初めての王都
【パーティー解散 1か月後】
王都アルファルド__その大門の前にキープはいた。
商業都市リカオンを出発して、定期馬車で1週間かけてやっと到着したのだった。
王都だけあって、都市を囲む塀はかなり高く、塀の上には見張りをしている兵士も見える。
王都は大陸の中心にあり、魔の生物がいる北部にも近い、
その為王都から北部に行った所には、砦や大きな塀がいくつも建設されており、常時王国国境警備隊が待機している。
王都の大門もはね橋式になっており、王都を大きな堀が囲っていて万が一への備えとしている。
また、王都の中にも外壁、内壁と呼ばれる二重の塀があり、それぞれが防衛ラインとなっている、
王都を囲む塀と外壁の間に市民街があり、外壁と内壁の間に貴族街、内壁内に王城となっている。
遠くからでも王城が高くそびえたつのがみえており、キープもそれを見上げながら門をくぐろうとした。
「お待ち下さい」
門の守衛に止められる。笑顔で丁寧な人の好さそうな人だった。
(あ、そうだった。身分証出さなきゃ)
「ごめんなさい、こちら身分証です」
と冒険者カードを出す。
冒険者カードを見ていた守衛は、
「キープ様ですね。こちらへ」
と、キープを1台の馬車に案内する。
「え?これは?」
「こちらにお乗りください」
守衛さんは心配いらないという風に笑顔で応える。
(馬車で王都内に運んでくれるのかな?)
馬車に乗り込むと、
ガシャン!
全ての窓と扉に鉄格子が降りて来た。
「ええ!!」
驚くキープに、笑顔だった守衛が、
「お前には捕縛の勅令が出ている。このまま牢屋まで行ってもらう」
笑顔だった顔が、冷酷な表情になっている。
その目は犯罪者を見る目だった。
「ええ~、僕何もしていないです!」
「そうはいっても国王からの勅令だ。可愛い顔したお嬢ちゃんの癖に何をしたんだか……人は見かけによらないな」
「もう! 僕男ですからね!」
「そりゃ失礼」
言うだけ言って守衛は従者に馬車を出すよう告げて、守衛業務に戻って行った。
馬車はゆっくり動き出し、大門を通って市民街を抜けていく。
かなりの人が賑わい、どこの建物もオシャレで輝いて見える。
キープを乗せた馬車は鉄格子がはまっており犯罪者運搬用の形へと変わっていた。
まるで走る牢屋の様な姿だ。
さっき乗り込むときは魔法で形を変えていたのだろう。
すごく目立つため、街の人達の視線が集まる。
「うぅ」
市民の好奇の目が痛い……。
人々の目にさらされながら、外壁の門を抜けて貴族街に入る。
貴族街からも好奇の目で見られる。
こちらは大きな屋敷が多く、人もそこまで多くなさそうだ。
貴族の娘たちがドレス姿で楽し気に話をしていたが、
キープの乗った馬車を見るや、顔を顰めてひそひそ話し始めた。
(何もしてないのに、なんで……)
着いてそうそう訳が分からないまま、キープは王城に運ばれていくのだった。
王城について馬車から降ろされると、荷物を全部没収され、手に枷を掛けられた。
そして、紫色の首輪を掛けられる。
キープは知らなかったが、この首輪には魔法を封じる力があった。
城の衛兵が二人出てきて、キープを両脇から拘束して城の中に連れていく。
キープはなすがまま、言われるがままにしていた。
ここで何を言っても無駄だと思えたからだ。
そうして、何やら荘厳な広いロビーの様な場所に連れてこられた。
「ここで正座だ! 早くしろ!」
衛兵から膝をつかされ、頭を押さえつけられる。
「もっと頭を下げろ!」
おでこが床に着く。
(う~何もしてないのに!)
不満に思いつつも声には出さず、言われた通りにして暫く待っていると。
「お前が冒険者キープ・カッツか……」
重々しい声が聞こえた。
「……」
頭を伏せたまま無言でいると、
「答えろ!」
後ろの兵士から背中に蹴りを入れられた。
「ぐっ……そうです」
「そうか。……儂はこの国を治めている、カウス・アウストラリス十四世じゃ。」
(お、王様!?)
声を聞く限り、かなりの御高齢であろう、しゃがれた声であった。
王と言う立場からか声には重い響きがあり、かなりの威圧、威光を感じる。
(どうして王様が僕なんかに??)
いきなりの王様登場に面食らっていると、
「さて、今回お前を捕まえた理由だが……、勇者シリウスを知っているな?」
「……はい」
「シリウスは魔人に殺されたと聞いている、相違ないか?」
「はい」
「確かに直接な原因は魔人だが……、キープよ、お前は魔人を補助したな?」
「補助??」
「シリウスは魔を感知する力があり、それにより魔のものから不意打ちを防ぐことができる。今回それができなかったのはお前が魔法で拘束していたからだと聞いている」
「そ、それは……、シリウスが私の仲間を」
「黙れ」
静かで重い、それでいて響く声、
「お前の仲間がどうなろうと、それは知ったことではない。 問題はお前のせいで勇者シリウスが死んだことじゃ。 勇者がいなくなった、それは魔王を止める可能性が減ったという事じゃ」
「……」
「魔王が倒せなければ、何百何千何万と人が死ぬ。それの抑制としても勇者がいる。勇者がいることで魔王もこちら側に攻めてこれなんだ」
「……」
「勇者が死んだことで、好機とみなし魔王が攻めてくることになるやもしれぬ」
「……」
「これがお前の罪。お前はこのまま永久に牢に入ってもらう。」
これにはキープも焦っていた、このままでは妹を救うどころではない。
(何か手は……)
一生懸命思考を働かせる。
(今までの事を思い出せ!何かあるはず……何か)
(!?)
王の指示で衛兵がキープ立たせてロビーから連れ出そうとした時、
「お、王様」
去ろうとしていた王が振り返る。
ここで初めてキープは王をみた。
老骨ではあるが顔立ちは堀深く、眼光はかなり鋭い。この先祖代々伝わっているとしても、この国をその手腕で納めているだけはありそうだ。
長い髪も伸びた髭も真っ白だ。
頭には金細工の冠が載せられている。
「なんじゃ?最後の言葉か? せめてもの情けで聞いてやろう」
「僕が、魔人を倒して見せます」
「ほっ……たかが冒険者が大きく出たな?そこまでして命乞いか?」
「違います。僕は今までに2回魔人に会っている。そのうちの一人が『また会いに来る』といっていました」
「何のために?」
「僕の魔力は魔人からみたら『美味しそう』だそうです。だから魔人が狙ってきたところを返り討ちにします」
「ふぅむ……」
白いひげを撫でつけつつ、キープを真っ直ぐ見据えてくる。
ここで目線を逸らすわけに行かない。
キープもじっと見つめ返す。
「……いいだろう」
暫くそうしていたが、王が口を開く。
「魔人を倒すというなら見せて見ろ。ただし、お前には監視を付けさせてもらうし、もし逃げたらお前もお前の家族も処刑とする」
(逃げることは出来ないという事か……)
「それと、ずっと待てるほど儂も気は長くない。 魔王の軍が攻めてくる、それまでの間にだ。魔王が攻めてきたら魔人は軍団長として各部隊の指揮を執るだろう。そうなればお前の元に来るとは思えん」
これでいつ魔人がきても即倒せるようにしなければならなくなった。
時間もチャンスも少ないだろう。
それでも妹を……今回は自分も含めて、救う手立てが他になかった。
「レグルス、アルドラ」
王が2人の兵を呼び寄せた。
「レグルスこちらに」
「アルドラはせ参じました」
2人の男女が現れて王に片膝をついて頭を垂れる。
「お前たち両名には、こやつの見張りを命じる。もし逃げたりした場合、即首をはねろ」
「「ハッ!」」
「では儂は戻る。キープとやら、せいぜい励むがよい」
そう言い残すと、カウス王は部屋を出ていった。
王都のイメージ的には「進撃の~」でしょうか?
壁3枚です。
大壁>市民街>外壁>貴族街>内壁>王城 みたいな感じです。




