25. おひるごはん
……あの後、長々とファッションショーは続き、最終的に今、一番最初に着せられたワンピースに、肩がレースで少し風通しが良いので、冷えてしまわないようにとショールを羽織った格好になっている。
なぜこれが選ばれたかと言うと、白いロリータドレスを着せられた時に真顔で「……一番良くない?」と、二人に真剣に言われ、咄嗟に「最初ので良い!」と言いきったのをキッカケにコレになったわけである。
…………今でも十分恥ずかしいのに、あんなの外で着たら本当に恥ずかしくて死んでしまう。
ちなみに、他の服もユウが何枚かチョイスしてお買い上げしたようで、後日寮に届くと言われた。いらない。
すっかり気を良くしたユウと街を歩いていると、不意にオレのお腹がきゅるきゅるとかわいらしい音をたてた。 ……くそ、この悪いお腹め……。
オレが赤くなっているのを見て、ユウが時計を開いた。どうやら服選びで盛り上がっている内にもう時は13時を回り14時になる頃だったようで、昼食時はとっくに過ぎていた。
「ごめんね、お腹空いたよね。お昼にしよっか」
「…………むぅ」
……ナチュラルに子供扱いされているが、背に腹は代えられないし、腹が減っては何とやらだ。ここは、じっと我慢をして、大人しくユウについていく事にした。
そうして間もなく、シャムロック家の店からそれほど遠くない、近場にあるカフェへと着いた。外装はオープンカフェでテラス席が用意されており、本店の方は木造で綺麗に纏まっている。なかなかオシャレなお店だ。昼食の時間を過ぎていたからか、人がまばらにいるだけのようで、待つことなく席に座れそうだ。
オレとユウが空いていたテラス席に座ると、長身の男性の店員さんがすぐに注文を取りに来てくれた。なんとなく微笑ましいものを見るような目でみられている気がする。 ……料理に旗とかつけてくるんじゃないぞ。
ともかく、渡されたメニューをざっと見て、「コレ」と指さして料理を注文した。オレが選んだのは小さいサイズのミートパイ。 ……この服やたらと高そうだから、汁とかが飛ばなそうなのという理由だ。一方のユウはパンケーキと白パスタを頼んだようだ。
―――……。
オレ達からの注文を聞いた店員さんは厨房が忙しくなかったのか、すぐに料理を持って戻ってきた。ほとんど待たずにありつけるのはありがたい限りだ。
差し出されたミートパイはひき肉がしっかりと入っていて、味付けは濃すぎず、なかなかに美味だ。 ……しかし、予想以上に小さかったからか、すぐに食べ終わってしまった。
この体になりたての頃は、以前と同じ量を食べようとして、食べきれずに何度か料理を残してしまう事がそれなりにあった。それからは仕方なく小さめのモノを頼むようにしているのだが、今回は少しだけお腹が物足りず、お腹6分目という具合だ。 ……まあ、今日はいいか。
温かい紅茶をちびちびと飲みながらふぅと一息ついていると、一足遅れてユウが頼んでいたパンケーキが届いた。デザートに、という事でお店側が少し遅らせてくれたのだろう。配膳されたパンケーキはシロップがとろりと流すようにかけられていて、端にはホイップとベリーが添えられている。いかにも女性に人気があります!といった見た目だ。
ユウはパンケーキを切り分け、一切れ口に入れると「んぅー!」と幸せそうに唸っている。 …………こうやって普通に女の子していれば可愛いのになぁ。
そんな事をぼんやりと考えながらじっと見つめていると、ユウはオレの視線に気が付いたようでこちらに笑いかけてきた。
「なぁに、欲しいの?」
「ちがわい!!」
……どうやら強請っているように見えていたようだ。ユウはクスリと笑うと、ナイフで一切れパンケーキを切り取ってこちらに渡してきた。
「はいっ、どうぞ」
…………いや、ね?
いきなり女子に「あーん」ってされて、自然に食べられるかってんですよ。そもそもな話、オレは甘いものはそんなに好きじゃないから、別に欲しくはない。いらないと拒否しようと向こうを見ると、ユウはキョトンと小首を傾げて待っているようだ。
…………うぅん…………ええい、仕方ない。今回だけだからな!!
オレは意を決して差し出されたそれを目をぎゅっと瞑って口で奪い取ると、フォークからいそいそと離れ、もきゅもきゅと噛みしめた。
…………。
………………!
え、なにこれすごい美味しい!甘くて、ふわふわで、しあわせ……!?え、え、え?パンケーキってこんなにおいしかったの!?ふわぁー!こ、こんなおいしいものがこの世にあったなんて……!?え、すごい!!
「んんんぅぅー!目をキラキラさせて食べてるマオちゃん可愛すぎだよー!!」
「……んにゃっ!?見るにゃバカ!」
……いけない、少しだけトリップしていたようだ。それにしても、パンケーキってあんなにおいしかったっけ……?昔食べた時は「……甘い」って感想しかなかったような気がするのだけど……。もしかして、この体になって感じる味覚が変わったんだろうか?
「……ふふふ!マオちゃん、もう一口食べる?」
「たべる!」




