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新たなる人々


リカオンの正門付近は激しい戦いが繰り広げられていた。


冒険者側はシャウラが指揮をとっており、街のガード達も懸命に戦っている。


そしてその相手は……。


「人?」

ベガが呟く。


冒険者達が戦っている相手は老若男女の入り混じった人や獣人達だった。

中にはエルフやドワーフの姿も見える。


相手の武具もバラバラで剣や槍を持つ人もいれば包丁やただの棒きれ、金槌やノコギリ、果てはそこら辺に落ちていたような石や木の枝などを持って襲い掛かってくる。


しかしそんな武装相手にも関わらずリカオンの冒険者やガードは苦戦していた。



第一に相手の数がかなり多い……数千人以上はいるだろう。

そして一番の問題は、相手が人であり、女性や子供、老人までが襲い掛かってきている。


その為相手を傷つけることに戸惑いが出ているようだ。


「武器を捨てろ!! 大人しくするんだ!」

「降伏しろ! そんな武器でどうするってんだ!!」


戦っている人達は必死に相手に呼び掛けるが、相手は誰一人返事を返さない。


そのくせ切られたり、刺されたりすると、


「痛い! いたぃ!」

「助けてぇ!」

「死にたくない……まだ死にたくないよぉ」


と声を上げる。



その為冒険者達はまともにやり合えず、ただ敵の数に押されるのみであった。



「しっかりしろ!! 後ろには大事な者達がいると心得ろ!!」

シャウラが鼓舞するがなかなか浸透しない。


「うわぁ!!」

一人のガードが四名の人達に地面に倒され、包丁で何度も腹を刺される!!

刺しているのはエプロン姿のどこにでもいそうな主婦らしき人だった。


「やめろ! お前達はまだ子供で……」

剣士の冒険者が子供達に飛び掛かられて押し倒されると、その目と口に鉛筆を突き立てられ絶叫を上げる!



「こ、これは……」

駆けつけたキープ達も絶句していたが……。


「ああ!! そ、そんな……あなたは」

ベガとマタルが一人の少女を見て動きを止めた。


その少女は小柄な体躯の熊の獣人、『森の熊さん』のロゴが入ったエプロン、手にはそれぞれ片手剣を持っている。


「キャラコの……武器屋さん……」

そう、それはキャラコの街で武器屋を営んでいた小さい店主だった。


「て、店主さん……」

マタルの声が聞こえたのか、店主はマタルの方を向くと剣を振りかざし襲い掛かる!!


キン!


間にベガが割り込みクローで剣を受け止めるが……、もう片方の剣がベガの脇腹を狙って繰り出される!!


ギィン!


それをマタルの短剣が受け止める!


「店主さん! 一体何があったの!?」

「目を覚まして下さい!!」


ベガとマタルが必死に呼び掛けるも、店主はそれに答えず無表情で剣を振り続ける……。




そしてキープもその目に映して気付き始めた……。


キャラコの宿の前で植木鉢に水を上げていた主婦……今は血まみれの包丁を振りかざしている。

キャラコの大通りを走り回っていた子供達……今は木の棒をチャンバラの様にガードに振り下ろしている。


「この人達って……」

キープがごくりと喉を鳴らす。


「キャラコの街の……人達だ」






攻められるリカオンを離れた丘の上で見えている幼い人影が二つあった。


「フフフ……」

「姉様嬉しそう……僕も嬉しい」

「あらあらポルックスってば、嬉しい事言ってくれるのね」

「姉様が喜ぶなら……」


双子はリカオンに目を向けたままお互いの手を握り合う。


「みんな羨ましいものね。 生命が」

「そうだね。 だから求めるし、自分達と同じにしてあげたいよね」

「数が多かったけど、これなら魔王様も喜ぶかしら?」

「きっとお喜びになるよ、姉様」


カストルは急に立ち上がり手をリカオンに向ける……そして、

「行きなさい、人形たち。 あの街に住む全ての者達を死へと導くのです」


カストルの声に呼応するように、キャラコの人々はリカオン目指して進んで行く。


そして、カストルは残酷な笑みを浮かべて、

「そちらばかり守っていいのかしら? 数はまだまだいるのよ?」


ポルックスはそんな姉の微笑みにただただ見惚れるばかりであった。





そんな時!


街の正門を中心に光る半球が現れた!!


「なに!」


カストルが見ていると、どうやら人形達はあの光る半球を抜けられないようだ。


それによって正門側を攻めていた人形達の進軍が止められてしまう。



「チッ……何らかの結界か……。 まぁいい、門は他にもあるのだから……」


一瞬悔し気にしたものの、再び笑みを浮かべるとリカオンの街を見下ろすのだった。 


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