕まった』
例のごとく、体を確保されるともう動けないのはお察しなので、オレは不機嫌ですという顔を前面にこれでもかというくらい押し出して周りにガンを飛ばした。
……なにやら可哀相かつ可愛いものを見るような……微笑ましいというか、ペットを見る目をされている気がする。なんだぁ?てめぇら……おら見せもんじゃねーぞ帰れ。
「むすぅ」
「はい、約束のマカロンですわ。甘いモノがあまり好きではないマオの口に合うのかは分からないのですが……」
目の前に先ほどくれると言っていた薄ピンク色のマカロンが用意されたので、強引に奪って、観察してみた。
……ふむ。見た目は随分シンプルだ。小さなキャンドルっぽい感じ……食えるよな?奪った手前食べないという選択肢は無い。オレはソレをさっさと口の中に放り込んだ。
「……ほわぁ……!」
……はわわ。こいつぁとんでもない代物だ……!言うなれば甘さと香り高さの暴力……!程よいアーモンドの風味からのガツンとくる甘味にローズの香り……そう、まるで最強に最強を足したらさらに最強になるかの如き味わい!
ただ、今のオレでも結構甘いと感じるから、これで温かい紅茶があれば完璧だったと思う。イングス王国、いい仕事しやがるぜ……!
「あら。気に入ってくれたのかしら?それならば良かったですわ」
「……うむ」
ちょっとだけ手についてしまったジャムをぺろりと舐めながらサキの顔を見上げると「満足ですわ」という顔をしている。
うん、まぁ…美味しかったからいいか。 ……もういっこないかなぁ。
「ところで……マオちゃん、寮から出て行っちゃうの?」
口の中のマカロンも溶けきった所で、向かい側からユウが心配そうに訪ねた。
「うんにゃ。でてかにゃい」
オレはフルフルと首を横に振る。女子生徒が話していた事は確かに事実で、ディアナ先生から「どうだろう」と誘われてはいるが、オレは断るつもりだ。
まず第一に入学前に既に寮の移動は自己負担と言われている事。まだ実家の財力を頼りに生きているわけで、こんなすぐに引っ越し費用を、しかも原因がアレな物をせびるわけにはいかない。しかも、そこから元の姿に戻った場合、二度移動という事になる。これは結構な重労働と負担になるはずだ。今の寮は初めはどうなるかと思ったけど、正直もう慣れた。お風呂問題さえ解決すればあとはなんだって良いのだ。
第二に、ディアナ先生と二人で生活なんて気が気じゃない。オレだって元男子だ。事情を知っている相手だし、絶対気を遣わせるに決まっている。あと、担任の教師と同棲というのは…ちょっと息が詰まりそう。
「よかったぁ」
それを聞いた一同はほっと胸をなでおろしているようだ。 ……いや、なぜだ。オレがここにいても周りは正直デメリットしかないはずなのだが……。
「……日々の癒しが無くなるかと思ったぁ~」
「うんうん、朝に一生懸命眠さを堪えてぽてぽて歩くマオちゃんを見ないと一日が始まった気がしないよねぇ」
周りの女子生徒もそうそうと頷いている。 ……見せもんじゃねーぞコラァ!!というか飼い猫扱いするんじゃねー!!と、言いたいけれど、喉から口に出掛かった言葉を飲み込んで押し黙る。夜の一件で色々お世話になったから、しばらくは強く出れない。
うん、思い出したら滅茶苦茶恥ずかしくなってきた……。
真っ赤になってきた顔を覆う為に、とりあえずで手に届く範囲にあった枕で顔を隠した。それが、なにやら今言われた事を恥ずかしがったのかと思われたのかその場の全員が可愛い可愛いと口々に言っているようだ。
……なんでこうも行動が裏目に出るのか……。
「にしても髪も尻尾もぼさぼさだね。マオちゃんおふ……」
「それむり!きるもんにゃい!」
ユウがNGワードを話そうとしたので、すぐさま枕の上に顔を出して、大きな声でそれを遮った。そう、あの一件で完全に着るものが無くなってしまったのだ。今日着替えた時点で洗濯に出せるものが無い。毛がペタっとし始めるのは非常に不快だからお風呂には入るけど、着ていた物を交換ができないという訳なのだ。
へっへっへ、完全な殺し文句。これで今日無理に入れられることはあるまい……!
「着るものって……マオちゃん、そんなにお洋服持っていないの?」
「うむ。下着とか用意まにあわにゃかったからにゃ」
「へぇ……そっかぁ~……」
……ユウやサキがにっこりしている。あれ、オレまた何かやっちゃいました……?
「じゃ、買いに行かないとね。せっかくだし、とびきりかわいいの選んであげるから!」
「ええ、私もお手伝いいたしますわ」
…………。
…………なんでこうも行動が裏目に出るのか……。




