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初めての雷霆


ファルシオンの男が消えた場所をじっと見ていた女性だが、振り返ると、


「お前達は何者だ?」


キープ達を見ながら聞いてきた。


が、その問いに答える前に、


「デネボラ様!!」


ファクトが叫んで倒れている女性へ駆け寄る。


それは聖衣を着て倒れている女性であった。


「おぉ……、何てことだ」


キープも急いで駆け寄ったが、既に事切れていた。


首と脇腹に刀傷が付いており、恐らく首の傷が致命傷だろう。

首から流れた血が辺り一面を血の池に変えており、聖衣も赤一色に染まっていた。


(そんな……聖女様が)

キープにとってもかなりショックで言葉が出なかった。



そんなキープ達に、


「お前達はなんだ? 何をしに来た?」


女性が再び問いかけた。

聖女のことは目に入ってないように。



「私はケイナン守備隊副隊長のファクトと申します。 勇者ミアプラ様ですね? 一体これは? 何故聖女様が?」

「何だ、ケイナンの者か。 そいつは敵の攻撃で死んだ。それだけだ」

「それだけ……とは? お仲間ですよね? 勇者様が居て一体何故?」


ナシュが問い掛けると、興味が無いような顔で、


「別に仲間とかではない。そいつが勝手に着いて来ただけだ」

「そんな!?」


ミアプラの言葉にファクトが悲鳴の様な声を上げる。



「デネボラ様は勇者様をお支えになりたいとおっしゃっておりました。 勇者様はそんなデネボラ様をー」


ファクトの言葉を遮り、


「悪いが私はそいつのお守りじゃない。私は私で魔王を討つために動いている。 弱いやつは逆に足手まといなだけだ」


ミアプラはデネボラの死体を冷酷に見下ろした。



「あ、あんたそれでも勇者なの?」


ナシュが怒りを込めてミアプラに詰め寄る。

それを意に介さず、


「話が終わりなら私は行かせてもらう。 魔人の1人に逃げられたしな」

「な! ま、魔人!?」

「ああ、そこに転がっているのもそうらしい。『傲慢のウェズン』とか名乗っていたと思うが、何しろ名乗りの途中で切ってやったのであんまり憶えてない」


ミアプラが顎で指す先には、先程切られたローブの男が首と胴体を別々に晒していた。


(魔人を倒すほどの実力者)

確かに先程の動きや剣さばきからも勇者ミアプラはかなり強いだろうと思われるし、実際キープには剣筋は全く見えなかった。



しかし、それにしてもデネボラへの扱いは酷いように思われた。

ただ、キープ達がここに来た目的もある。

怒りを抑え、


「勇者ミアプラ様、すみませんがケイナンを救って貰えませんでしょうか?」


キープが頭を下げる。

ファクトとナシュもキープに習い、頭を下げた。



「ケイナンを救うとは?」

「ケイナンは今、敵の残存兵力に包囲されております。我が部隊少数が街の住人を守っていますが何時まで持つか……。お願いいたします。敵の包囲網を撃ち破って下さい」


ミアプラは少し思案すると、


「成る程、かなり数を減らしたと思っていたが、まだ残っていたか」


呟くと、


「ケイナンは何処だ?」


窓際に行くと、ケイナンを探し始めた。

ここは砦の最上階、遠くまで見える為、ケイナンも目の届く範囲にある。


「ミアプラ様、ケイナンはあそこです。 あの少し煙が出ている辺りです」

ファクトが勇者の横に立って、ミアプラに場所を示した。


「あそこだな?」


勇者ミアプラがケイナンと思われる場所に手を向ける。


「幾千幾年を超え、神鳴る力を顕現せん、千の刃、万の鉄槌……」


勇者ミアプラが何かの魔法を詠唱し始めた。

かなりの魔力が勇者を、大地を、大気を、駆け巡る!


「ゆ、勇者様、一体何を?」


キープが嫌な予感に駆られて声を掛けるが、詠唱は止まらない。


「全てに悠久の時を……、霞む朝、永久の闇……何者も何者にも解放を与え、廻る時の欠片とならん」


(こんな長い詠唱なんて初めてだ! 一体何を?)

キープも色々な文献を見てきたが、こんな長い詠唱の魔法は聞いたことも見たこともなかった。


そうしているうちに勇者の詠唱が完了した。


最後に一言。


「『ケラウノス(雷霆)』」




瞬間、窓の外がまばゆい光に包まれる!!


その後、耳をつんざくような轟音が鳴り響いた!!!




暫くして、キープ達が目を開けると、


勇者ミアプラが手をかざしていた先の景色が、一変していた。



かなり遠くの方まで、焦土と化した大地が続いている。

森も岩も草も木も……そしてケイナンの街も、何一つ残っていなかった……。






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