新たなる手掛かり
「うぅ、キープぅ〜どこに行ったんだよぉ……」
王都アルファルドの城下町、その酒場でロードは酔っ払って管を巻いていた。
まだ真っ昼間だが既に出来上がっていた。
滝での修行(?)を終えた彼は、キープの後を追って王都に来た。
しかしそこからキープの足取りが途絶えてしまった。
冒険者ギルドにも宿屋にもその痕跡はなく、町中の人に聞き込みをするも情報は無かった。
唯一、牢屋付きの馬車で王城に運ばれるキープの様な容姿の人がいたとは聞けたが、彼が王城に入れる訳がなく確認ができなかった。
そうして王都で毎日の様に情報を探し続けた。
その後なんとかケイナンに向かったとの情報を得て、ケイナンに向かうもケイナンは消失。
王都に戻っているなら会っているはず、とのことから周辺の街を探してコールマインにたどり着いた。
そこでようやくキープの有力な情報を得る事ができた。
鍛冶屋の娘からの情報を元に、キープ達が向かったとされる洞窟に行ったものの、洞窟は崩落しており進めなくなっていた。
そこでまたしても足取りが途絶えてしまったのであった。
やむなく王都に戻り、引き続き情報集めの日々だが……手掛かりは何も得られず。
こうしてたまに飲んだくれているのであった。
「マスターぁ! もう一杯!」
エールを注文するも、
「ロードさん、そこら辺にしときなって。 今日は結構飲んでいるし、それにそろそろ懐も寂しいんだろ? 少しはクエストでもしてさ……」
「頼むよマスター。 次で最後だから……」
あまりに寂しげなロードに懇願され、マスターは黙ってエールを出す。
「これで今日は最後だからな」
「すまねぇマスター。 恩に切るよ」
そう言ってエールを仰いだ時、その名が耳に飛び込んできた。
「キープさん達大丈夫でしょうかね?」
「フン! あんな奴どうなろうが知ったことか!」
「また、プサイはそんな事を言って! キープさん達が危なかったと知るとあんなに慌ててた癖に……」
「あれは慌ててたんじゃなくてだな……えと、あれだ、奴の困った顔が見たくて」
「はいはい、そういう事にしておきます!」
キープの名前に思わずそちらを向くと、男女二人組の冒険者が飲み交わしていた。
ロードは直ぐに駆け寄り、
「あ、あんたら、今キープとか言ったか?」
急に寄ってこられてビックリした様な二人だが、
「な、何なんだ、あんた!」
「えと、どちら様でしょう?」
二人に対して、
「俺はロード。 冒険者なんだか訳あってキープを探している。 キープを知っているのか?」
真剣な表情のロードに、二人は顔を見合わせつつ、
「えと、知っていますけど、あなたがどういった方かが分からないので……」
女性の方が申し訳なさそうな感じで返答する。
男の方はムスッとして無言のままだ。
「俺はキープとパーティを組んでいたんだ。 訳あって一旦解散になったが、再度組もうと思ってアイツを探していたんだ」
ロードが答えると、女はちらりと男を見る。
すると今度は男の方が、
「冒険者カードを見せてもらおう。 それとキープがどういった容姿とか魔法を使えるとか、少しは言えるよな?」
「ああ、カードはこれだ……パーティの履歴なども冒険者ギルドに行けば分かるだろう。 使える魔法は……」
ロードのカードや確認を終えると、男が女を見る。
すると女は頷き、
「どうやら間違いないようですね。 分かりました、お探しであると言うならお教えいたしましょう」
そう言って女は名乗りを上げた。
「私はミューと言います。 こちらはプサイ」
「……どうも」
プサイと紹介された男はロードに軽く頭を下げる。
「それでキープは今どこに?」
「まぁ、落ち着いて下さい」
身を乗り出し食い入るするロードに、席を勧め、
「まず、私達は今日乗合馬車でこの街に付きました」
「パウスから直接?」
「まぁ、途中のリカオンで乗り換えてはいますが、ほぼまっしぐらにこちらに来ましたね」
「おかげでケツが痛い。 馬車に長いこと乗るもんじゃねえな」
プサイが座りながらもぞもぞと体を動かす……まだ痛いのかもしれない。
「これまでの行程などを考慮して、キープさん達はパウスに2ヶ月前はおりました」
「要は俺たちがパウスを立つ時までは居たってことさ」
プサイが補足する。
「今もいるかは分かりませんが……」
「いや、充分だ! ありがとう!」
ロードはミュー達に頭を下げる。
今まで手掛かりが無かったのだ、これだけでも充分な情報だった。
ロードは席に戻り酔い覚ましに水を飲むと、
「マスター! 勘定だ」
「お、出るのかい?」
話を聞いていたマスターが尋ねると、
「ああ、今からすぐ立つ! 俺はこの時を待っていたんだからな」
するとマスターはニヤリとして、
「そうか、だったら今日の分は奢りにしてやる! 頑張れよ!」
「ありがたい、感謝するよ。 また来た時は豪勢に頼むからよ!」
言いながら既に出口に向かっているロードに、
「ああ、期待して待ってるからよ」
マスターが片手を上げてロードを見送った。
街を早歩きで宿に向かう。
荷物を取ったらすぐにでも立つつもりだった。
(キープ、やっとお前と組める。 お前は俺が守る!)
ロードは顔を引き締め、決意を胸に急ぐのだった。




