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新たなる紅い瞳


「『神聖セイクリッド』」

キープの手に光る杖が現れる。


「『昇天アセンション』」

立て続けに魔法を詠唱してフェンリルに放つ!


地面を突いた杖から光が地面を伝って走る!



キープの魔法をフォローするようにカペラとロードがそれぞれ襲い掛かる!!


「どりゃぁ!」

フルスイングしたカペラの斧がフェンリルの右前足を強打する!


足は毛も少ないせいか氷で覆われていても薄い。

斧の刃が食い込み血が噴き出す!


ロードも素早く剣を叩きつけ、氷と毛を削っていく!


マタルとベガはナシュとアルタイルをそれぞれ安全な場所に移動していた。


「『氷虎アイスタイガー』『氷烏アイスクロウ』」

アリアは氷の獣を二匹呼び出すと、フェンリルの目の前でウロチョロさせて気を惹いている。



「グルルルル!」

フェンリルが身体をブルブル振ってカペラとロードに距離を取らせる。

そうして、


「ガァ!」

目の前の氷虎に食らいつき噛み砕く!


しかしその時にはキープの魔法がフェンリルの足元に達していた!!



ドドン!!


フェンリルの足元から光の奔流が沸き上がる!!


フェンリルは光に包まれて……飛び退った!


しかしそれでも回避は間に合わず、体中を覆っていた氷がなくなり焼けただれたようになっている。



「まだです! 『天罰パニッシュメント』」


キープの手から消えた杖が、上空で無数の十字架を構築する。



そして、フェンリルに降り注いだ!!


フェンリルの至る所に十字架が突き刺さっていく……。



「がぁぁぁ!!」

フェンリルは涎を垂れ流して叫び声をあげた!!



そのフェンリルを眼前に捉えてミラが『クラウ・ソラス』を掲げる!


「これで……終わりだ! 『輝剣シャイニングセイバー』!!」


ミラが真っ直ぐに剣を振り下ろす!!





振り下ろされる寸前だった。


フェンリルが一声吠えた。


「ウォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!!!」


脳を揺さぶられる様な遠吠え!


「ぐっ!」

思わずミラが剣を取り落とす。


「うぐぐ……」

「あああ……!」

ミラだけではなく、キープやカペラ、ロードなど全員が膝をつき武器を取り落とした。


『ハウリング』……フェンリルの遠吠えによって放たれる音の衝撃波。

これによりキープ達はほとんど動けなくなる……。



「クッ……はぁはぁ」

キープは何とか立とうとするも視界が揺れて足がふらつく。


隣にいたミューやプサイは意識を失っているようだ。

他にもアリアやベガ達も地面に倒れこんでいるのが揺れる視界の端に入った。


十字架に串刺しにされながらもフェンリルは体を動かしている。


ゆっくりだが這い寄る様にキープに迫ってきていた。


「キープ!」

ロードが叫ぶもロード自身もふらついて動けないようだ。



「うぅ!!」

キープは必死に体を起こし立ち上がるが……再度倒れこんでしまう。


この状態では魔法も放てそうになかった。


フェンリルがキープの前まで来る……大人数人が丸ごと入りそうな大きな口の中には鋭く並んだ牙が見える。

フェンリルが吐く息は冷たくキープを寒さで震えさせる……いや震えているのは冷たさのせいだけではないだろう。



フェンリルも満身創痍で激しくは動けないらしい、ゆっくりと大きく口を開けるとキープに迫った。


「うぅ!」

思わずキープは目を閉じた!!



その時!


「待って!! やめて!!」


警備所から飛び出したミーシャがキープを庇う様に両手を広げた!



「み、ミーシャ!」

キープが慌てるも止めに動くことが出来ない。


「お兄ちゃんを食べないで!!」

白い雪の中、長い金髪をなびかせ両手を広げるミーシャはまるで天使の様だ。


ミーシャの声に一瞬動きを止めたフェンリルだが、ミーシャを見ると改めてミーシャを丸のみにしようと口を開けた!!


「ミーシャ!!!」

キープが叫んで必死にミーシャの服を掴む!


そしてそれに気付いた……危険な賭けだがこのままではミーシャが死んでしまう!

一か八か……そして今後の心配もあるがこれしか手が無かった。



ミーシャの服に付いているクリスタルを引きちぎり『聖域サンクチュアリ』を破壊する!!



その瞬間、目の前にいるフェンリルの体から黒いもやが湧き出てミーシャの体に吸い込まれていく!!


「!?」

フェンリルが驚いたのか動きを止める……その間にももやがミーシャに吸い込まれて……そしてフェンリルの体からもやが出なくなった。



ミーシャは……目をぱちくりさせて、

「い、今のは?」


何が起こったか分からずきょとんとしている……フェンリルの体から出たもやを吸収したが……影響はないのだろうか?


キープは必死に体を起こしてミーシャを庇う様にフェンリルの前に立つ。


フェンリルは開けていた口を閉ざすと頭を引っ込めた。


そしてキープとミーシャの事を見つめている……その瞳は赤黒いものではなく澄んだルビーの様に紅い。



((お前達か……我を魔の力より解き放ってくれたのは……))


いつぞやのレジーナの様に頭に声が響いた。


フェンリルはキープ達を見つめながら、


((我はフェンリル……氷の世界を統べる者で司る者……))


そうしてフェンリルは頭を地に伏せると、


((人の者よ感謝する……我を魔の力より解放し……その暴挙を止めてくれたこと……))



キープはフェンリルの言葉を聞きながら安堵する……。


ミーシャは魔の力を集めてしまう。

だとしたらフェンリルの魔の力も吸収するのでは?


そう考え一か八か試したのだった。

もちろんミーシャにも危険が及ぶ賭けだったがこのままではどの道殺されてしまう。


ミーシャの体は心配だが……ひとまずフェンリルの方は何とかなったようだ。



((殺しかけた事謝罪しよう。 ただ……今は我も動けぬ。 結構四種族もやりおるわ))

フェンリルがニィと笑う……口が大きいから怖い。


「僕が動けたら回復魔法掛けますから……」

キープの言葉に、


((そうか、それは済まん。 助かる))

フェンリルは大人しく地面に伏せた。


はたから見ると大きな犬が伏せをしている様な感じだ。




キープはミーシャを見る……外見は変わってなさそうだ。


「ミーシャ、体は大丈夫?」

心配そうなキープに、


「う、うん……私、魔の力を吸い込んだんだよね?」


「うん、ごめん。 ミーシャ……」

俯くキープに、


「ううん、だってあのままだったらお兄ちゃんも私も、そしてみんなも食べられちゃってたし……だから大丈夫」

キープの顔をのぞき込み笑顔を見せる。


「それに私でも役に立てたんだって……少し嬉しかったりするの」


「ミーシャ……」


ミーシャの気遣いは嬉しかったが、それと同時に、


(ミーシャを助ける旅なのに……またしてもミーシャに助けられるなんて……)

ショックを受けるキープ、そしてそれ以上に、


(フェンリルに影響を与えるほどの魔の力……ミーシャは大丈夫なのだろうか?)

笑顔を見せるミーシャに不安が募るキープだった。


■番外

ありあ「あれだけ大層に出ておいていきなりダウンしているとか? どうなのそれ?」


ぷさい「うるさい! お前なんてチョロチョロしてただけじゃねーか!」


ありあ「私は相手の魔法を解読してましたー! あんたなんてすぐに魔力切れちゃってさ!」


ぷさい「お前ら俺に助けられたの忘れてんのか? 感謝の土下座しろ! 土下座!」


ありあ「あんただってキープに助けられたじゃない!」


ありあ・ぷさい「ギャーギャーギャー」



【少し離れた場所】

べが「いいよね……出番あった人達」


あるたいる「そうだよね……うちなんて尻尾でペシッってされただけだし……」


べが「私なんて後半アルタイル引っ張っただけだ……」


べが・あるたいる(抱きっ!!) 「次はお互い頑張ろうね!!」

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