13. 学園案内
説明回みたいな感じです。
ひとしきり強烈な愛でられ方をしたところで、ようやく担任であろう先生が教室に入ってきた。クールビューティーという言葉が似合う先生だ。すらりとした長身、褐色の肌に後ろに纏められた白い長髪。青い目は吊り気味だ。小さな眼鏡に丈の長い白衣で、医師のようにも見える。そして、ビックリするほど出るところ出て、引っ込むところ引っ込んでいる。男子はさぞ眼福だろう。オレはそうゆうのはこの体になってから行方不明だけど。
「……各員、空いている席に着きたまえ」
静かながら澄んでよく通る声が教室に響くと、生徒達はいそいそと開いている席へと駆けていく。はぁ、ようやく解放された……。
先生は全員が席に着いたのを確認すると、教室をぐるりと見まわして、小さく咳ばらいをした。
「……今日から君たち、Cクラスの担任となるディアナ・グレイスだ。私が顧問をしているのは魔医学。医療に興味のある諸君は、私と顔を合わせる事も多くなるだろう」
魔医学とは、普通の医療術とは異なる体系の学問である。医療術はいわゆるケガ、または病気といった身体的外傷や内患等を扱い、小分類では外科、内科、薬学科と3科に分離している。
それと異なり、魔医学は、呪い、瘴気災害といった魔術に由来するものを治療する学問である。主に魔術外科、浄化学科の2科がある。いずれもかなり修めるには難しい分野だという噂だ。
この先生、若く見えるが、実はかなりの才女なのではなかろうか。ほー……と興味ぶかく先生を観察していると、不意に先生と目が合った。
…………ん?
目が合った矢先、先生の肩がびくっと揺れたと思うと、さっと視線を外されてしまった。何だったのだろうか。それは兎も角として、HRは滞りなく進行していく。今日は始業式だけの為、この後はクラス毎に寮や施設の案内があり、そのまま自室に戻る事になるようだ。
……そういえばまだ寮に関して聞いていなかった。時間は掛かってしまうが、しばらくは自宅から通学だろうか。いや、朝一に乗合馬車を利用しても始業ギリギリだ。本当にどうなるのだろうか。あとで確認をしなければ。
そんな事をぼんやりと考えていると、一通りの説明が終了した所で、クラス全員で自己紹介を行う事になった。そして、一番前の一番端に座っていたことで、オレがトップバッターらしい。
……その発想は無かった。仕方なく、椅子から飛び降りて、自己紹介を行う。
「マオ・ウィンディ。耳と尻尾と年齢は気にするにゃ。あとさわるにゃ」
若干心がささくれていたせいか、良い挨拶も思い浮かばなかったので、言いたいことを言って席に座る。上の方から「にゃんにゃん言ってて可愛い」とか「美幼女だ……」とか聞こえてきたが、聞こえなかった事とする。
……またぼんやりしていると、一通りの自己紹介は終了し、学園の案内に移るようだ。
学園は大きく分けて5つのエリアに分割することが出来る。1つ目は、座学を中心とした分野を取り扱う教室棟。Cクラスがあるのがここである。2つ目は、軍事、魔術、ハンターなどの戦闘を教える武術棟。先の禁術事件の森はここの敷地内にある。3つ目は、パーティ、演説などが行われ、広い校庭などもある、多目的ホール棟。入学式が行われていた場所だ。4つ目は、一つの町のようになっていて、学生達が寝泊りを行う、宿泊棟。そして最後に、教員や首脳陣達の勤める施設、看護施設などがある教員棟だ。
かなり大掛かりな施設であることは間違いなく、アイミス連合王国随一というのは伊達ではない規模だ。クラスで歩いて回っていたのだが、それだけで、もう半日が過ぎてしまっていた。
……ちなみに歩幅が小さく遅い、危なっかしいという理由でオレはシィに手を引かれている。解せぬ。 ……抱っこもできると言われたが、全力で拒否した。
ずっと手を引かれて終始ムスッとしていたが、この教員棟の説明で本日の始業式は終了だ。ようやく解放される。あとは寮生活を希望する生徒に渡された鍵のタグで自室の場所を確認、荷解きをするだけである。オレは渡されなかったが……本当にどうなるのだろうか。ちょっと不安になっていると解散の宣言と共にディアナ先生がこちらへ歩いてきた。
「マオ。話がある。付いてきなさい」
「あ……はい」
何やら話があるという事で、オレはシィの手から抜け出すと、ぱたぱたとディアナ先生の元へと向かう。すると、先生は何故かオレの頭を撫でると、行くぞ、と踵を返した。
……うん、何で撫でられたんだ?オレ。良く分からないが、今は考えても仕方ないので、大人しく先生の後ろをついていくことにした。
……しばらく道を進んだところで、オレの歩幅の小ささに痺れを切らしたのか、ディアナ先生がひょいとオレを抱えて持っていくことになる。脇で抱えられるんすね……ああ、もうなんでもいいや……。
色々と諦めて、大人しくうな垂れて拉致される事にした……。




