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一話

小説とは言えないかもですけどたのしんでくだされば幸いです

人には命というものがある。

人にはそれを持つ権利がある。

人にはそれを捨てる権利がある。

これは持ちたがった僕と捨てたがった彼女との物語。


あの日は、ひどく雨が降っていた。

僕がふと公園を見たときに彼女はそこにいた。

傘もささずに長い髪を濡らして、目を伏せてまるで何かを祈るように、あるいは死んでいるかのように。


6月4日の日曜日は前日に仕事が入っていたこともあってか夜までずっと眠っていた。

夜とはいっても、20:00頃なので人によっては夕方と言える時間帯である。

カーテンを開け外を見るとまるでバケツをひっくり返したような豪雨が降り注いでいた。

余り外には出たくなかったが、食事を取っていなかったためお腹が空いていた。

休みに仕事が入り買い出しに出掛けることができなかった。

仕方がないので傘を持ち近くのコンビニへと歩いていく。

スマホを見ると、避難警報が僕の住んでいる地域には出ているようである。

とはいっても、冠水などはしておらず避難警報が出ているのも高齢者向けだった。

コンビニに着くといつも通り牛丼や日持ちするようなものをいくつかカゴに入れ、会計を済ませる。

家に帰っている途中スマホが鳴った。

今は買いもの袋と傘で両手が塞がっていて出ることはできない。

だがこれが面倒くさい上司からの電話であったら出ないわけにはいかなかった。

家まで走ろうかと前を向く、すると見慣れないものがそこには在った。

公園のなかにたたずむそれは、この大雨のなか傘もささずにびしょ濡れで一歩も動かずにそこにいた。

あれは人なのだろうか?

というのも、仮にも避難警報が出るほどの大雨である。

そんな時に好き好んで外に出るような人間がいるのだろうか?

だが、なぜだか僕は彼女の事を放っておくことはできなかった。

理由をつけるのならば、彼女は泣いているように見えたから。

彼女のもとに歩いていく。

そして、彼女の頭上に傘を差し出した。

すると彼女は、まず少し周りを見てそれから上を見てそして僕を見た。

そして、こう言った。

「誰ですか。」と。

その時彼女と目があった。

心の奥を見透かされるような、きれいな目で、だがどこか悲しいようなそんな目をしていた。

「答えないなら通報しますよ。」と。警戒しきった目で彼女は言った。

なので、

「僕の名前は、如月白夜。呼ぶときは白と読んでくれ。」と。すると彼女は

「如月さんですか。私に何か用があるんですか?」

「用と言うか聞きたいことがあってな。まず君の名前は?」と聞くと

「警察の人ですか?それとも保健所の人ですか?いずれにせよ答えたくありません。」

「別に僕は、その手の人じゃないんだがな。まあいいか。んでここで何をしているんだ?」

「別に何も。ただ家にいたくはないので出てきただけです。」

「家族と何かあったのか?」

「答えたくありません。」

「そうか。」と言いつつも、何かしら事情があるんだろうなと思う。

「グウーー」という音。彼女が下を向き恥ずかしそうに震えていることから彼女のお腹が鳴ったんだということは分かったので

「家まで来るか?」と聞いた。

すると「何故?」という視線を向けられたので、買いもの袋を上げつつ

「牛丼あるぞ?」と言った。

すると彼女は、

「変なことしたりしたら潰しますよ?」と怖いことを言い出した。

「何もしねえよと」内心恐怖を感じつつも笑いながら言う。

「牛丼食べるだけですからね。見返りを求められても何もしませんよ。」

と家についてから言われたので、

「牛丼やるから名前だけ教えてくれないか?」と言うと

「私の名前は、白崎黒羽です。」と言った。そして牛丼を渡すと猫舌らしく

「フーッ、フーッ」と何度も冷ましながら食べていた。時間をかけて食べ終わると

「白さん、ありがとうございました。」と言ってすぐに帰ろうとするので

「ちょっと待て。これをやろう」ととりあえずコンビニのレシートに電話番号を書いて渡す。

「何かあったら、公園じゃなくて家に来い。来るのが嫌なら電話しろ。」と言った。

「すみませんけど受け取れません。私もうすぐ死のうと思っていますので。」特に驚きはしなかった。やはりそうかと今までの言動などに納得が言った感覚だった。

この子は腕に包帯を巻いていたが、雨で濡れ少しずれていて傷跡が見えてしまった。

そこにあったのは明らかに悪意があって付けられたような青いアザとまだ血が乾いていないような痛々しい傷だった。

この傷で、家にいたくなくて、大雨の中でも傘をささず、誰も迎えに来なかった。

つまり、彼女は虐待を受けている可能性が高い。この様子だと学校でもいじめがある可能性がある。

だから僕は言った。

「ダメだ。」とたった一言。すると彼女は言った。

「もう嫌なんですよ。親も先生も誰も私の話を聞いてくれなくて、貴方なんて生まなきゃ良かったって。さっき白さんと出会ったときこのまま死ねたらいいのになって考えて白さんと出会わなければあのまま死ぬ気だったんですよ。でも、白さんに会ってしまって少し考えたんです。この人と一緒にいれたらって。初対面の人にこんな事言っておかしいですよね。」と。

「別におかしいことはないがな。んじゃあしばらく家に住むか?」と聞くと。

「え?」としばらくパチパチと瞬きをくりかえした後やっと理解したようで、

「いいんですか?」と恐る恐る聞いてくる。

「だからいいって言ってるだろうが。」というと

「でも、迷惑かけちゃいますよ?」

「大丈夫だ。家事とかはしてもらうから。」というと

「それはしますけど、本当に?」

「本当に。」

「やっぱりわる」

「しつこいな!わかったわかった。僕がお前の事をこの家におきたいんだ。これでいいな!」

「いやでもわ」

「異論は認めんし文句も受け付けん。わかったらさっさと風呂に入ってこい。風邪引くぞ。」

「ふふ。わかりました。本当に白さんは優しいんですね。」と言うので

「なんの事だ?」と言うとまた笑われた。

シャンプーの位置や使い方を教え、とりあえず、僕の使っていない寝間着を置いておく。

すると黒羽は僕の前だというのに脱ぎ始めたので、すぐにその場を後にする。

風呂から上がるとやはりだぼだぼなフード付きパジャマをきて眠そうにあくびをしていたが、どうしようかと迷っている様子だったので、トイレの場所を教えてからソファーに座らせておく。

僕も風呂に入り、リビングに戻ってくると、ソファーで

「すーすー」と寝息をたてて寝ていたのでベッドに起こさないように運んでおく。

それから、物音をたてないように洗濯物を干し、僕もソファーで眠った。


翌朝、

「何で勝手に干しちゃうんですか⁉」と叫び声で起こされた。

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