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新たなる戦法


完璧に捉えた……ハズだった。


なのに、


「なかなかやりますね」


カストルの首を斬り落とすことなくロードの剣はカストルの首に食い込んだ形で止まっている。


いや正確には……、



ロードの剣はカストルの首にある口……そしてその歯で噛み止められていた!


「く、首に口が……」


呻くように告げるロードにカストルが手を伸ばしてその腕を掴む、


そして体を密着させるとそのままロードに囁いた、


「首だけではないのよ」


瞬間ロードの体に激痛が走る!!



「ぐあぁぁ!!」


カストルを突き飛ばすようにして離れると……、


掴まれていた腕や密着されていた太腿など、数か所から出血していた。

そしてそのどれもが肉を抉られている。


「フフッ」

笑うカストルの腕や手、太ももが赤く染まっている。

そしてそれぞれの口がくちゃくちゃと何かを咀嚼している。

ロードの体を食いちぎったのだ!


カストルが笑いながら、

「あなた結構筋肉質ね。 硬くて美味しくないわ」


「お、お前……その口は……」


手のひらにある口から垂れている血を舌で舐めとる。

幼い姿にも関わらずその顔は恍惚としており妖艶に見える。


「私、体のどこにでも口を出せるの」


「な、何て奴だ……」


ロードが激痛に片膝をつく。


そんなロードを見ながら、


「どこにでも口があると便利なのよ? 抱きしめた相手の体中から肉をむさぼれるし、食事の効率も良いし時間も掛からないわ」


傷ついたロードを支援しようと、ハマルとアルタイルが同時に仕掛ける!!


「『射撃種シードショット』」

「やぁ!!」


ハマルの足元から筒状の植物が生えてきて、種子が弾丸の様にカストルに向かって撃ち込まれ、カストルを挟んで反対側からアルタイルが二射連続で矢を放つ!


すると、カストルは両手斧を二つに分けて片方の斧で弾丸を受け止め、片方の斧で矢を叩き落とす!



「斧が二つに!」

驚くロード達の前で、片手にそれぞれ片刃の斧を持ってクルクル回すカストル。


そして片方の斧を肩に乗せ、もう片方の斧をロードに突き出す。

「フフッ、この斧はそれぞれ『風尽フウジン』『雷刃ライジン』といいます。 風は尽き、雷は刃となって襲うでしょう……つまり」


ビシィとポーズを決めると、


「この斧の前では風は尽きる! 風の魔法は一切効きません」


ロードに向けていた斧から放電が始まり火花が音を立てる。




瞬間ロードの左に回り込んだ!


(は、はやい!)

両手斧から片手斧になった為か動きがコンパクトになったようだ。


振り払われた斧を剣で受け止める!!


バチバチ!!


電撃が剣を伝わりロードの体に流れていく!!

痺れるような感覚と激痛により力が抜けかける……。


「がぁぁ!」

そのまま斧を押し込まれタタッと後ろによろめくロードに、もう片方の斧が振り下ろされた!!



(く! 間に合わな……)

キン!


飛んできた矢が斧の軌道をわずかにずらす!


斧はロードの体を掠めて空を切った!


「『蔦檻ウイップゲージ』」


カストルの足元から蔦が巻き起こり、カストルの体を羽交い絞めにしていく!!

が、カストルは一言、


「邪魔!!」


ブチブチィ!


呆気なく蔦が引きちぎられる……が、その間にロードが距離を取っていた。


肩で息をしつつ剣をカストルに向ける。


「……今ので死んでいたら楽でしたのに」


「生憎死ねない理由が山ほどあるんでね」


ロードの脳裏を回復師の少年がよぎる。




呼吸を整えつつ剣の構えを変える……そして上段に剣を構えた。


ロードは基本的には中段に剣を構える。

いかなる攻撃にも防御にも対応出来る上、突き出された剣により間合いを保つ。

また相手を牽制できる意味合いも持っていた。


冒険者である彼は防御を忘れると死に直結することを知っていたからだ。



それに対して上段は攻めに特化した型であった

ただ振り下ろすのみ……相手より早く刃を到達させる、その一点。


カストルは余裕を崩さず、

「あなた、今の私の速度についてこられるのかしら?」

斧の二刀を構える。


「さぁ? どうかな……見せて見ろよ」

ロードも不敵な笑みを見せる。


そうして両者が動いた!!





ナシュはこちらに気付いていないポルックスの背後に回り込む。


(ちょっと卑怯だけど……大事な者の為だもの)


しかしポルックスに近寄る前に、背中越しに声が掛けられる。


「飛べ!!! ナシュー!」

声があった瞬間弾かれる様に後ろに跳んだ!!


ドスドスドス!!


地面から黒いとげが突き出す!!


ナシュは声を掛けてくれたクルサに、

「ありがとう、助かったわ!」


クルサは刀を杖の様にして何とか立ち上がると、

「気を付けろ……あいつ、別な口で魔法を詠唱してやがる!!」


クルサの目はポルックスの腕にある口に向けられていた。


「う、腕に口が……!」


「あうぅ、バレちゃった」

クルリとナシュの方を振り返るポルックス。


「バレたらもういいよね……」

ポルックスの額、腕、足、あちこちに口が出現して……全ての口が魔法を詠唱し始める!!



「くそっ! とにかく動け!! 止まれば死ぬぞ!」

クルサも必死に体を動かして転げる様に動き始める!!


そして、ナシュやクルサの立っていた場所、そして移動した先に次々『闇牙ダークファング』のとげが襲い掛かる!!



更にポルックス自身の口からも魔法が唱えられ放たれる!


闇刃ダークブレード』!


三枚の黒い刃が地面を走りナシュに襲い掛かった!!


「くぉぉ!」

ジャンプして飛び越えるとその先にとげが!!



「あ! わわ!」


ベガがナシュに体当たりをして二人共々地面を転がった!


すぐさま起き上がるナシュだが、ベガは上体を起こしたところで倒れてしまう。


まだ全快じゃないのに無理してナシュを助けたようだ。



クルサの方も何とか躱せはしたものの力を使い切ったのか膝を地面について息を荒くしている。



ポルックスはニコニコとこちらを見ていた。

そして、


「えへへ、もういいかな? 僕が逝かせてあげるね」


ポルックスが再度魔法を唱え始める……複数の口が魔法を唱え、声がいくつも聞こえてくる。


(ど、どうしたら……)

倒れそうなクルサ、抱えているベガを前にナシュは焦りにかられるのだった……。


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