新たなる魔法衝突
『神界』は魔の力に属するものは全て消失し、それ以外の物は全て出入り不可にする絶対防御魔法。
『終焉』は触れる者全てに終焉を訪れさせる。
それは有形無形に関わらず文字通り全てのものにであり、生あるものには全て死を、物であれば全てに破壊をもたらす。
そしてこれは魔王の魔法なので魔の力に属する。
つまり、この魔法はお互いがお互いを消失させる魔法という事になる。
バシィ!!
魔法同士が触れあった瞬間凄まじい衝撃が発生する。
「あぐぅ!!」
触れた瞬間キープの残っていた魔力が全てなくなった!!
しかし……『神界』は消えていない!!
闇の魔法陣とせめぎ合いを続けている!!
バシッバシィィ!!
闇の魔法陣が降りてこようとして……光の膜がそれをはねのける!!
「くぅぅぅぅぅぅ……!!」
キープが杖をかざして必死に『神界』を維持していた。
十字架の杖が闇に負けじと光り輝く。
キープの魔力はすでになくなっていた……しかし、『神聖』『昇天』『天罰』これらを使用するときの力……つまり自然エネルギーを集めて魔力の代わりとしていた!
試したことは無かったが……何とか維持出来ている。
内からのエネルギー……つまり魔力と、外からの自然エネルギーどっちを使っているかの違いであり、扱い方も似たようなものだったのだ。
しかしそれでも……。
ズズズ……ズ……。
魔法陣を司る力は強く……徐々に押されていく。
「うぅぅぅ!! ま、負けないから!!」
キープは己の小さな体に一生懸命自然エネルギーを集め、そして魔力の代替えとして放出する!
魔法陣の下降が止まった。
魔王城で魔王は嬉しそうにその様子を感じていた。
(なかなかやる……この魔法を止められるものなど、そうそういないはずだが……)
そうして楽しそうに呟いた。
「これならどうかな?」
ズズン!!!
魔法陣から掛かる圧が一気に膨れ上がる!!
そうして再度魔法陣が下降し始めた……。
ズ……ズズ……
光の膜を押しつぶさんと下がってくる。
「あぁぁぁ!!」
キープが悲鳴を上げた!
送り込んだエネルギーが逆流して体の内側から溢れ皮膚が裂け血が飛び出る!!
必死に杖にすがる……絶対に膝はつかない!
王城の塔に魔法陣が接触するとまるで砂の城の様にパラパラと細かくなり消えてなくなる。
そうして魔法陣の触れた部分が徐々に崩れ去っていく。
徐々に魔法陣が降下してくる……。
(ふむ、人にしては良くやった方か……)
魔王は玉座で魔法の状況を感じていた。
しかしどうやら相手はこれで限界らしい、徐々にこちらが押し込んでいる。
(クククッ……楽しませてくれた礼に絶望を見せてやろう)
凶悪な笑みを浮かべると、更に魔力を魔法陣に送り込んだ。
ズズズン!!!!
闇の魔法陣の圧がさらに膨れ上がり、徐々に下がっていた魔法陣の下降速度が上がった……。
王城の塔はいくつも消え去り、教会本部についている鐘塔も魔法陣に接触して消えて行く。
(こ、このままじゃあ……)
すでにキープが取り込んでいる自然エネルギーは最大で、取り込み過ぎと逆流により体中がズタズタになっている。
こめかみからも額からも血が噴き出て顔を流れ落ちる。
腕や足の血管も裂け何か所もの皮膚から血が噴き出して立っているのが奇跡に近い。
それでもキープの目はしっかりと開き魔法を止めない様に必死に抵抗する。
……しかし魔法陣の力には到底及んでいなかった。
すでに自然エネルギーだけでは太刀打ちできない……魔力もない。
(このままじゃみんなが死んじゃう! 絶対!! 絶対それだけは……命に代えても……)
キープの目が見開かれた。
(命? いのち……)
レジーナが言っていた……『お主は魔力の代わりに何を使っていたのか』と。
確かに命に関わるだろう……それでも……そうしてでも止めないといけない!!!
「ぜ、ぜったいに!!」
「僕はみんなを守る!! 守るんだぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
天に向かって叫ぶ!
キープの中で自然エネルギーとは別の力が駆け巡る!!
取り込んでいる自然エネルギーの何倍もの力が膨れ上がった!!
「行ってーー!!!」
その力……生命力を自然エネルギーと併せて『神界』に送り込んだ!!!
ジジッチッ
『神界』が太陽の様に輝き『終焉』とぶつかり合う!!
そして……。
抵抗する力を上げた『神界』が『終焉』により消滅していく……。
「ああっ……!」
キープの体から全ての力が抜けて膝をつく……。
膝をついたのは……『終焉』が『神界』により消失していったのを見届けたからだった。




