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19. 魔力の身体強化とはこうゆうものだった


 剣をシィに取り上げられたオレはすぐそばの木陰で膝を抱えて座っていた。まだ、涙は止まっていない。そんな様子のオレを心配してか、シィは横に座って慰めてくれている。


「そもそもの話、マオちゃん自分の体だけでなんとかしようとするんじゃなくて、もっと魔力で補うようにすればいいんじゃない?」


 ふと、シィがなんとも重要そうな事を呟いた。魔力で補う……なんだそれは……?興味を惹かれて、顔を引き上げて、横に座っているシィのほうを向いた。


「…………ぐす……ぇ?」

「女性だと、どうしても肉体的なハンデは出ちゃうけど、魔力で補えば、そのハンデを無くすことができるの。男性と比べて女性の体は魔力を通しやすいからね」


 そう言うと、シィは立ち上がって、先ほどオレが持っていた剣をひゅんひゅんと軽々振り回して見せた。音も鋭いし、シィの細腕から繰り出されているとは思えないほどあの重い剣が軽やかに宙を舞っている。目を凝らしてみると、シィの体の周りにはもやのような光が見える。これがシィの言う「魔力で補っている」という状態なのだろう。


「あとは、腕を固定してから魔力で体に力を溜めて、バネをつける感じで動かすの。力で叩き切るんじゃなくて体で振りぬく感じね。ほら、あの人なんてそうゆう動きでしょ?」


 シィが向こうのほうで打ち込みをしている女生徒を剣で指し示した。剣を振りぬく時に、体がダイナミックに揺れていて、たしかに、どちらかというと力を込めているというより流れるような体の動きな気がする。


 ……そういえば余り深く考えてはこなかったけど、女性の冒険者というのも勿論沢山存在している。そんな人達がどのように戦っているか。街で見かけていた女剣士は筋肉質ではなかったし、恐らくシィが言うように魔力で力を増幅させていたりするのだろう。なるほど、納得だ。


 ただ……オレの目指していた精悍でワイルドで以下略な冒険者とは少し違うような気がするのだけど……。


 ……いや?蝶のように舞い、蜂のように刺すと思えば、クールでスマートな気が……また別次元のカッコよさな気がする。うん、少し元気が出てきた。


「……どうやるの?」


 オレはシィに質問を投げかけた。するとシィは顔をぽりぽりと人差し指で掻いて、困ったような表情をしている。


「えーと……うーんと……ごめん、私も道場で習っただけだから、上手く説明できないんだよね」


 ……シィが言うには、元々小さい頃から道場に通っていたらしく、そこで修練を積んだのだそうだ。そこで、魔力による身体強化の使い方は学んだようだが「チャクラが!気が!第六感が!」と、感覚的な方法でコツを掴む感じだったらしく、説明が難しいらしい。


「でも、マオちゃん魔術科を受けてるみたいだし、コレも魔力に関する事だから、多分教えてもらえる事もあるんじゃないかなぁ」


 ……マジか!段々と光明が見えてきたぞ!今鍛錬が出来ないのは残念だが、それを教わりさえすれば、とりあえずこの体でも戦えそうだ。結果的に魔術科を受けたのは正解だったようだ。ふっふっふ、絶対モノにしてみせるぞ!


「機嫌、直ったみたいで良かったよー。 ……ところでマオちゃん」

「ふっふっふっふ……んぅ?」


 すっかり機嫌が直って含み笑いをしていたオレを見て、シィがオレの前まできて、ピタリととまった。その顔は笑顔ではあるものの、なんとなく恐怖を感じる。


「ちょっとだけ獣臭い」


 ……言うに事欠いて、獣臭いとは……。まあ、確かに一昨日からなんやかんやあってシャワーを浴びれなかったし、もみくちゃにされたり、汗をかいたのをそのままにしていて、髪や耳、尻尾はかなり毛がぺったりとしてしまっている。でも、別にオレは気にならないし、今はそのままでも良い気がする。


 …………ん?獣臭い……獣の匂いか。考え方を変えれば、ワイルドとも取れるのでは……?いっそ猛獣の匂いとかそうゆう感じになって、野性味溢れる男を目指すというのも一興なのかもしれない。ふふふ、さらにやる気が出てきたぞ。


「……お風呂、入ろうか」

「…………。」


 ……ま、マズい。オレが野性味溢れる獣になる前に、シィが野生の獲物を狩る目をしている。ここは……逃げっ!……くっ回り込まれ……!


「逃がさないよ?」


 つ、捕まった。がっちりと脇を両腕で抱え込まれて、体が宙に浮く。そこから必死にもがいてみるが、ビクともしない。


 これが魔力による身体強化……!?


「やっ……やだ!やだ!HA☆NYA☆SE!!」

「はい連行」

「んにゃあああああぁぁぁぁぁああああ!!!」


ようやくTSの醍醐味の一つができるうぅぅ!

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― 新着の感想 ―
[一言] 本物の猫と違って、マオくんちゃんは毛づくろいをしないので臭くなるわけですね。
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