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新たなる指令


【魔王城】


玉座の間



そこには前回同様軍団長が集められていた。


そして頭を垂れるその先には仕切りがあり、その先に魔王が座していた。





「勇者の一人は消え、一人は我らが手中。 聖女も二人は死んだ。 王国の中心である王都も我らが策により弱体化しておる」


魔王の一言一言を聞き逃すまいと、軍団長は静かに耳を傾ける。


「今こそ好機! 王国を滅亡させ大陸全土を我らの支配下とするのだ」


軍団長は更に頭を下げ肯定の意を示す。



「ベイド」


「はっ!」

ベイドが緊張に身を縮こませる。

魔王に名前を呼ばれただけで体中を鷲掴みにされたように感じる。

ほんの少し力を入れれば握りつぶされる様な……そんな恐怖を感じた。


「お前は今いるオメガ城から南進し王都の北側から攻めろ……お前が本隊だ。 必ず北門を打ち破れ」


「はっ!」

ベイドは恭しく頭を下げる。



「デネブ、アケルナル、エダシク」


「「「はっ!」」」

三人がほぼ同時に返事を返す。


「お前達はあの王都の憎き結界を何とかしろ」


「「「はっ! 必ずや!」」」


これにも三人は同時に返事を返した。



「そしてカストル、ポルックス」


「はっ!」 「はい!」


「お前達は先発隊を努めてもらう……二手に分かれて東西から王都を攻めよ」


「はっ!」


カストルは返事をすぐ返す……しかし、


「あの……魔王様」

あろう事かポルックスが魔王に口を開いた、


「ポルックス!!」

カストルが慌てて嗜める!


しかし魔王は、

「よいカストル。 ……それで何だ? ポルックスよ」


「お、恐れながら……僕も姉様と一緒に行動して良いでしょうか?」


「ポルックス!!!」


カストルが大声で叱咤する!



それは魔王の『二手に分かれて』と言う作戦を否定する事になる。



魔王の動く気配が仕切りの向こうでする……。


「なるほど……お前はカストルが一緒でないと嫌だと言うわけか」


「ま、魔王様! どうかお許しを!」

カストルがポルックスの前に出て膝と頭を床につける。


「ふむ、別に構わぬぞ。 二人一緒に攻めるがいい」


「え?」

拍子に取られるカストルに、


「リカオンを落とせがなかったにしても、その効果により王都の兵を分散させる事にはなった。 そこを考慮してやる。 ……ただし」


魔王の声が強くなる。

それだけでその場にいる全員が恐怖に体を震わせる。



「そこまで言うからには分かってるっておろうな?」


「お、お待ち下さい! 罰ならこの私めが!」

カストルが声を上げたが、


「お前も私に口出しするのか? ……カストルよ」

そう言われてカストルも黙り込む。


……いや黙らざるを得なかった。

魔王の威圧感で口も指先も何一つ動かせなくなったのだ。


「ポルックス……お前が策を成功に導き、見事アルファルドの王を仕留めたのならカストルと共に軍団長に命じよう」


ポルックスが頭を垂れたまま頷く。


「しかし! 万が一に失敗した場合は……分かっているな?」


ポルックスは体を震えさせながらも、

「はい! 必ずや成し遂げてみせます!」


ポルックスの返事を聞くと、魔王は全員に向かって大きく叫んだ!


「では行け! 必ずや奴等の城を……国を落としてくるのだ!」





軍団長が全員出撃すると、魔王は席を立ち玉座の後ろにある階段を登り始める。



そして最上階にあるエントランスに出ると南の方を向いた。


ここから見ることは出来ないが、この先に王都アルファルドがある。



もう少しすれば軍団長達が攻め込むであろう……その時を待ち続けるのだった。




魔王城の通路を早足に歩きながら、

「ポルックス! どうしてあんな事を……」


カストルにしては珍しくポルックスに苦言を吐いた。


ポルックスはオドオドしながらも、

「だ、だって僕は姉様と一緒じゃないと嫌だから……」


「嫌だから……じゃすまないわ! 魔王様の命令なのよ?」


「そ、そうだけどそれでも僕は……」

落ち込むポルックスを見て冷静になったのか、カストルはポルックスを抱きしめ、


「ごめんなさい。 ポルックス……言い過ぎたわ」


「ううん、僕もごめんなさい。 勝手な事をしちゃって……」


「いいえ、ポルックスは私と一緒に居たいから言ってくれたのよね? それを怒っちゃって……ごめんね」


「僕どうしても姉様と一緒がよくて……」


「ええ、ええ。 分かっているわ。 でもこうなったら必ず城を落としましょう! 二人で軍団長になるのよ?」


「はい! 姉様。 僕頑張りますね!」


健気な弟の瞳を見て、カストルが再度ポルックスを抱き締める。

そしてカストルは、


(ポルックスの為にも失敗は出来ない……何としてでも……)


決意を胸に刻むのだった。






アルファードはとある貴族を訪ねていた。

王都ではかなり有数の大貴族で何人かの貴族を纏めている。


「そろそろ始まるそうだ……準備は?」


「はい、整っております。 いつでも可能かと……」


「そうか、ならば良い。 後は合図があるのを待つだけだ」


この貴族もアケルナルの手によって魅了されていた。

その下にいる貴族達も全員そうなっている。



貴族達は各自自身の傭兵や護衛などの兵を持っている。 国の大事には貴族達もそれ等の兵を出す事になっていた。


(しかし、その兵が国に刃を見せたらどうなるか……)

いくら結界があり頑丈な壁があり、多くの兵士がいたとしても、外と内両方から襲われるとどうなるか……。


既に手中にある貴族達には兵を準備させている。


後は合図を待つばかりであった。





魔王の命を受けたデネブは魔王城から北西にある氷に閉ざされた連山の峰に来ていた。


強い吹雪により瞬時に体温を持っていかれて凍り付く程である。

デネブは魔法で寒さから身を守りつつキョロキョロ辺りを伺っていたが……雪に埋もれた祠を見つけると口に笑みを浮かべる。


そうして懐から漆黒に染まった水晶を取り出すと祠の中に投げ入れた!


それだけすると祠を背にして戻って行く……。




祠の中では、投げ入れられた水晶から漆黒の闇が次々と漏れ出して地面に吸い込まれていった……。



そうして暫くすると山々から地響きが聞こえ始める……。


その音が聞こえたデネブは満足げに笑みを浮かべ、そのまま姿をかき消したのであった。


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