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初めての脱走


女エルフは、キープを助け起こすと、


「『ヒール(小回復)』」


キープの赤く腫れた頬や切った口内が治った。



「大丈夫だった?」


心配そうにキープを覗きこみながら、再度聞いてきた。


「だ、大丈夫です。 助けて下さりありがとうございます」


男エルフが気絶したおかげで、『サイレンス(沈黙)』は解けたようだ。



「本当にごめんなさい。 同族の中からこんなやつが出るなんて……」


そう言うと、気絶している男エルフを睨み付けた。



「いえ、貴女のおかげで助かりました。危うく……」


キープは言葉を切る。

そこまで言わなくて良いだろう。



「それより、どうしてここへ?」


キープの問いに、女エルフはキープの目を見て、


「やっぱりこのままにしておけなくて……」

「このままと言うと……」

「あなた達を死なせるわけにいかないわ」


そう告げると、


「行きましょう、逃げるわよ!」


二人して牢から出ると、男エルフを牢に閉じ込めた。



「あと、これ返しておくわ」


キープの杖とナシュの剣を渡される。


「な、ナシュも助けて下さい」

「わかってる、待ってて」


別な牢にいくと鍵を開けて中に入った。


……暫くして、ナシュと二人して出てくる。


「キープ!!」


泣きそうな顔をしているナシュが、走り寄ってきて抱き締める。


ぎゅ~!


「ナシュ苦しい~」

「ああ~、ごめん! キープに会えて良かった」


ナシュはキープから離れると、


「ちょ! どうしたのその格好!?」


裂かれているローブに気付いたらしい。



「ま、まさか誰かに?」


怒りでわなわなしているナシュに、


「大丈夫、何も無かったから」

「本当に? すごい破られてるけど……」

「うん、平気」


詳細を言うと男エルフを切り捨てに行きそうだ、(僕も許せないけど)ここは我慢しよう。


「そうだ、助けてくれてありがとう!僕はキープ」

「私はナシュよ」


女エルフは二人を見ると、

「私の名は、マタルと言います」


お辞儀をすると、


「さぁ、では行きましょう。 今のうちに少しでも離れるのです。」



そう言うと前を向いて進み始める。


「ちょっと待ってください! 私達の荷物は?」

「ああ、そっか、ごめん」


そう言うと、門番が居た所の、岩の窪みからキープ達のリュックを出してくる。


キープ達がそれを背負ったのを見ると、


「じゃあ、行きましょう。 早くしないと見つかってしまう」



そう言って集落とは反対方向の森に入っていく。


キープとナシュも慌てて付いていった。





道なき道、生い茂る草を払いながら進む。


草を払いつつなので、どこを逃げたかが一目で分かる。


ナシュもそう思ったのか、


「こんなに痕跡残して大丈夫なんですか?」

「エルフ達は『トレース(追跡)』の魔法を持っているわ、痕跡を消しても無意味だし、時間の無駄になるわ」


先頭にたって進みながら、マタルが返答する。



そうして三人は黙々進むが……。


少ししたところでキープが膝をついた。


「はぁはぁはぁはぁ……」


体力が尽きたようで歩けなさそうだ。


「仕方ないわね……少し休みましょうか」

「はぁはぁはぁ……す、すみません」

「良いのよ。もしきつかったらお姉ちゃんがおぶってあげるからね」

「はぁはぁ……最悪お願いするかも……しれません……」

「任せなさいな!」


自称お姉ちゃんが、嬉しそうな顔をする。


「……今のうちに、話しておくわ」


マタルがキープとナシュの前に腰を下ろすと、


「あなた達を助けたのには、理由があるの」

「理由?」


息切れ切れのキープに代わりナシュが怪訝そうに尋ねる。


「先程会われたと思うけど、エルフの女王様は昔はあの様な方ではなかった。 それがある時を境にああなってしまわれた」

「ある時とは?」

「エルフの女王は、数ヶ月に一度、森の禁忌と言われる場所に行くのよ」


『禁忌』と言うワードにキープが、体を固くする


妹ミーシャの事が一瞬よぎる。



マタルの話しは続いて、

「二ヶ月前に禁忌の場所に行ってから……、それから女王様の様子が変わってしまわれた」


ここでマタルはキープをじっと見てくると、


「助ける代わりに、女王様を元に戻して欲しいの」



「……なぜ僕達何ですか? 他にもエルフの方々はいらっしゃるのに……」

「先程も言ったけど、そこは『禁忌』と呼ばれる場所で、女王以外のエルフは立ち入る事が出来ない……」

「何故戻されると分かるのです?」

「以前、自分こそが女王に相応しいと、一人のエルフが入っていったらしいけど、何度入ろうとしても、入り口に強制的に戻されてしまったらしいわ」


キープは更に続けて、

「それでは僕達も同じ様になるのでは?」

「エルフの女王と一緒に同行するものは戻されないわ。女王が幼い時はお付きの者が一緒だったらしい」


「?? 回答になっていないのでは? 他のエルフは戻されるが、女王と同行なら大丈夫ってことだけですよね?」


マタルはちょっと目線を泳がすが、直ぐにまたキープを見つめて、

「『禁忌』の場所へは、女王の……女王の血筋を引いたものしか入れない。私は……」


一息つくと、

「私は、現女王エニフ・シータの娘。マタル・シータなんです」


そう言うと目を伏せた。

一日一投稿は死守出来ました!


待っていた方いらっしゃいましたら、お待たせいたしましたです。


でも、明日も夕方とか夜になるかもしれません。

なるべく急ぎますがご容赦下さい。

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