初めての魔王軍
コールマインの正門は破壊され、黒焦げになったガードが幾重にも重なっている。
魔人の魔法によりあっさりと正門を突破されたコールマインの守備隊は、戦線後退を余儀なくされており、現在は街の中心まで戦火に覆われていた。
「第四射 撃てー!」
グステンの声にガードの弓部隊が矢を降らすが、
「『静かなる海 一遍の風さえもそよがぬ『カーム(凪)』」
敵の魔法により矢が全て落とされる。
ガードの近接部隊は、全て正門に集まっており全滅してしまい、今は魔術師と弓などの遠隔部隊しか残っていなかった。
その代わり前線は冒険者達が食い止めていた。
「はぁ!!」
ナシュの剣が煌めき翻ると、魔人の腕を切り飛ばした!
そのナシュに迫る刃をベガが叩き折る!
「ありがと、ベガ!」
「貸し、23ね」
「まだ22!」
腕を落とした魔人にとどめを刺す。
ナシュ達も他の冒険者に交じって前線で戦っていた。
魔人を倒した二人に次の魔人が襲い掛かる。
今度の魔人は手に鉤爪を付けている。
素早くベガに寄ると連続して爪で襲い掛かる。
同じ格闘同士でも武器があるとリーチも伸びる上、うかつに懐に入れなくなる。
ベガは距離を取って防御に専念しつつカウンターを狙う。
大振りの攻撃が来た! 隙が出来きるが、ベガは突っ込まない。
それはわざと敵が作り出した隙で、罠だった。
ただし、突っ込んでくることを想定した罠なので、それ以外は読んでなかった。
魔人の足元に火炎瓶が投げられる!
「!?」
慌てた魔人の懐に入り込み胸と腹に連続で拳を叩きこんだ!!
罠ではない本物の隙のおかげで魔人はそのまま地に伏せる。
「ベガ、火炎瓶なんて持ってたの?」
「この前蝙蝠退治のやつ。余ってたんだ~」
そこへ長槍が突き出される!
それをさっと躱す!
次の魔人が来たようだ。 二人は魔人を挟むように立つと一斉に襲い掛かった!
「おい! どうなっている? 全然前に進まないようだが?」
エルライは全体指揮を執りつつ、側の部下に尋ねた。
順調に街の真ん中まで進撃したものに、そこから先に進まなくなり膠着していた。
「すみません、急に敵の統率が良くなりまして……」
部下がひれ伏しながら答える。
急に進撃を止められたことで苛立ちが募る。
(くそっ、失敗すると今度こそ死ぬ……)
そんな時、エルライの目が一人のドワーフを捉えた。
戦場を大声で鼓舞している。
(あいつか……統率しているやつは!)
エルライは剣を抜き放つと戦場を駆け抜けた!
グステンはガード弓隊の後方から指示をだしていた。
「左翼、広がり過ぎだ! 敵の数は多くない! 1体に2人以上で取り付け! 各個撃破が有効だ!!」
更に、
「弓隊は敵の魔術師を他の援護に行かせるな! 3列交互に弓一斉射! 魔術師は全体を支援!!」
グステンは元々王国で守備隊をしていた。
引退する時に、ここコールマインの守備を国から任されたのだった。
その為守備における戦術は少しは知識があり、国もそれを把握していたのでここを託していた。
ただ、コールマインの重要性が分かっていたからこそであるが、そこを守る要としての兵力はケイナンに集められてしまい、コールマインは兵力が低い状態だった。
そんな中、
「グステンさん! 敵の一人が中央突破してきます!!」
「なに!」
瞬間、目の前に黒いローブの男が現れ曲刀で切りつけて来た!
グステンがそれを辛うじて躱す。
腕の皮を少し切り裂かれた。
そのまま後方に跳躍し距離を取る!
ローブの男は着地したグステンに更に襲い掛かる。
グステンは腰のハンドアックス(片手斧)を構えると、それを迎え撃った!
ガギン!!
男の曲刀を斧で止める!
(曲刀と斧で打ち合うなど笑止!)
曲刀はその形状から『切る』事に特化しており、刀身も薄くそこまで丈夫ではない。
斧の様な厚い刃の物を受けるのは悪手に思える。
が、
グステンの右腕が宙を舞った!!
「なっ!」
受け止めた斧を断ち割り、グステンの腕を切り捨てていた。
「そ、そんな馬鹿な!」
グステンが血の噴き出る切断面を反対の手で押さえる。見る見る血の池が出来ていく。
そんなグステンに再度襲い掛かろうとしたローブの男だが、
「グステンさん!」
周りにいた守備隊の面々が助太刀に入る!!
「ちっ! 邪魔だ!ゴミども!!」
それを引きちぎる勢いで切り裂いて、刻んでいく!!
「な、なんて強さだ!」
「強い!」
守備隊の腰が引ける。その間を縫って、再度グスタンに襲い掛かる!
2つの曲刀は、それぞれグステンの左腕と首を宙に舞わせた!!
「グ、グステンさん!!」
ローブの男は用は済んだとばかりに身をひるがえすと、戻りがてら守備隊を切り捨てていった。
これによりコールマイン守備隊の統率が乱れ、魔王軍に戦線を押し上げられてしまうのだった。
表現大丈夫でしょうか?
喜んでくれるよう頑張ります。




