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初めてのダンジョン

途中の行程などをかなり省略しております。


都市を出て暫くすると、さっそくキープの弱点が露見することとなった。

……あまりにも体力がないのだ。

一人旅であれば自分のペースで歩き、自分のペースで休憩も出来る。


だが、パーティだとそうはいかない。 何よりキープは体力が低かった。



「あの……大丈夫?」


ジュジュがキープを下からのぞき込む。

キープは小柄だが、ジュジュも小柄な方なのでのぞき込めるのだ。


「はぁ……はぁ……だ、大丈夫……」


キープは息絶え絶えに返答するが、どう見ても大丈夫そうではない。


「まぁ、仕方ないよね。 休憩にしよ~」

ルマが声を掛けて休憩となる。




来た道を振り返ると、遠くにパウス辺境都市が見える……まだ3kmほどしか来ていなかった。




その後も休憩をこまめに挟みつつ進み、日が暮れたところでキャンプとなった。


「あ~あ、野宿になるとは思わなかったぜ」


ギリムがぼやく。


「ご、ごめんなさい。 僕の歩きが遅くて……」


キープが少ししょげる。

そんなキープに手を置き、


「焦らなくて大丈夫、ゆっくり行こう」


リーダーのガイが笑顔で声を掛けてくれた。

さすがリーダー、パーティの支えになる存在だ。


「ガイさん、ありがとうございます」


うるうるした目でキープに見つめられたガイは照れて赤くなりながらも、


「気にするな。それよりさっき唱えていた『サンクチュアリ』って?」


先ほどキープがキャンプの周辺に張った魔法について訊いてきた。


「あ、えとですね。『サンクチュアリ(聖域)』は、地面に置いた楔を中心に魔よけの結界を張る魔法です」


キャンプしている場所を中心として正方形型にクリスタルを置き、魔法を唱えるとピラミッドの様な4角錐型の結界を張ることが出来る。この結界は魔の力を通さないので、魔物や魔獣を遮ることが出来る。

ピラミッド型なのはこの形が一番丈夫なためだ。

ただし、さすがに魔人以上になると結界の方が壊れてしまうのだが……。



ほー……と雷光の刃のメンバーが感心したような声を上げる。

訊いてきたのはガイだが、他のみんなも聞いていたようだ。


「キープってやっぱり凄いね! これがあれば安心してキャンプ出来るよ♪」

ルマが嬉しそうに言うと、


「です。こんな上位魔法初めて見ました!」

ジュジュは違う方向で嬉しそうだ。



こうして夜は更けていき、朝が来るとみんなで再びロップ村を目指して歩き出した。






何度も休憩を取りつつも、昼にはロップ村に着くことが出来た。


「よし!着いた」


ガイが告げると、キープが倒れこんだ。


「はぁ……はぁ……やっ、と……着いた」


ダンジョンも戦闘もまだなのに、キープだけ見ると満身創痍に見える。



「大丈夫か?ほら、宿までおぶってってやるから……」


ギリムがキープを支えつつ立たせようとして、

(こいつはどうやっておぶれば……?背負うか?お姫様抱っこか?)

 

「あ、ありがとうございます」


ギリムの結論が出る前にキープがギリムにおぶさった。

キープにとっては男同士だし羞恥はあまりないのだろう。


「はいよ、じゃあ行くぜ」


そのままキープをおぶったギリムと女性二人は宿に向かった。

ガイは一人村長に詳細を訊くため歩いて行った。



村長からは大した情報も聞けず、未だ魔物や魔獣の発見などは無いらしい。

ダンジョンの場所を細かく伺い、翌日村を立って向かう事となった。





「ここだな?」

村を出て1時間ほど森を進むと、地面に大きな穴が開いている場所に出くわした。

中は暗く湿った風が吹き出している。


入口だけで数メートルの幅があり、高さとしても3メートルぐらいあった。

結構な広さであり、ロングソードを使うガイとしては好ましい様だ。

狭いと十分に武器をふるえない。



全員ランプなどは持っていたが、ガイとルマが松明を持った。

いざ戦闘時に床に投げ捨てることが出来て、かつ光源も確保できる為だ。

ランプやカンテラなどは放り投げるなんて出来ないし、魔法の明かりもあるが

火の方が虫よけやガスの有無など、色々利点が多い。



「行くぜ」


ギリムとガイの2人が前衛、その後ろにルマとジュジュ、最後尾にキープで穴に入って行った。





ダンジョンは入り口から緩やかに下って先へ先へ続いている。

土が柔らかいのか足音はしないが、少し足を取られる。

何が起こってもいいように気を配りつつ進む……松明が「ジジッ……」と音を立てる。



(ん?なんだろう?……)


最後尾にいたキープだが、右の壁に違和感を覚えた。

ギリムは気付かなかったか、もしくは罠でない為スルーしたのかも知れない。

右の壁にクリスタルが埋まっているのが見えた。


クリスタルはサンクチュアリで使用するが、魔力が結晶化したものと言われ、自然豊かな場所で良く見つかる。


これもそういった類だろう。


(サンクチュアリで使うし取っておこうかな)


キープは壁に寄ってクリスタルを取ろうとした__。




「あれ?」

それに気づいたのはルマだった。


弟に見えるキープを気に入ったのもあり、キープがいなくなっているのに最初に気づいた。


「キープ?」


ルマの声にみんなも足を止め後ろを振り返る。


「キープ、どこ?」


他のメンバーも首を傾げる。


「探しに戻ろう」


ガイがそう告げた時だった。



「危なねぇ!」

ギリムがガイに飛来した矢をダガーで叩き落した。


「なっ!」

ガイが前方を見ると、多くのゴブリンがこちらに忍び寄っていた。


気付かれたのが分かると、ゴブリンたちは武器をかざして襲い掛かってきた。



「敵だ!」


ガイが松明を投げ捨て剣を抜きつつ声を掛けた時には、全員戦闘態勢に入っていた。

ギリムに矢を飛ばそうとしていたゴブリンにルマの矢が突き刺さる。

頭部に矢が刺さったゴブリンはそのまま絶命する。

ガイとギリムの武器が先頭のゴブリンどもを切り裂く。

ジュジュの火球がゴブリン達の真ん中で弾ける。

だが、ゴブリン達は次から次へと襲い掛かって来るのだった。





(う……いたた……ここは?)


キープは目を覚ました……が、真っ暗で何も見えない。


(ええと、ランプは……)

手探りでリュックを漁り、ランプと火打石を取り出し明かりを灯す。

ぼうっと辺りが照らされる。



(どこだろう、ここ?)


立ち上がってみたものの、どこだか全然分からない。

ふと上を見ると穴が開いている。


(ああ……そうか、クリスタルを取ろうとして落ちたのか……)

キープが壁に寄った際、緩くなっていた床が抜けて落ちたらしい。

咄嗟すぎて声も出ていない……その為他のメンバーはキープの落下に気づけなかった。



(あ、クリスタル)


落ちた拍子に一緒に落ちてきたのかクリスタルが落ちていた。


それを拾い懐に入れて……


(さて……先ずはみんなを探さなきゃ)


落ちてきた場所に杖で目印を入れて歩き出す。



ただし、ゆっくり……慎重に……。



キープは力も体力もない……敵に見つかればまず殺されるだろうから……。


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