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15. 知らない天井

 

「……知らにゃい天井だ」


 ……いや、マジで知らない天井だ。どこだここ?


 微睡みから目覚めると、何やら個室のような所で寝ていたようだ。辺りを見回してみるとベッドは、オレの寝ていたのと合わせて二つあり、大きな木枠の窓に、ベッドの向こうにはトイレであろう扉、簡単なテーブルに簡易魔道具キッチンに流し台と中々の施設であるように感じる。


 ふと、テーブルの上に何か置いてあるのが目についた。ひょいとベッドから飛び降りて、テーブルのほうを見てみると、置手紙と、鍵型魔道具が二つ並んで置かれていた。置手紙には綺麗な文字が綴られている。


(眠っている間に女子寮に運ばせてもらった。詳しい事がわかればまた呼び出す。当分は一人でこの部屋を使うように。妙な騒ぎは起こすな)


 どうやら、ディアナ先生からのようだ。気を利かせて運んでくれたらしい。横にある鍵は恐らくこの部屋のものだろう。赤のタグに1-2-20と書かれているから、女子寮1番館、2階20号室にいるらしい。


 結局オレは男子寮に入ることは出来ず、女子寮に入れられた訳だ。本来は二人一組の部屋割りの寮なのだが……恐らく、男、立派な狼であるオレは、女子と相部屋はマズいという事で、一人部屋となったのだろう。


 ……いや、それでも女子寮に入れるのは何となくマズい気がするんですが……まぁ、この手紙の妙な騒ぎは起こすなのくだりが、釘を刺しているんだろうなぁ……。だが、不安にならずとも、本当に何も起こす気は無い。


 強いて言うなら、そもここはオレの身のほうが危険な地帯な気がするから、なんかこう、一軒家的な感じのモノを割り当ててもらえるとありがたかったくらいだ。しかし、そんなVip待遇が許されるわけもない。寮から通えるようにしてもらった分感謝するべきだ。


 現状を把握するためにのそのそと、壁に備え付けられた懐中時計を開けると、今は午後9時を過ぎたあたりだ。 ……もう食堂はやっていないだろう。夕食を食べそびれた。


 ……そういえばキッチンに冷蔵庫らしきものがった。何かないかと、片開きの扉を開けてみると、中央にサンドイッチが置いてあった。そして、そこにも皿の下に挿すように置手紙がある。


「えー、にゃににゃに……かわいい寝顔ね。ユウ……」


 …………。


 ………………はぁぁ!?


「あんにゃろー、いつ居やがった!?」


 また、寝顔を見られた!迂闊、なんたる迂闊!というかなんでここでオレが寝ているのを知っているんだよ!?


「ここにいるよー」


 突然玄関のドアが開いて、聞きなれた子憎たらしい声が聞こえ、地団駄踏んでいた体がぴたりと止まった。ギギギとゆっくり顔を玄関の方にやると、ニコニコしたユウがこちらを眺めていた。


「え……。は……?にゃんでお前、ここに……?」

「マオちゃん大変そうだから、私の近くの部屋にしてもらってたんだ。そしたら、かわいい声が聞こえてきたから、起きたのかなーって様子見に来たの」

「近くのへやって……それでいいのか?オレ、オトコノコ。立派にゃおおかみだぞ」

「狼……?うーん可愛い子猫にしか見えないけど……?」

「だれがこねこじゃ!」


 完全に舐められていやがる……。今すぐにでも『ワカラセ』てやりたいが、手紙にあった通り、ここで騒ぎを起こしたら、本当に退学なんて事になりかねない。大きなため息をついて心を落ち着かせてから、近くにあった椅子に乱暴に座ると、頬杖をついて、奴を睨みつけた。


「で?にゃんか用?」

「一応説明をね。寝てたみたいだし。鍵見ていたら分かると思うけど、ここは2階ね。1階部分が共有スペース。右側に大きなシャワー室と浴場があるから、お風呂はそこを使ってね」

「……だからオトコノコのオレが?」


 流石にそのあたりのデリカシーはあるつもりだ。ユウはキョトンとしていたが、あぁと手のひらで拳を受け止めた。 ……さてはコイツ本当にオレが男だって思っていないな……?


「まあ、マオちゃんはいま可愛い女の子なんだし、見られても問題ないでしょ」

「オレは気にするの!」

「ふふ、もしかして見たいの?いいよ、マオちゃんになら……」

「やめっ、やめろぉ!もういいから帰れバカ!!」


 服をはだけさせようとしたユウを止めるべく、オレは椅子から飛び降りてたいあたりしてユウを外に押しやろうとした。しかし、これがビクともしない。ユウは何故かオレに触れて気を良くしたのか、服に手を掛けるのはやめて、嬉しそうにオレを両手で受け止めている。


「はぁぁぁ、可愛い……!けど、明日の準備もあるだろうし、帰るね」

「んにゃう!あたまをにゃでるにゃバカ!二度とくるにゃバカァ!!」


 ひとしきり頭を撫でたユウは良い笑顔で帰っていた。やっと静かになったが……めちゃくちゃ揶揄われた挙句、頭を撫でられるとは……なんたる屈辱。やはり、奴は倒さねばなるまい……!


 ……でもお腹空いたからサンドイッチはありがたくいただこう。


「……はむ……。ぶぇ!!?」


 そのサンドイッチ形状の何かを口に入れた途端、凄まじい嫌悪感がこみ上げてきた。味はまるでこの世のすべてのマズいというマズさを凝縮したようで、鼻から突き抜ける匂いはまるで死の海のようだ。大急ぎで口に入れたそれを近くに備えてあったゴミ箱に吐き出して、気持ち悪さから朦朧とする意識の中で毒を盛られたのかと、サンドイッチを見て……驚愕した。


 外の見た目は別になんてことないのに、断面はなんと、虹色に輝いているのだ。ダークマターならぬレインボーマターである。


 奴の手料理…だったのだろうか。手料理なんて食べた事は無かったけど、どうやら、メシマズ……いや、メシデス属性を持っているという事なのだろう……。サンドイッチでこうはならんだろ……ああ、段々と視界がぼやけてくる……オレは、こんなところで……。


 ユウ、許すまじ……。


りっぱなおおかみ(ネコ科)

評価ブクマ、そして、読んでくださりありがとうございます…!

R-15もしたいですが、もうちょっとギャグコメディにお付き合いください…!

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― 新着の感想 ―
[一言] オオカミなのはマオくんちゃんじゃなくて女子生徒の方なんですよねえ。
[一言] 主人公ちゃんが最高に可愛い!今年一番楽しみにしている小説になりました(* ´ ▽ ` *) 続きを楽しみにしています。お身体は大事にしてくださいね( -∀・)
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