新たなるお誘い
ゴブリンメイジの声で始まった戦いだが、あっさり片付いてしまった。
部下のゴブリン達を盾にして長々と詠唱を始めたので、キープの『拘束』で動きを封じ、アリアの『沈黙』で言葉まで封じると、ゴブリン達が混乱し始めた。
どうやら戦闘指示もゴブリンメイジがとっていたようで、指示が来なくなった事でオロオロし始めたのだった。
そんなゴブリン達などミラとベガの敵ではなかった。
ゴブリン達を全て倒して部屋を調べると、どうやらここは武具の手入れをする場所だったようで、鍛冶の道具が散らばっていた。
「どうやらここで戦いの訓練とかもしていたようだな」
ミラが人形の模型をつつきながら探索を続ける。
手分けして探したがどうやらここはこれだけの様だった。
「T字路の反対側に行ってみる?」
ベガの提案に、
「そうしようか、ここには特にないようだし……」
キープの決定に皆反対側に向かおうとする。
「あ、待って」
アリアが檻の中のゴブリンを指して、
「悪いけどこの子も見逃すわけに行かないのよね」
アリアが手を向け、
「せめて苦しまずに……『氷葬』」
瞬時に檻ごとゴブリンが凍りついた。
「行きましょう」
ゴブリンの最後を見届けアリアが皆を促した。
T字路まで戻ってきたキープは反対の通路を進んでいた。
時折散発的にゴブリンと出くわすが、意表をつかれたようで先頭を行くベガが即黙らせた。
そして通路沿いにいくつかの部屋らしき横穴を見つけた。
「慎重にね」
キープの言葉にベガが頷いてみせる。
扉などはなく穴状なのでベガはそっと覗き込んだ。
その後キープ達を手でちょいちょい手招きする。
どうやら大丈夫のようだ。
その部屋は寝床らしく草や藁が敷き詰められていた。
「特には何もなさそうだね」
「次に行こうか」
……そうやって小部屋を見て回る。
「う、これは……」
中を覗いたベガが絶句した。
キープも続いて覗き込むと……、
中は人であったであろう物が大量に転がっていた。
魔の物は人などの4種族を食らう。
ここは食料庫らしい。
「何か分かるものだけでも……」
部屋の隅に服などが捨ててある。
そこを漁って服などを纏めて荷物に詰める。
後でギルドに提出して、行方不明者と照合してもらうためだ。
「早く魔王を倒しましょう……魔王を倒せば魔の力も消えます」
アリアの言葉に深く頷くキープだった。
「あれ? キープ達も丁度?」
キープ達が冒険者ギルドに戻ると、丁度ナシュ達も戻って来ていた。
「ナシュ達も今?」
「うん、今終わって戻って来たとこ」
「無事に終わった?」
「うん、もちろん」
そこへカペラが、
「あたいは足手まといで……」
なんかやけに落ち込んでいた。
「えと、カペラさん何かあったの?」
ヒソヒソ尋ねるキープに、
「あー……、実はね」
ナシュから事情を教えてもらう。
(なるほど〜カペラさんにしてはミスが続いて落ち込んでるのね)
(そうなのよね……いくら言ってもあんな感じで……)
(じゃあ僕が励ましてみるよ)
(キープだと……余計落ち込みそうな気もするけど。 まぁ任せるわ)
キープは任せろとばかりに胸を叩いて、
「カペラさん、僕と飲みに行きましょう!」
その言葉に、
「はぁ?」
大声で素っ頓狂な声を上げたのはアリアだ。
「き、キープはお酒は……」
「大丈夫、任せて!」
キープがアリアにウインクする。
(可愛い……じゃなくて、大丈夫かなぁ?)
アリアは不安そうだったがキープの自信満々な顔に黙り込む。
一方誘われたカペラは……。
「カペラさん?」
返事が無い……キープのお誘いに意識がトリップしているようだった。
「ええと、ひとまずギルドに報告して、落ち着いたらまた話をしましょうか?」
ナシュの言葉に頷いてそれぞ報告に向かう。
そうして一度解散となり、夜に改めて話すこととなった。
そして一時解散となり、夜に再度お誘いすることとなったのだった。




