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初めての服


エルフの集落を出たキープ達は、森の中を進んでいた。


キープの姿は来たときとは全然違う格好となっていた。



ダビー公爵に貰ったローブはボロボロになったので、新しい服をエルフの方々から頂いた……のだが、


「あの……貰っておいて何なのですが、何故スカートなのでしょう?」


キープが情けない顔で服を渡してきたエルフに尋ねる。


手に持っているのは、白いドレスの様な服だった。

その為、下はスカートになっている。


「スカートお嫌いでしたか?」


準備してくれたエルフの女性が悲しそうな顔をした。


「一生懸命作ったのですが……」

「あ、いえいえ、大丈夫です! スカート好きです!!」


エルフの女性が泣きそうだったので、つい言ってしまったが……。

考えたら、あの女性はキープを女の子と思っていたのかも知れない。



だいたい勘違いしていると言えば、一緒に歩いている二人ですら、まだキープを女と思っている。


しかも、いつ正直に言えば良いか見当もつかなくなってきていた……。


特にナシュには……温泉のこともあり、打ち明けづらくなっている。




(うぅ……なんかヒラヒラするし、股が空いているような、何か風が入るような、変な感覚だ……)

キープは歩く度にモゾモゾしていた。


木を跨ぐときやジャンプするときなど、いちいちスカートが捲れる。


長さ的に膝上ぐらいまでだが、動く度に捲れるので、イマイチ落ち着かなかった。




そのキープの手には、曲がりくねった木の枝の様な杖があった。

これは集落を出る際にエニフから貰った杖だった。


何でも魔法の威力を底上げしてくれるとのこと。

最初は断ったキープだったが、どうしてもとお願いされ、貰い受けることとなった。


また、髪型も背中まで垂らしていたロングから、首筋で一纏めに結んでいた。

お陰で少しは涼しくなったが……。


キープとしては切りたかったのだが、エニフさんから、

「魔力は髪に貯まりやすいのよ」


と、言われて切らずに結ぶことにしたのだった。



結果、更に女の子の姿に磨きが掛かってしまった。





キープ達3人はコールマインを目指していた。


キープのテイル村まで行くには、コールマインから南東に進むことで近道となる。



森はマタルのお陰であっさり抜けることが出来た。

流石エルフ、森は庭みたいなものらしい。



来るときは5日かかっていた行程を、マタルのお陰で3日目にはコールマインにたどり着いたのだった。



コールマインの門を抜ける。

破壊された為に木で簡易的に作った門であったが、門番が立っていた。


「お、久しぶり! 聖女様じゃないか!?」


門番は、あのナンパ男だった。


キープを見るなり眩しい笑顔を見せる。


「元気そうで……なんか雰囲気変わったか?」


キープの後ろからナシュが現れて、


「あのね! 服装も髪型も変わってるんだから、雰囲気も変わってるに決まってるじゃない!」


ホント、デリカシーがない……等ぶつぶつ言っている。


「おお、そうか! まぁ、なにわともあれ、ようこそ!コールマインに!」


そうして、ニッと笑うと、


「おかえり!」


と、キープ達を街に入れてくれたのだった。





「キープ!!」


戦禍の残る街を見て回っていると、キープの名前を呼んで駆けてくる少女。


そのままキープに飛び付いて抱きついた!


「キープ!おかえりなさい! 大丈夫だった?」

「ただいま、ベガ! 大丈夫! 元気だよ。 ベガこそ元気そうで」


ベガはキープから離れると、今度はナシュに抱きついた!


「おかえりなさい、ナシュ! キープを見てくれてありがとうね!」

「フフン! キープは私の妹だからね!」

「ええ!?」


ナシュの言葉に目を丸くする。


「ナシュ、それじゃあ誤解するよ~」


そう言うとキープが事情を説明して、


「なるほどね~『お姉ちゃん』……ね」


そう言ってウンウン頷いている。



「ところで……こちらのかたは?」


ベガが、キープ達と一緒にいるマタルを見る。


マタルはエルフと言うこともあり、フードつきのローブで全身を覆っており、フードで頭も隠していた。


見目麗しいエルフは、良からぬ輩に狙われたりもするため、なるべく姿を隠すようにしていた。




ベガにざっと説明すると、驚きはしたものの、

「エルフで聖女だなんて、すごい巡り合わせだね!」


キープを見て、

「じゃあ、今から妹さんを?」


「うん、そのつもり。 マタルさんに『ディスペル』を教えつつ村を目指すよ」


そう告げた。



ベガは、それを聞いて腕を組み、暫く思案していたが、

「じゃあ、私も行く!」


「え?」


「アルミナの方も大体片付いたし、キープにはさんざん街を助けて貰ったしね。 今度は私がキープを助けたい!」


キープの目を見て、ハッキリと告げる。


「僕の方こそ、コールマインの人達には助けて貰ったよ。 だからそれは気にしないで」


キープもベガの瞳をじっと見つめると、

「ベガが来てくれると助かると思う。 ベガが良ければお願いしても良いかな?」


ベガの意思を優先する形でお願いした。


ベガは嬉しそうに、

「ありがとう、キープ! またパーティーだね!」


そう言って再び抱きついて来たのだった。



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