11. マリ・ウィンディさんの罠
今回はマオの妹のマリ視点となっております。
こんにちは。マリ・ウィンディです。
先日突然、マオ兄さんが、姉さん……うん、無理がありますね、妹になってしまいました。元々、中性的で正直あまり男らしいとは思っていなかったのですが、突然可愛らしい猫耳幼女になったというので、私もとても驚きました。
だけど、変わってしまった兄さんを見た第一印象が「似合ってんなコイツ」でした。なんというか、いっそ、初めからこの姿だったんじゃないかと思うほど、似合っているのです。
今、兄さんは向こうの部屋で何やらうんうんと唸っています。また、一人反省会とかいうやつだと思います。
兄さんは小さい頃からユウさんというシャムロック家のご令嬢に、突っかかってはボロボロに負けて帰ってきます。なぜあそこまで打倒に燃えているのかは、正直良く分かりません。私もユウさんとはまあまあ会う機会があるのですが、可愛がってくれたり、お茶に誘ったりしてくれる良い人です。……まあ、たまに目が怖いのですが。
で、ここ数年はユウさんに負けては「反省会だ!」とあそこで唸っているので、もう私にとっては見慣れた光景なのです。
様子を覗いてみると、兄さんの目の前には、女の子用の制服が置いてありました。リボンが付いていて、とても可愛らしいです。兄さんはちらっとそれを見て、苦虫を嚙み潰したような顔をしては、目をそらしてみたり、頭を抱えたり、首をブンブン振ったりしています。大方「ユウから結局受け取っちまった……でも、やっぱり着たくないから、何とか回避方法を考え出さねば……!」と言ったところでしょうか。
「にゃにかかいひ策をぉ……うむむ……」
……当たっているようです。あんなに可愛いんだから、着ればよいのに。
ところで、正直にいいますと、私は兼ねてから妹が欲しいと思っていました。そんな中、なんの運命の悪戯か或いは祝福か、兄さんが妹になって帰ってきたのです。しかも、見た目はとびきり可愛い妹です。これはもう、神様の思し召しに違いないです。私は兄さんを『調教』して、妹にするしかないと思っています。だから、スカート程度で尻込みされては困ります。
幸い、兄さんはちょろ……いえ、非常に分かりやすい性格ですので、少し背中を押すか、ちょっとだけ脅してやれば、何かと言う事を聞いてくれると思います。
「マオ兄さん?」
「んみゃぅ!?にゃ、にゃんだ、マリか」
わざと後ろから声をかけて驚かしてみたのですが、尻尾を硬直させて驚く兄さんはとても可愛らしいです。
「……オレは今大事にゃ作戦会議中だ。コレを如何にするか……」
……何となく、嫌な予感というか、これまでも微妙な作戦ばかりだった兄さんの事だから、今回も微妙な作戦を立てているに違いありません。とりあえず、作戦を聞き出さねばならないようです。
「で?どうするつもり?」
「うむ!まず、あまりにも男らしくにゃいのがいけにゃいと思うんだ!だから、てはじめにこの邪魔にゃかみを切……!」
…ふむふむ、兄さん。それは絶対に……許しませんよ?
「マオ兄さん…私の許可無しにその髪を切ったら、無間地獄の尽くを味わわせるから」
「じご……!?ちょ、ちょちょ、マリ……さん。で、でもぉ……」
「あと、アカデミーに行って兄さんはなでなでされるのが大好きな女の子って言いふらすから」
「にゃんでぇ?! ……わ、わかった、わかったから!」
よし、脅しはこんなものでしょう。あとは、焚きつけるだけです。
「あと兄さん。考えてみて。その制服はユウさんから受け取ったんでしょ?それは言わば挑戦状だよ。兄さんがそれを着ていかないということは…戦わずに負けるということだよ?」
「そ……!きにゃいにゃんて言ってにゃいだろ!あとオレはまだまけてにゃい!」
「でも、着たくないんでしょ?あーあ。兄さん負けちゃうんだ……」
「…………き……きてやらぁよ!こんにゃセーフクくらい、着てやらぁよ!」
…ふっふっふ。一丁上がり。楽なもんです。
さて、これは第一段階にすぎません。来年私もアカデミーに入学しますし、次のアカデミーの長期休暇には、また会えるでしょう。それまでに、ちょっとは女の子らしくなっているのですよ?
…マオちゃん?




