新たなる再訪
ナシュ達の進む街道は北の地に近い。
その為か何度か魔物や魔獣に襲われていた。
今戦っているのはダークエルフと呼ばれる者達だ。
四種族は魔の力を取り込まれると、魔物や魔獣、もしくは魔人に変化してしまう。
ダークエルフはその名の通りエルフが魔の力で冒された者である。
エルフの時だった身体能力や魔法は使用出来るものの、自然の力に対する裏切りという事で自然エネルギーの恩恵は受けれなくなっている。
しかし、それでも魔法に精通しているダークエルフは脅威であった。
ロードと剣を打ち合うダークエルフの横で、ナシュは一人のダークエルフを叩き切った!
そんなナシュに魔法を飛ばそうとしているダークエルフに素早く近づき、ベガが顎を蹴り上げる!!
アッパーの様に下から蹴り上げられたダークエルフは一瞬で意識を刈り取られ地面に倒れた!
「『闇刃』」
離れた所にいたダークエルフが魔法を放つと、地面を走る様に三枚の黒い刃が襲い掛かってくる!!
「『風刃』」
マタルが魔法で風の刃を放ちぶつけあう!
魔法を撃ち消されて慌てたダークエルフが次の魔法を唱えようとした。
ドス!!
その喉に深々と矢が突き刺さる!
アルタイルの正確な射撃により魔法を唱える間もなく地面に倒れこむダークエルフ。
他にも数名のダークエルフが身体のあちこちを矢で貫かれては地面に倒れこんで行く!
ダークエルフも矢を射ろうと弓を構えるも、突撃してくるベガとナシュ、そして先ほどのダークエルフを片付けたロードにより次々屠られていった。
戦闘が終わると、
「ふぅ~。 こっちは急いでるのに!」
ナシュがぼやく。
「でも、王女様の言った様に休んで良かったですね」
アルタイルが額の汗を拭いながら答えた。
「まぁ、確かにこんなに敵が出るなら疲れたままだと危なかったかも……」
ナシュは腕を組みむぅと唸る。
「まぁ、何はともあれもう少しでキャラコの街跡だ。 さっさと街道を抜けちまおう」
ロードの言葉に一行は再度歩き出す。
かなりのペースで進んだおかげか、本来キャラコまで三日程度かかるところを一日半で着くことが出来た。
大きなクレーターのふちに立ってナシュ達はその光景を見ていた。
「これが……キャラコの跡地か……。 こんな形になるなんて……一体何て事だ」
ロードが呟くがうまく言い表せない様だ。
アルタイルも茫然と見ている。
キャラコの街の大きさに匹敵するクレーターが開けられているのだ。
初めて見るとその余りに大きなクレーターに言葉を失うのも無理はない。
強風が吹きつけてくる。
そこに街があっただなんて信じられないぐらい……未だにそこには何もなかった。
クレーターに沿って反時計回りに進んで行く。
破滅の範囲から逃れた木々の合間を縫って、エデン森林に近付いていく……。
林の中を進み、エデン森林まであと一息という時、
「止まれ!!」
何処からともなく鋭い声が掛かる!
ナシュ達は動きを止めて目で相手を探すが見つけられない。
「右の木の上と、左奥の茂みにいます」
マタルが囁いて教えてくれるが、
「なるほど、よくわかったな!」
その声も聞こえていたらしい。
木の上からダンっ!と何かが降りてくると……。
その人物を見てナシュが目を丸くする。
「クルサ!!」
「よっ!」
片手を上げでニヤリとするクルサ。
ちょこっと牙が見えるが可愛い顔を惹き立てるチャームポイントに見える。
相変わらずの白耳、白尻尾がぴょこぴょこ、フルフル動いていた。
「ナシュさん達だったのね……」
奥の茂みから姿を現したのは、
「レサトも!」
クルサの妹であるレサト。
こちらも同じく白耳で白尻尾。
クルサと違い長い髪が特徴だ。
「二人ともこんなところで何を?」
「そりゃあこっちのセリフだぜ。 ナシュ達こそこんなところで何やってんだ?」
クルサが刀を肩に担いでポンポン叩きながら訊いてくる。
「私達はこの先のエデン森林に行かなくちゃならなくて……」
「本気か? あそこはエルフの縄張りだぞ?」
「私もおりますから大丈夫かと」
マタルが一歩進んでそう告げるも、
「ああ、そういやマタルはエルフだっけ? いや、それだけじゃねーんだよ。 今あの森は色々やべーんだ」
「?」
はてなマークを浮かべるナシュ達に、
「今、あそこにはキャラコの亡霊たちが巣くっているんだよ」
「何ですって!」
ナシュ達の脳裏にリカオンに攻めて来た彼らの姿が蘇る。
「……」
ベガとマタルは熊獣人の店長を思い出し複雑な気分に駆られる。
「あいつら何処に消えたと思えば、こんなところに隠れてやがったのか……」
ロードが腕を組んで唸る様に言葉を出す。
その声を聞いたクルサはナシュに、
「ナシュ、その後ろの人達は?」
クルサがロードとアルタイルを目で示す。
そこで簡単にロードとアルタイルの事を紹介する事になった。
「へぇー。 じゃあ二人ともナシュ達の様にキープ繋がりなんだな?」
「まぁ、そうなるな」
そこまで言ってクルサが思い出したように、
「そう言えばお前等キープはどうしたんだ?」
その一言にナシュ達の動きが止まる。
「ああ、あいつは……」
動きの止まったナシュに代わりロードが説明をする。
そうして、キープを助ける為にもエデン森林内のエルフの村に行く必要がある事を伝えた。
■余談……捕まっているミアプラ編
みあぷら(ベイドは私を食料だと言っていた……つまり奴は食べ物相手に会話をしていたという事なる。 例えば……こんな感じか?)
みあぷら「おはよう。 食パン」
食パン 「……」
みあぷら「今日も旨そうな匂いだな」
食パン 「……」
みあぷら「今日は焼かれるのと、何か挟むのどっちがいい?」
食パン 「……」
(無理だ……私にはとてもできない……)
首を振って想像を振り払う。
みあぷら(ハッ! そう言えば私は全裸だ! これは食べ物で言うと皮をむいた感じなのか?)
ミカンの皮をむいて柱に括りつけて話しかける自分を想像する……。
みあぷら(いやいや、これでは変態ではないか!)
再度首を振ってそれを打ち消す。
こうしてミアプラの想像……いや、妄想は夜更けまで続いていく。
PS:みあぷら「だって暇なんだもの……」




