新たなる宝石
「キャラコの亡霊達を?」
「ええ、あの者達は命の巡りから外れた存在。 倒すことで命を転生の繋がりに戻したいのです」
ルクバが頷いてそう告げた。
「……キープ一人の……更に半分の命なら、亡霊全員じゃなくてもいいんだよな?」
ロードが質問するが、
「いえ、全員です」
「な! 全員って……リカオンでの戦闘でも見ているが、恐らく5000近くはいるはずだぞ!」
森で遭遇したのは数百人程だったが、他にもどこかにいると思われる。
「数ではないのです。 あの亡霊達は特殊な呪術で蘇っていると思われます。 そしてそれは一人一人ではなく、全員まとめて掛けられたもの」
「……つまり全員倒さなきゃ呪いが解けないってことか?」
「その通りです。 あの者達の命を解き放つには命を固定している呪いを解くしかありません」
「……お前さん、やけに詳しいな?」
ロードの目が鋭くなる。
しかしそれを軽く笑って流すと、
「私達エルフは魔法に精通していますが、他にも転生に関することや呪術……特に反魂法などは忌み嫌う呪術ですので知識として知っているのです」
マタルも頷き、
「これは本当だと思います。 私達エルフの森の人達もそうでしたから。 ……確かにあの人数の亡霊を生み出す為に呪術を一人一人に掛けるのは非効率です。 恐らくは亡くなったキャラコの人々全ての『生きたい』願いや、『悔しい、苦しい』などの恨みを媒体に全員の命を縛り付けていると思います」
「全員の願いや恨みが全員を連結して縛り付けてるってことか……」
「はい、恐らくは」
ロードは自分の頭をわしゃわしゃかきむしると、
「チッ、しゃーねーか!」
「もし亡霊達を倒すというなら……」
言いかけたルクバに、
「倒すわ!」
ナシュが即答する。
「うん、キープを助ける為だもの!」
ベガもしっかり頷きながら同意する。
マタルとアルタイルも「勿論」と告げる。
「そうか、愚問の様ですね。 では、これを持って行くとよいでしょう」
部屋の奥にある箱をゴソゴソ漁ると透明な宝石を持ってくる。
加工などは特にされておらず、宝石の結晶そのままの姿だ。
「これは?」
ナシュは手渡された宝石を受け取り尋ねる。
「これは魔力を帯びた特殊な宝石。 透明ですが実はガーネットです」
「これが……ガーネット?」
普通ガーネットは赤い色をしているが……。
「ガーネットは生命力・活力等を司ると言われます。 亡霊達を全て倒せば呪いが解け、その者達の命を取り込み赤く輝くでしょう」
「亡霊達の命を?」
「ええ、その水晶に取り組む量は一人分ぐらいであり残りの命は転生されます。 亡霊達の近くにいれば倒した時勝手に吸い込むでしょう……それをお仲間の方に吸収させれば目を覚ますと思います」
「ひとまず、亡霊達を全部倒して、この水晶を赤く輝かせればいいのよね?」
「その通りです。 私達も転生出来ず留まっている命は容認できません。 少しであれば助力いたしましょう」
「そうと決まれば早速……」
「いえ、今日はもうやめた方がいいでしょう……夜になれば亡霊は活発化しますから」
今は昼を過ぎている……森を進んで出会う頃には夕方だろう。
「ん~、じゃあ明日の朝一から始めるわ!」
「それが良いでしょう……本日は私の家でゆっくり休まれると良いです」
フフッと含み笑いをするルクバ。
「ありがとうございます」
マタルがお礼を告げるが、ナシュは不安がよぎるのであった。
「お、話は終わったのか?」
ルクバの家を出ると、入り口でクルサが待っていた。
「いないと思ったらここにいたのね」
「まぁ、俺は案内役として来たからな。 一緒に話聞くのもどうかと思ってね」
「別に気にしないのに」
「まぁ、一応な……」
尻尾をパタパタする。
「それで、用事は済んだのか?」
「ええと、それがね……」
ナシュがかいつまんで話す。
クルサは顔をしかめて、
「あの亡霊達を倒すことになったって……本気か?」
「ええ、キープを助ける為だもの。 それぐらいどうってことないわ」
「そっかー、うーん。 ……仕方ねぇ乗りかかった舟だ! 俺も手伝ってやるよ」
「ええと、……私達としてはありがたいけど大丈夫? 敵の数かなり多いよ?」
「それなら尚更俺がいたほうがいいだろう?」
耳をぴんと立てるとクルサが胸を張る。
「ありがとう……助かるわ」
ナシュが頭を下げる。
その後、クルサ含めてルクバの家に厄介になり、翌日早朝から亡霊退治に向かう事になった。
ちなみにルクバの家は悪戯の家になっており、ルクバ本人の悪戯も相まって、夜遅くまでみんなの悲鳴や叫び声が鳴り響いた。
(うわ~ん、やっぱりこうなったぁ!)
逆さづりの状態になった状態で、ナシュは不安が的中したことを嘆くのだった……。




